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一話 変身!魔法少女……名称ないの?じゃあ、ジャスティスとかそんなんでいいよ

この日、平凡な一般人に過ぎないアタシは非日常と関わることになった

物語の主人公のように理不尽に巻き込まれたのだ

心のどこかで手遅れだ逃げれるはずがないと諦観が顔を覗かせた

だからといって魔法少女はないわー

こちとら高校生一年生なんだよ

百歩譲っても魔法使いぐらいじゃないと無理かな

そしたら猫のぬいぐるみは目を光らせて食いついてきたのだ

父さんに土下座を勧めて家から追い出したあと数合に渡る言の刃の打ち合い(おはなし)でまぁ内容くらいは聞いてやろうとアタシは生意気なぬいぐるみに譲歩することにした


「同僚が勝手に下界に降りて欲望のままに行動していると報告が上がったのが始まりだった」


あ、長くなる感じか

いいよいいよアタシのほうで短く纏めるから

おい、なんだその哀れみの目は

やめろこんな痛い話を聞かされる身にもなれ

聞き流して忘れようとするだろ普通

まぁ、能書きはいいから結論だけ言えや


「世界中の美少女の貞操を守るためだと思って僕に手を貸してほしい」


「……。ワンモアプリーズ」


「世界中の美少女の貞操を助けると思って手を貸してくれませんか?」


端的に纏めるとこういうことらしい

ぬいぐるみは天使でその同僚の天使が欲望の赴くままに地上に降りてきて可憐な乙女に口ではいえないようなあんなことやこんなことをしている

見かねたこのぬいぐるみは性犯罪者を天界に連れ帰るために自分も降りてきて性犯罪者と殴り合いの末に互いに力を消耗しぬいぐるみの姿を甘んじることになった

回復したところで再び殴り合えば同じ結果になるのは目に見えている

故に代理戦争を始めることにした

それがぬいぐるみの選んだ魔法少女同士の闘争というわけだ


「大体、理解した」


「ならば僕と契約を……」


「今回はご縁がなかったということで」


ぬいぐるみの発言を断ち切る

何?そのアホらしい理由を聞いてはいそうですかと手を貸すと思ったの?

