第三話
急遽、字下げの為に一度削除させてもらいました。
何か違和感があればご報告ください。
結香の訓練を受けて一週間ほどが経った、僕は世界を旅するとのことで必要になりそうなものを買っている。
携帯食料、アウトドアで使えそうな調理器具、サバイバルナイフに刃物の手入れができるように砥石やら何やら色々と買っていた。
「あと、金策のためにギルドの会員になっておこう、たぶん一番自由にお金を稼げる方法だと思うから。」
そう言ってきたのは僕の幼馴染こと藤木結香である。
今は彼女の指示で旅立つ前に必要なものをそろえて、必要なことをしているところであった。
色々と準備している間に一週間で僕の成長具合を解説しておこうと思う。
剣術については間合いと踏み込みなどの基本的な技術をみっちり練習した、魔法の方は脳内で魔法陣をイメージして呪文を唱えるだけで発動できるところまで成長した。
結香曰く僕は魔法で戦う方が身の丈に合っているのだとか。
後、生活で必要になりそうな体の清潔を守るための魔法も習得した。
気分は晴れないけど体まとわりつく汗のベタベタ感が一瞬でなくなる便利な魔法であった。
「さて、ギルドの会員として全国のギルドで登録されたから、あとは必要に応じて依頼をやってお金を稼ぎましょう」
「了解だよ、じゃあ準備もできたし旅の最初の目標を聞いてもいいかな?」
「そうね、卅麻には絶対必要な物だし、必ず手に入れなきゃいけないものだから説明しておくね」
そう言って結香から説明されたのは「聖遺物」と呼ばれるこの世界最初の歴史とされている「世界創世時代」と呼ばれる時代に神の手によって作られた武具のことで、その武具によって与えられる試練を乗り越え、聖遺物に認められ、契約することで使用できるようになるよくある「聖剣」とか「魔剣」とか呼ばれるものである。
僕としてはそう言ったものが使えると思うとテンションが上がるわけで、旅立つ前だと言うのに結香に彼是と説明を受けた。
曰く、聖遺物の所持者となれるのはそれ相応の実力を持つことが前提で、結香がこの世界で聖遺物の所持者として知っているのは王宮にメイドさんとして仕えている女性だけとのこと。
古文書の内容から相当数の数が存在すると思われているが、実際に目にしたのはその女性が持っている聖遺物だけで、他のものは発掘どころか所在すら分かっていないのだとか。
「ではどうやって手に入れに行くのか?」という質問を僕は結香に問うてみたところ。
「持つべきものが近くに来ることでその者に反応する」と言う答えが飛んできた。
それってつまり世界中を旅してから破壊神に挑むってことだよねっ!?その間に滅んじゃうんじゃない!?
「さて、彼是と説明している間に魔物の生息域に来たわね」
「この森がそうなの?」
僕たちが訪れたのは王国から西側に広がる広大な森である
「ええ、この中には獣の姿をした魔物が多いと聞くわ、大したことない相手だけど油断しないでね、卅麻は戦闘経験ゼロなんだから」
「はい、肝に銘じておきますっ!」
びしっと敬礼をして結香の言ったことに返答する。
いや、行動はふざけていても内心はかなり真面目ですからね、結香さんそんなに怖い顔で睨まないで下さい。
「はぁ……まぁ何かあっても私が守るから安心して」
「でもできるだけ自分で自身の身を守るよ」
「そうしてくれると助かるわ」
◇◆◇◆
そうして二人で森へと足を踏み込ませてから一時間と三〇分が経った。
ここまで来るのに灰色の毛に覆われた狼五匹と――この世界では「ウルフ」って呼ばれているらしい――大きなカブトムシ三匹に――全長3メートルはあったと思う――襲われたけど全て火属性の魔法で焼き払ってきた。
僕ってビビることなく戦ってるよ今はそんな自分に驚いている。
ふと、結香が立ち止まった。
それに合わせて僕も立ち止まると、結香が目的地に着いて説明してくれた。
「ここから先は竜国の領土になるわ、まずは森をぬけて竜国に住んでいる竜王様に会いに行くわよ」
なん……だと……僕の聞き間違いでなければ、かのドラゴンに会えるというのか!?
