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クロス・ロード  作者: lot
序章:出会い
5/39

第四部:模擬戦

ロアはまるでコロシアムのような訓練場に立っていた。













部屋で休んでいたのだが、突然アリアが入って来て連絡をくれたのだ。


「陛下がロア様の実力を見たいと仰せられています。それで騎士団の総団長であるアルフレッド様と陛下の親衛騎士であるゴルベス様がお相手をする模擬戦をして欲しいとのことです」


実力をみたい、と言うのは国の戦力へと組み込みたいとでも考えたのだろうかロアは思った。

プレイヤー時代もロアの実力を知った人からよくギルドに勧誘されたりもしたのだ。

しかし、ロア自体はあまり何かに所属すると言う事が好きではなく一人で活動していたのだ。

もう一つ気になるのは対戦相手である二人の話。


「総団長というのは何と無く分かるのですが、親衛騎士というのはどういう物なのですか?」


恐らくは総団長と言うのは騎士団全体で一番上の地位だろう。

と言う事はかなりの実力者であることは推測出来る。

だか親衛騎士というのは聞いたことがなかった。


「親衛騎士はわかりやすく言えば王族に一人つく直属の騎士で、王族によって選ばれたエリート騎士の称号です」


つまりゴルベスと言う相手もそれなりの実力者と言うことだろうか。


最も、この国の実力者の基準が分からないのだが。

その辺りも気になったので模擬戦自体は引き受けることにした。











中心に立っているロアの目線の先には二人の騎士がいた。

どちらもフルフェイスの兜をつけているため顔は分からないが、どちらも重鎧で身を固めた屈強な体ではあるようだ。


(あの鎧……ミスリル聖銀製か)


ミスリル聖銀は軽く、丈夫な上に呪いへの耐性をもつ非常に優秀な装備だ。

上級者御用達といえる鎧を着込んでいるあたり流石エリート騎士と総団長と言ったところか。

同じミスリル聖銀の鎧だが、片方鎧を白く染めあげてあった。

もう一人は青とも緑とも言えぬミスリルそのものの色の鎧だ。


「我は国王陛下の親衛騎士であるゴルベス。手は一切抜かない故貴様も実力を存分に発揮するように」


白い鎧の騎士がまず名乗りをあげた。

威厳たっぷりと言った様子で両手剣の部類であるバスタードソードを引き抜いている。


「私はエルメリア王国騎士団総団長であるアルフレッド。この身をもってそなたの実力を知りたいと思う。決して手は抜かないで欲しい」


一方総団長の方は礼儀をわきまえた挨拶の後に腰に下げていたショートソードを引き抜いて真っ直ぐ構えている。

模擬戦はおたがいに名乗り終われば合図と共に開始される。


「ロアと言うものです。貴方達のような方との手合わせ、光栄に思います」


一礼して、一歩前にでる。


(武器を構えぬとは、我を舐めているのか?)


名乗った後も武器を構えようとしないロアにゴルベスは侮られている、と思っている。

騎士たるもの、慢心は最大の敵だと考えているからだ。


(やはり、騎士に向く人間ではあるまい)


バスタードソードを強く握りしめ、目の前の相手を一蹴する準備を整えた。


ロアは二人の騎士の行動を様子見することから始めようと思った。ロアの目的はこの世界の実力者と呼ばれる相手の実力を知ることが目的なのだから。

周りを見渡すと観客席のような場所には貴族や王族、騎士らしき人間で一杯になっていた。

誰もがロアを嘲るような目線を送っている。

相手が相手と言う事だろう。

ロアを哀れな見せ物として捉えている目。

しかしロアは負ける気はこれっぽっちもない。

全身に魔力を込めたロアは準備を完了させた。




「では、模擬戦を開始する。相手を殺さぬようにする事。では、始め!」

全員が準備を整えたのを確認すると観客席の中心にいるグレイスが開始の合図をした。


合図と同時にアルフレッドがロアに突進して来ていた。

ロアは一瞬でアルフレッドが囮である事を看破する。

アルフレッドが間合いを詰め切るその瞬間に地面を蹴りアルフレッドの体をやすやすと飛び越え回避する。

その間もゴルベスに注意することを忘れなかった。


ロアが地面に着地する、と同時に僅かな魔法の発動を感知した。間違いなくゴルベスだ。

(時空転移系の魔法か……)


ロアの予想通り、ゴルベスは一瞬で五十メートルもの距離をゼロにしていた。

振り上げられるバスタードソード。

(これをどう受ける!?)