ある意味恐ろしいけど世界の危機とか想像していたアタシの想像を返せ


「君、それでも主人公か?罪のない人を見捨てて恥じることはないのかい?」


「アタシ主人公って柄じゃないし知らねぇよ。逆に他人のために危険に飛び込むとか人間としてどうかしてないか?」


責めるような視線を向けてるんだろうけど奴はぬいぐるみの体のせいで表情らしい表情を表現することが出来ないようだ

だからだろうかどこぞの白いマスコットのように胡散臭く感じる

それにアタシは正義の味方という掃除屋志望ではないのだ

名前どころか顔も知らぬ他人のために労力を使いたくない

そういうのは冬木市在住の少年にでも頼んでほしい


「それもそうだね」


「なんだあっさり引くんだ」


どんな反論が飛んでくるか警戒していたがぬいぐるみから出てきたのは肯定の言葉でアタシは拍子抜けした


「君を強制的に魔法少女にすることは可能だけどそれは悪手というものだろう?」


そりゃそうだ

本人の意思を無視して無理矢理、魔法少女になんてされようものならアタシはこの猫のぬいぐるみを跡形もなく消しとばすだろう

ぬいぐるみはベッドから飛び降りて窓のほうへ歩くと勝手に開きぬいぐるみはそのままベランダへ消えていった


「では、また会おう水無月 彩乃」


……最後に不吉なこと言うなよ

その夜はぐっすり眠れた

自分でも思うが図太い精神してるよ


※ ※ ※


「やっぱ、昨日のあれは夢だったんだそうしよう」


昨日起こったことが嘘だったかのような学校のありきたりな風景を見て現実味がなかったことを痛感する

彩乃、貴女疲れてたのよ

と家出からの迷子のコンボを決めて失踪した母さんが幻覚でフォローしてくれる

あれ?これはこれで危ないような

父さんは未だに母さんを見つけれず探索しているとのことだ


「あら?今日はお早いですわね彩乃」


「よぉ。昨日、セリアの口調より変な夢見ちゃってな」


「失礼な。わたくしのどこが変だと言いますの?」


そのお嬢様口調だよ

このクラスで浮いてそうな残念な少女はアタシの中学から親友、不知火 セリア

日本人とフランス人のハーフで金髪が地毛というアタシの周りでは希少な存在である

ちなみにセリアは生まれてこのかた15年日本を出たことがないためフランス語はからっきし駄目だ

彼女との出会いは中々に愉快だった

今でも小学生でも通じる身長だといいうのに当時は園児と間違えるほどに幼かったのだから

彼女は子供扱いを嫌うが金髪をツインテールにしているから幼く見られていることに気付かない

当然だが断崖絶壁

何がとは言わない


「また飴を学校に持ち込んでいますの?」


セリアが呆れたと視線を机に放りだしているアタシの鞄から錯乱する飴に向ける


「糖分は人類が生きていくために必需な栄養分だ」


人間が生きていくのに必要な三つを書けと生物のテストに出題されたならば水、酸素、糖分と書くね!

糖分が切れるとアタシは泡となって消えてしまうのだ!

消えてしまうのだ!

ちなみにアタシが今、口に含んでいる飴は林檎味


「そんな馬鹿なこと言っていますと鬼の委員長が飛んできますわよ?」


セリアが微笑しながらアタシの鞄から飴玉の包みを一つ取る

金髪ツインテールのロリっ子がクールだとギャップ萌えというのを感じるな

金髪ツインテールと言われたら真っ先にレイ○ェル様と答える

アタシは幼女らしい幼女より見た目の癖に中身は成熟している子が好みだ


「大丈夫大丈夫。今のアタシには怖いもんなんてないさ」


糖分120%充填完了したアタシに敗北の文字はねぇ!

昨日の夢でメンタルが多少鍛えられた気もするし


「あら、随分と余裕ですのね。でも……」


「水無瀬さん!」


「噂をすれば影、ですわ」


憤怒の形相でアタシの前にお下げを大きく揺らして躍り出て何故か一回転する少女

映像でお見せできないのが悔やまれる華麗な登場だ

赤縁の眼鏡がチャームポイント(アタシ調べ)

眼鏡の下のつり目が燃えているように錯覚する

我らが委員長様だ

気苦労が絶えないのか見るたびに怒っている


「学校で!お菓子を!食べるなと!毎日言っているでしょうがッ!」


「毎日、疲れない?」


「誰のせいですか!」


「アタシだろうな」


「得意気な顔しないで反省してください!」


「アタシ、糖分摂取しないと倒れちゃうんだ」


「見え据えた嘘が通じるとでも?」


「通じてたのは最初の一か月くらいかな……」


この委員長、馬鹿に素直で嘘を真に受けちゃうんだよな

お姉さんは将来が心配だ


「一月も騙されるなんて馬鹿なのか素直なのか悩みどころですわ……」


「と、兎も角!校則違反に変わりはないんです!内心に響きますよ?」


「皆やってるし先生も黙認してるから大丈夫大丈夫」


「はぁ、他人がしているから自分もしていい。そんな考えは自分を駄目にするだけです」


やれやれと大きく仰け反って呆れられた


「もっともな考えですわね。見習いなさい彩乃」


「アンタどっちの味方だ」


委員長の言葉に頷き手の平を返した親友をジト目で睨む


「委員長はさ。もっと気楽に生きたほうがいいんじゃない?」


あまりにもお堅いままじゃ友達も出来ない

アタシは一人でいるのが好きだから同じく一匹狼の気があるセリアくらいとしか絡んでいないけど委員長は普通の女の子みたいに遊んでみたいんじゃないかな


「馬鹿ですね。皆の規範であろうとするのが私の性分です」


例え、孤独になろうともそれが自分の通す信念だと胸を張る委員長はアタシにはあまりにも眩しく見える

なんにも知らない奴等は委員長を鬼と罵るがアタシから見たらこれほどに良い女は他にいないね

男だったら惚れてる

気楽に生きればと言っておいてなんだが委員長には変わらずにいてほしい


「というわけでお菓子とヘッドフォンは没収しますよ」


「それは委員長とはいえ譲れない」


それとこれは別だ

授業中、暇を潰すためのアイテムを取られるわけにはいかないね

毎朝恒例のアタシと委員長の鬼ごっこが幕を開けた


※ ※ ※


キング・クリムゾンッ!