そう思うとテンションがどんどんと高ぶり、ついにエベレストを超えた。
「おお!ファンタジーの王者!ファンタジーの世界で会いたい生物第一位!あのドラゴンにお目通り叶うんだ!!」
「はしゃがないの、竜たちは一応だけど私たちが救世主と巫女であることに気づいてくれるけど、所詮は矮小な人間なんだから無礼の無いようにしないと」
「了解であります!」
そして結香を先頭に僕は森をさらに歩き始めた。
二時間ほど歩くと森を抜けた、森の次に見えた光景は険しい山であった。
「これを登るの……」
「風属性の魔法で体中に風を纏っていけば酸素低下による高山病の類は回避できるはずよ、卅麻なら五年くらい魔法を使っていても余裕でしょうね」
いや、結香さん僕は高山病うんぬんより、このエベレスト並みに高い山を登るのかを聞いているんですが……てかそんな方法で酸素を維持するなんてエベレスト登山隊が涙目になりそうな話だね。
「楽に登れないの……?」
「無いことはないけど、そもそも竜たちが背中に乗せてくれるとは思えないし」
どうやら竜はプライドが高く――まぁ大体は予想してたけど――人を背中に乗せて飛行するなんてまずあり得ないんだそうだ。
中には竜と心を通わせて飛行してもらっている「竜騎士」なる人物も存在しているらしいけど、そんなのは本当にごく一部の心優しい竜じゃないと無理なんだそうだ。
それを聞いて意気消沈していた時、突如爆発音が響き渡る。
「な、何!?」
「魔法?いや、この感じは違うわね、卅麻!爆発の有った所に行きましょう!」
「わかった!」
二人同時に走りだしたその時、木々をなぎ倒しながら巨大な金色の物体が飛んできた。
途中で一気に上昇して体制を立て直したその物体は、金色の鱗を持った巨大な竜であった。
「あれは!竜王様!?」
「うそ!?でもなんだかこっちに気づいてないみたいだよ?」
どうやらあの竜は一三〇〇年もの間、王座を守り続けている竜王その方であるらしい。
しかし、至る所が傷つき、かなり痛々しい姿となっている、心なしか弱っているようにも見える。
その姿を確認した後に遅れてもう一つの異様で強大な気配を感じとった。
「結香!まだ何か居るよ!」
僕の言葉を聞いて結香は森の方を睨みつける。
暗い森の奥から一つの小さな人影が浮かび上がった。
「あはは!すごいすごい!魔力を隠蔽していたのに私に気づくなんて!一体何者なんだろうね?」
鈴のような美しくあどけない声を放った人影は、光を浴びてその姿を現す。
それはとても小さな女の子だった、おそらく年齢は七歳から八歳ほどで、身長よりも長い黒い髪を引きずる黒い瞳をした子供であった。
「私を見つけた君には特別に正体を教えてあげよう!」
少女はその瞬間に僕の目の前に立っていた。
「貴様!我の相手を忘れるなっ!!」
あ、無視されていた竜王様が怒ってる。
口からギラギラと燃え上がる金色の炎がまぶしい。
「だって、お前つまんないんだもん、そうだ!私のお家のおもちゃになるなら相手にしてあげるよ!」
「ほざけ!」
少女の挑発に乗った竜王が渾身のブレスを吐き出す。
辺りを飲み込みながら水分を蒸発させ塵すらも焼き尽くす業火を前に少女はただ見つめているだけであった。
巻き添えを覚悟した僕はきゅっときつく瞼を閉じたのだが、いつまでも訪れない感覚に少し瞼を開けると、あれだけの炎が火の粉すら残さず消えていた。
僕の横で硬直していた結香が震えながら口を開いた。
「まさか……この少女は『黒の魔神』!?」
魔神とは本で読んだところ、永い間生き続け力を蓄えて魔王をも超える力を持った魔族の事を差す名称だったはず。
その強すぎる力故に各地で封印されていたり多大な犠牲を払って討伐されていたはず。
魔神の呼称は基本的にその魔神が得意とする属性にあった呼び方をされるとされている。
あとは見た感じの色とか。
彼女が黒の魔神と呼ばれるのはおそらく髪や瞳が黒いからと判断できる。
「そうだよ!巫女のお姉ちゃん! あ!巫女がいるってことはこの人は救世主のお兄ちゃんになるんだ!」
「なぜ魔界の地下深くにある地獄にいる貴女がここに……?」
結香の質問に魔神は可愛らしく顎に人差し指を当て考えた後に。
「新しいおもちゃが欲しくなったから!」
と元気いっぱいに答えた。