プロローグ
以前に投稿していた物の改訂版となります。
読者の暇つぶしになればと思います。
よろしくお願います。
その物語は、ごく普通の生活がつまらないと思っていた少年が、ある晩に一人の男と出会ったことから始まった。
その物語は、ある晩に出会った一人の男がとある少年をそこへ連れてきたことから始まった。
◇◆◇◆
少年の日常が塗り替わる日の朝、その少年の名は「宮流卅麻 (くうりゅうそうま)」
年齢は16歳で特に特出したルックスを持っているわけでもなく、どこにでもいる普通に冴えない少年である。
「ふあぁ~……学校に行かなきゃ……」
眠そうに目をこすり、布団を除けて起き上がる卅麻。
彼は高校生でその日は、登校日である。
とりあえず、部屋を出てリビングへと移動する。
ベッドの横に揃えてあるスリッパを履き、カーテンを開け朝日を浴びる。
「ふあぁ~憎たらしいほどの快晴だね」
もう一度あくびをして一つ呟いたのちに部屋から出る、そのままフローリングの廊下を通り、階段を降りる。
彼が最初に向かったのはリビングのテーブル、そこには卅麻の為の朝食が準備されていた。
「今日は目玉焼きとウィンナーか」
そんなことをぽつりと呟くと炊飯器からご飯を茶碗に盛り、鍋の中から味噌汁を掬いあげ、別のお椀に盛る、それを持ってテーブルに置き、椅子を引いて座る。
「いただきます」
手を合わせて作ってくれた母へ感謝の意を示す。
彼の両親は共働きで、夜しかいない故に卅麻が起きた時には既に出勤して家には居ない。
素早く朝食を済ませ、学制服に着替え、教科書などが入ったバックを持って家を出る。
家の扉に鍵を差し込み左に回してカチッと言う音を聞いたあと、鍵を抜き取りドアノブを回して鍵が閉じていることを確認する。
「戸閉まりはよし、じゃあ行ってきます」
誰もいない自宅に一言出発の挨拶を済ませ歩き始める。
学校までは卅麻の家からなら歩いて10分と言ったところで到着する。
季節は夏が終り徐々に秋の陽気が世界を彩っている。
「あ、卅麻だ、おはよ~!」
「おはよ、今日も元気だね、『結香』」
卅麻に声をかけたのは彼の幼少の時からの付き合いがある、卅麻曰く腐れ縁によって結ばれた少女である。
日本人離れした少し赤みのかかった茶色の大きな瞳に、薄い桃色の唇と、少し小さめの鼻、後ろは肩甲骨まで伸ばした瞳と同じ赤みのある茶髪の髪をした、少しあどけなさが残った美少女が卅麻の右横へと走り寄ってきた。
「卅麻はいつもテンションが並だよね、特にハイになったりしないし」
「僕はそう言うタイプじゃないから……」
そんな他愛ない話しをながら二人は学校へと到着した。
約六時間の授業を受け、いつも通り校舎の清掃を他の生徒たちと行い下校した。
「さて、帰ろう、別に何かやることある訳ではないし」
卅麻は教科書の入ったバックを手に取り、一人呟いて校舎の玄関から出て行った。
「卅麻、一緒に帰えろ?」
そう彼を誘ったのは今日は掃除の当番から外れていた結香であった。
卅麻は彼女の誘いに首を縦に振って肯定の意を見せて並んで歩き始める。
その後3分ほどの間、二人は無言のまま歩き続けた、しかし結香の方からその沈黙は壊された。
「ねぇ、この後って暇?」
「まぁ、6時くらいまでは親が帰ってこないから暇だけど……」
別に帰れない訳ではないが家に帰っても基本的にやることがないため、いつもは昼寝をしているかパソコンでサイトを見て回ったりと大したことはしていない。
彼のその言葉を聞いて、少し嬉しそうに彼女はつづけて聞いてきた。
「じゃあさ、今から私の家に来ない?」
そう言われた卅麻は「う~ん」と少し思考した後に一言。
「暇だし、折角の機会だからお邪魔するよ」
彼はあまりクラスメイトの家とかに行かずに、学校の帰りはまっすぐ家に帰っていた。
卅麻は性格上、人との触れ合いはさほど得意ではないため、クラスでも特に仲がいいという友人はいない。
折角の機会と言うのは、友人の家に行く数少ない機会だからと言う意味である。
◇◆◇◆
所変わり、結香の家に邪魔することになった卅麻である。