学校は終わった

帰路に着く前に寄り道をするのさ

昨日をことが本当にあったことなら現場は破壊の爪痕が残ってるはずだ

アタシは昨日、ぬいぐるみを拾った路地裏に足を進めた

そこで目にしたのは戦闘があったのが嘘であったかのような変わらぬ風景だった

安堵に胸を撫で下ろす

どうでもいいけどセリアの巨乳は滅びろという恨めしそうな視線が脳裏を掠めた

肉袋なんてあっても邪魔なだけだってのに何が羨ましいんだか


「やっぱ、昨日のは夢か。そうだよな。魔法少女なんているはずないもんな」


「やぁ、また、会ったね」


「ッ!?」


フラグ回収早過ぎぃ!

振り向くと案の定、猫のぬいぐるみがぽつんと座っていた

一体いつアタシの背後を取ったんだ?


「残念ですね夢ではなかったんだよ。今、どんな気持ち?」


「泣きたい」


現実は非情だったとしても元凶のぬいぐるみを殴り倒してもいいよな?


「泣いてる暇はないけどね」


ぬいぐるみがまた昨日のように不吉なことを言うと間髪入れずに事態は動く

今度は前方からアクションがあった


「へへっ、ちょいとお姉ちゃん俺達のいいことしようや」


「地域のボランティアは楽しいぞぉ?」


「手袋とゴミ袋は俺達の使うといいぜぇ」


「な、なんだこの悪役かどうか判断しにくい奴等は……!」


RPGでよく見かける豚と人間を混ぜたようなオーク擬きが出てきた

工事でもしていたのか汚れた作業着で鶴嘴(つるはし)を持っている


「十中八九敵だよ」


わぁ、どうでもよさげなリアクションだこのぬいぐるみ

てか、魔法少女同士の戦いじゃなかったのか

一発で通報されそうな見た目のあいつ等を魔法少女なんて言わないよな?


「げへへへ、ベッドで鳴かせてやるよン」


オーク擬きの足元に下品なこと言うウサギのぬいぐるみが飛び跳ねていた


「あれは敵だな」


「欠片も残さず焼却してくれ。あんなのが同僚なんて恥でしかない」


「ちょっとちょっと!何そのリアクション!可愛い私に失礼じゃないのン!」


確かに黙っていれば可愛いぬいぐるみだ


「さぁ、彩乃。変身だ」


「流れるような動きで何言ってんだ」


誰がいつ魔法少女になるっていったよ


「流れるような動きでスルーしないでよン!」


「変態とは出来るだけ関わりたくないもんな」


「無視するのも仕方ないと思うわ」


「おい、お前等こんな変態でも主様の命令がいるんだから形だけ敬ってろって」


オーク擬きがよってたかってウサギのぬいぐるみをディスっていた


「……」


ウサギのぬいぐるみは無言でプルプル震えている

今のうちに離脱を図ろう


※ ※ ※


「夜になったよわよン!」


「いい加減しつこいんだけどッ!?」


「美少女相手なら地の果てまで追跡可能なウサギさんを侮らないでもらおうかン!」


脱兎のごとくあの場から去ったアタシだったがアタシの匂いを追ってウサギのぬいぐるみがどこまでも追ってくる

どうやっても撒ける気がしない


「チィ!行き止まりか!」


撒くどころか袋小路

来た道はもうオーク擬きに塞がれている

万事休すか


「追い付いたわン爆弾魔」


「誰が爆弾魔だ!」


未来視できるならそもそも追い詰められてないわ

着物着て魔眼持って出直してこいや

ジリジリと距離を詰められる

背後は壁

すでに背は着いていてこれ以上下がることはできない


「お前達、やぁっておしまい!」


「「「アラホレサッサッ!」」」


ウサギのぬいぐるみの合図ととめにオーク擬きは一斉に飛びかかってきた

抵抗も虚しくオーク擬きに組伏せられる


「この嬢ちゃん、いいパンチしてるぜ……」


「なんて恐ろしい子……」


飛びかかってきたオーク擬きの腹ががら空きだったから溝内に一撃かます程度の抵抗

タイマンなら今ので勝ってたのに……

残りの二匹に敷き伏せられた


「さぁ、お前達!この子の服を剥ぐの!溢れんばかりのメロォンをご開帳よン!」


うわ、このウサギのぬいぐるみゲスい!猫のぬいぐるみとは別のベクトルのゲスさだ!