ロアはキマイラを無傷で倒したと言うのだからなんらかの方法で回避するだろうとゴルベスは考えていた。

しかし、ゴルベスが想像もしていなかった方法で斬撃を捌ききった。

ギィンと、鉄と鉄がぶつかり合う音がした。


「何……!?」


声を上げたのはゴルベスだけではない。

アルフレッドや観客席にいたものまで驚きの声を上げている。


何も手にしていなかったロアが左手に黒い剣を手にしてバスタードソードによる斬撃を食い止めていたのだ。

ゴルベスは一瞬ロアの腰に目をやる。

剣は未だ刺さったままだ。

どうやって目の前の相手は剣を手にしたのだ。ゴルベスの思考は急速に加速していく。

そして一つの可能性にたどり着いた時ロアに押し返された。


(まさか、【シャドー・イメージ】か……)


【シャドー・イメージ】は闇系統の魔法の一つで、かなり高位に位置する魔法だ。

影から物体の複製を行う高度な法であり、さらに複製した物体の性質は格段にランクダウンするハンデもある。


と言うのがゴルベスの知る【シャドー・イメージ】の詳細だ。

だというのに目の前の相手はほとんど剣の性質に忠実に複製出来ている。

ロアの実力など、その時点で明確に分かっていた。



ゴルベスを押し返し、恐らく後ろからアルフレッドが遠距離の攻撃を仕掛けてくるだろう、と読んでロアはアルフレッドへ詰め寄ることにした。

今度はロアの番だ。


ロアの予想通り遠距離系の魔法を構えていたアルフレッドはロアの疾走を見て焦って魔法の詠唱を中止する。

そして、危機感を覚えて横に身を投げ出した。


それが吉と出たのか、ロアの神速の一閃を回避する事が出来た。


(行動も読み切り、攻撃は恐ろしいほど早い……こいつは化物か……!?)


ほんの一瞬のやり取りでロアの恐ろしさを悟った騎士二人は流石と言えるだろう。

それと同時に目の前の相手が本気を出せば一瞬殺されると言うことに気づかない点で完全にロアに劣っていた。


ゴルベスが転移魔法で攻撃を仕掛けないところを見るとこちらの様子を伺っているのだろう。

対してロアはと言うと二人の実力をすでに読み切っていた。

今の体勢は完全に挟み撃ちの状態だが、それを踏まえても勝てる相手だと判断した。


(まずは牽制して、一人ずつ仕留める)


そう考えるとまずは牽制のための下位魔法を詠唱し始める。


「闇の息吹に魂まで凍り、砕けよ【ブラックアイス】」


反対の位置にいる二人の騎士へ向けて黒い氷の息吹が放たれる。

下位魔法とはいえ、熟練したものが扱えばその威力は高まるものだ。

騎士達は即座に息吹を躱し、ロアへと攻撃を加えに走る。


またしても挟み撃ち。しかしロアは一切焦りを見せなかった。


「【ブレイブスラッシュ】!!!」


アルフレッドの渾身の叫びと共に放たれる五回にも及ぶ斬撃は確実にロアの体を捉えている。

模擬戦である以上、威力はかなり抑えたがそれでも直撃すれば再起不能の状態に陥るだろうほどの一撃だ。

ゴルベスは事前に転移魔法で退避している。

これで勝負は決まったと誰もが思った。

一人、ロアを除いて。


「【血雪花】」


不意にゴルベスの耳にそんなつぶやきが聞こえた。

次の瞬間、ゴルベスの体に衝撃が走る。

「な……?」


驚きはアルフレッドに倒されたはずのロアが目の前にいること、そして一瞬で十以上の斬撃を叩き込まれた事へのものだ。

少し離れたところにいるアルフレッドのほうをみる。

そこに倒れるはずのロアの姿はふっ、と薄れるように消えていた。


「あれは……虚像だったのか……」


舐めたのは自分の方だ、と理解するとゴルベス意識は落ちて行った。


かなり抑えたつもりだったが、ミスリルの鎧はかなりの損傷があるようだ。

加減を誤れば殺していたかもしれない、そう思うとゾッとした。


しかしまだ戦いは終わっていない。

アルフレッドはまだ戦意を灯しているようだ。


周りの貴族達は息を呑んでこの戦いを見ている。

どうせなら最大限に驚かせてみよう、とロアは考えた。


アルフレッドはまた詠唱を始めている。恐らく光系統の魔法だろう。


「我が誇りをかけて闇を打ち砕かん【ソウルブレイド】!!」


数本の光の剣がこちらに向かって飛んで来ている。

それを眺めながらロアは限界に近い早さで対抗する魔法を詠唱する。


「全ての業を焼き尽くす煉獄の焔をその身に受けよ【シャドウフレア】」


目前まで光の剣が迫ったところで闇の高位魔法が発動する。

ロアの前に現れたのは直径十五メートルにもなる巨大な黒い火球だった。

それはかなり早い速度でアルフレッドの放った光の剣を飲み込みアルフレッドに迫った。


観客席の貴族達でさえ悲鳴を上げている。

あんなものを受ければ跡形もなく焼き尽くされるだろう。


しかし、黒い火球は速度を上げてアルフレッドに迫り、焼き尽くす直前で自然消滅した。

当然、ロアが止めたのだ。


(こんな、ことが、あるのか)


アルフレッドは殺される、と言う恐怖から解放され、両膝をついてしまった。

それから、アルフレッドが立ち上がることはなかった。


戦闘シーンって苦手だなぁ、って思っちゃいます。でも好きなので練習して面白くかけるようにがんばりたいですねー。


ちなみに、この二人ただの咬ませ犬じゃないんです。いずれ書いて行こうと思いますが…

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