今は結香の部屋に通され、そこでもてなしに出されたクッキーを食べながら、結香と向き合って座っている。
部屋の内装は女の子らしく、かわいくデフォルメされた色々な動物のぬいぐるみが部屋を飾っていて、壁紙が薄い桃色をしているためかファンタジーの世界に迷い込んだような気分になる、少し不思議でとてもかわいらしい空間であった
「そう言えば、何で唐突に僕を家に招待したの?」
「へっ!?」
彼に素朴な疑問を投げかけられた結香は素っ頓狂な声をあげてから、あわてた様子で答えた。
「たっ、ただの気分だよっ! 私も暇だったから、一緒に暇を持て余さないかなとか、思っただけだよ」
結香の様子を「ふ~ん」と軽く流したが、彼女の頬が赤く染まっていた。
その後はほとんど、他愛もない話ばかりをしては卅麻がたまたまネットで発見したトランプで出来る簡単な手品をしたりして遊び、彼女の家を後にした。
家に着くと、すでに親が帰ってきているようで、家の鍵が開いていた。
「ただいま~」
「あら卅麻、遅かったわね、おかえりなさい」
そう言って出迎えたのはエプロン姿の母、「宮流愛華 (くうりゅうあいか)」
「ちょっと結香の家に邪魔してたよ、それよりも母さんの方が早いじゃん、どうしたの?」
「今日はいつもより早く仕事が片付いたからね、少し早く帰ってきたのよ」
機嫌がいいのか、母はそう言った後に鼻歌交じりにキッチンへ向かった。
夕食が完成して間もなく、父も帰ってきた。
食事を終え、卅麻はいつも通りテレビを見て、部屋に戻り眠った。
◇◆◇◆
深夜、彼はある感覚に襲われ、目を覚ました。
「ん……トイレ……」
まぁ、だいたいの事は分ったであろう、彼は用をたす為に立ちあがろうとする。
そして、布団を除け、起き上がった時……
「お休みのところ、大変申し訳ございません」
そう言った男の声が卅麻の頭部の後方から響く。
声から察するに大体、40代くらいの男性の声。
方向からすると丁度、ベッドのすぐ右脇、枕元にその男は居た。
「あの~、どなた様ですか? というより何で僕の部屋にいるんですか? 警察呼びますよ」
完全に不法侵入だ、正直なところ普通の対応だろう。
「貴方様は、成長された、今なら救世主としての素質もあるでしょう。」
卅麻の言っていることは完全に無視のようだ。
それよりも、警察を呼ぶことよりも彼は興味をそそられる言葉が聞こえた。
――救世主の素質? 一体どういうこと?
興味と同時に彼は混乱した。
自分はただの高校生で、宮流卅麻という、一人の少年である。
しかし、この男の人は卅麻のことを確かに「救世主」と言った
「とりあえず、意味がわからないので、詳しい説明をお願いしてもよろしいですか?」
「どうやら、記憶がないようですね……仕方ありませんね、かれこれ10年以上も昔のことですし、貴方様は非常に幼かったですから……」
そう言って、男は説明し始めた。
男が来た世界はこの地球とは全くもって違う世界であり、そこは人は魔物と言われる怪物、ましてや龍と言った様々な生物が生きる世界らしく。
今、その世界は破滅への道を辿っているらしい、そして、その破滅から世界を救えるのは卅麻だけと言うこと。
卅麻には何か特殊な力があるのか、一見すると普通の少年だが、とてつもない潜在能力が隠されているらしい。
そして、卅麻には今すぐにでもその異世界へと出向き、世界を救うためにともに来てほしいとのことであった。
「唐突すぎて、決め切れないんだけど……」
「無理もないですね、正直なところ話が大きすぎて理解も追い付いてないかと」
「いや、大きいとか小さいとかじゃなくて、理解不能すぎて頭が追い付いてないんだけど……とりあえず一日貰って良い? その間に決心すからさ、またこの時間に会いに来てくれる?」
男は「承知しました」と礼儀正しく一礼しながら暗闇に消えた。
そしてこの出会いがある異世界を救った救世主の活躍として永遠に語られるものとなる。
実は改訂版ですが、推敲をし直して文を追加したりする程度の作業しかしてなかったりします。
これからも頑張っていこうと思うのでよろしくお願いします!