「すいません姉御。俺等、流石にカタギに手を上げるわけにはいかないんで」


おっと、これは


「だから手足縛る程度で勘弁してください」


希望はねぇな

このままだと冗談抜きでヤられる

ぬいぐるみなのに鼻息の荒らさと手の動きの厭らしさを幻視する

殺られるならまだしも人形にヤられるって言葉に出来ないモヤモヤがーっ!


「おい!ぬいぐるみ!違う!ウサギじゃない猫のほうだ!」


「覚悟は決まったかい?」


やっと喋ったな

まんまりにも静かだから本当にぬいぐるみになったかと思ったぞ


「あぁ、お膳立てされてるみたいだが乗ってやるよ」


「それはありがたいね。僕と契約しろ水無瀬 綾乃」


「いいぜ。契約だイ○キ○ベーター」


「契約成立だ。後、僕はインキュ○ー○ーではない」


その瞬間


風が吹き荒れた


風以外の音は消え静寂が訪れる


オーク擬きは風の猛威に後ずさる


風は足音すら許さず掻き消す


ぬいぐるみは突風をものともせず状況を見据える


光が弾けては体にまとわりつく


いつしか姿は別のものに変貌していた


新たな魔法少女がここに爆誕した


※ ※ ※


「お?おぉ!魔法少女っていうからどんな恥ずかしい恰好させられるか心配だったけど割と普通じゃねぇか!」


真紅のジャケットに短すぎず長すぎない黒のスカート

前が多きく開かれたジャケットではあるが胸はさらしで隠されているから問題はない

肩まであった茶髪は白色へと変貌し腰まで伸びている

武器としてか両腕には黄金のガントレットが装着されていた

おおよそ魔法少女の衣装ではない


「当然だよ。今の時代エロければなんでも売れるというものではないからね」


そんなもんか?

昨日見たカウガールの魔法少女は衣装がビキニだった気がする


「へっ、カタギじゃなくなったっていうんなら話が早ぇ」


「契約せずに逃げていれば危害は加えなかったんだがな」


「悪く思うなよ嬢ちゃん。素人とはいえ容赦はしねぇ」


後ずさっていたオーク擬きの雰囲気が一変する

こいつらアタシが魔法少女だから本気を出して来なかったのか

見かけによらず律儀な奴等だ

鶴嘴を剣のように構え直し突撃を仕掛けてきた


「まずはチュートリアルだ彩乃」


「おぅよ!」


「魔法少女というからには君達は魔法を駆使して戦うのが基本だ」


「どうすればいい?」


「簡単だ。ーーー叫べ熱い魂でええええ!」


なんだそのテンション!?

でもオーク擬きの鶴嘴が迫ってきてるんだ

やるっきゃねぇ!

魔法の詠唱は自然と頭に浮かんできた

アタシの魔法


「『己だけの為の正義オンリー・マイ・ジャスティス』ッ!」


アタシの叫びに応えガントレットは輝きを放ち光が戦場を支配した






残念!百合キスはまだなんじゃよ


●水無瀬 彩乃

家庭の事情により男勝りに育った子

肩まである黒髪は一切いじっていないためところどころ跳ねている

胸はDとEの間

校則違反の常習犯


●不知火 セリア

永遠の(見た目)幼女

身長14〇

これ以上成長の見込みがないことを本人はまだ知らない

男より胸がないと言われるくらい断崖絶壁

世界は残酷である

割と告白されているが全て断っている

ロリコンしかいないもんね仕方ないね


●委員長

眼鏡

それは人類の作り上げた最高の叡智である

少なくとも彼女はそう信じている

黒髪のお下げなど本人からは飾りでしかないのだ

彩乃とセリアと違い少なからず友達はいる

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