第六話 ハンドゥアム・ジョブ 潜入
タイトルの意味は「退屈な仕事」。コゲツからすれば、カーキと離れ離れになる以上、少々退屈なようです。
「――――――前方に障害物無し、生体反応なし。探知魔法及び絶対不可知魔法、一〇〇パーセントの発動を確認……」
「おい、しっかりと目で確認しろよ。探知魔法若しくは視覚だけのチェックなど、意味がない。併用せねばな」
「任せてください」
小声で交わされる声を聞きながら、コゲツは人間の足をぶらぶらさせていた。
此れは彼女が得意とする幻術ではない。人間に変身できるのは、彼女が魔法を使わなくても使える能力、即ち固有能力の一つである。
彼女は、まるで人形を運ぶかのように、身長三メートル近い大男に抱えられていた。“大男”といっても、ひょろりとしていて縦に長いだけである。
オマケにやたらと薄っぺらい。ペラペラで、まるでハサミで切り取られた紙に描かれた絵のようだ。巨大なローラーで押し延ばされたようだ、と言ってもよいだろう。
その男はGAの漆黒の隠密戦闘服を着込んでいるが、肌は墨で塗りつぶしたかのように真っ黒であり、顔は塗りつぶされ、のっぺりしており目も鼻も口もない。
端的に言うと、其れは「長く伸びた細身の成人男性の影を切り取って服を着せた」ような外見をしていた。
彼は、天上級モンスターの一階位下に位置する上級モンスター“影法師”である。
本来は影の中に自在に入り、その影の持ち主を支配したり内側から喰らうモンスターなのだが、現在はコゲツの影に入り、彼女を抱えながら空を飛んでいた。
コゲツは数分で大洋を駆け巡れる程の遊泳速度を誇るが、飛行能力は持っていない。
今回の任務は、船舶とかち合わせになる危険を恐れ、海からではなく空からの侵入となった。帆船が最新艦扱いされる世界ならば、まだ飛行機はないだろう、というカーキの判断である。
さらに、元々GAには泳げるモンスターがあまり多くない。少なくとも、飛行可能なモンスターよりは遥かに少ない。潜入するのはあくまでコゲツだけだが、できる限り多くのサポート要員を、侵入するまでは用意しておきたかったのである。
もっとも、此れはカーキがコゲツだけに任せるのに、些か不安を覚えたからであるが。彼女なら、船舶があれば吹き飛ばして進みかねない。何しろ、彼女の遊泳速度は魚雷などとは比較にならない程高速である。
対して、此のシャドー・ストーカーは、以前に飛行能力を有する敵を捕食し、その能力を手に入れている。
シャドー・ストーカーは捕食した獲物の能力の一部を、自在に使うことができるのである。但し、そうやって獲得できる能力には限界がある。
「……エンケぇ、もっと乗り心地良くしてくれよ」
「はっ!」
時折、少女のリクエスト通りに持ち方を変えるなどしているエンケと呼ばれたシャドー・ストーカーは、内心かなり焦っていた。
コゲツの機嫌が、傍から見ても悪いのだ。
蛇の足がないため、彼女の姿は、大人が抱えられるくらいの、中学生程の背丈の少女でしかない。しかし、彼女から放たれる強烈な水の波導は、今にも眼下に広がる海が割れそうなほどだ。
『CC』におけるモンスターの階位は、高い方から神格級、天上級、上級、中級、下級となっている。
これは神格級モンスターとヘヴンモンスターの差にも言えることなのだが、ヘヴンモンスターとハイモンスターの実力差は、歴然としている。ハイモンスターが一〇〇〇体いたとして、その実力がヘブンモンスター一体に釣り合うか。答えは明らかで、全く釣り合わない。
それほどの差なのである。
自身の腕の中で、自身とはレヴェルの違う存在が不機嫌そうに足をぶらぶらさせているというシチュエーションは、エンケを凍りつかせるのは十分だった。本来なら、人間が恐れてやまない闇夜の支配者が、こうして縮こまっている。傍から見れば滑稽だが、当のエンケからすれば、生命の危機であった。
――――こんなモノを発してちゃあ、いくら丹念に隠密系の魔法をかけても無駄だろうなぁ。
諦観しつつ、エンケは無い瞳から涙が零れ出そうになった。まぁ、異常を感じ取られても、この謎の一団の存在自体は露見しまい。
そう強引に納得し、エンケは自分とコゲツの周囲を警戒しながら飛行している、八体のモンスターを見つめた。
その姿は、例えるなら「戦闘服を着込んだ鴉人間」と言おうか。鴉の頭を持つが、胴と手足は人間のそれだ。そして、背中に大きな鴉の翼を生やしている。
一見飛翔兵士とよく似ている――――顔が(様々な)鳥で、身体が人間、背中に鳥の翼を生やしているところが共通点である――――が、実は全く別系統のモンスターである。
早い話が、悪魔だった。
“夜鴉の悪魔”という中級モンスターである。強力な火炎系統の魔法と偵察・哨戒・隠匿・暗視などに役立つ補助魔法を使いこなす、闇夜の戦士だ。
上級悪魔の僕として多く召喚されるが、かといって一体一体の戦闘能力は決して低くはない。
コゲツを除く九体のモンスターは、何れもGA第一夜戦大隊に属している。主な任務は夜間における戦闘だが、実際は夜陰に紛れた潜入・偵察・輸送などの様々な任務に対応できる部隊である。
そう、現在コゲツ達は、月の輝く夜空の元、漆黒に染まった海の上を移動している最中であった。
目的地は、“三日月の大陸”とカオ・クロヌを結ぶ線を重点的に偵察し、測量した結果発見した、島から然程離れていない場所にある、さびれた海岸であった。
三日ほど偵察しても人の気配はなく、当然誰かが監視している、ということもない。周囲を森に囲まれ、近くを行きかう船舶もない。秘密裏に上陸するには、もってこいの場所だ。
カーキとマナたち総督が話し合った結果、夜陰に紛れての迅速な上陸が決定されたのである。
「見えたぞ、大陸だ」
一番の古参兵であるナイトクロウ・デーモンが唸るように言うと、彼らは周囲を警戒しつつ、下降体制に入った。
ナイトクロウ・デーモンは階位はミディアムであるが、夜間における暗視能力はモンスターの中でも一、二を争うものだ。彼らは鴉の目をせわしなく動かし、ぬかりなく周囲を探る。
彼らにとって、「見知らぬ土地に乗り込み、任務を果たす」という今回の任務は、彼らのGA軍団員としての誇りとナイトクロウ・デーモンとしての誇りを刺激するのに十分だった。此処で失敗し、軍団員としても悪魔としても恥晒しになるなど、冗談ではない。
故に、声にも緊張が孕まれている。
「下降予定ポイント、障害物無し」
「相変わらず人気はありません。生き物も……ネズミ一匹引っかからない」
「妨害魔法及び対隠密系魔法の反応、ありません」
「よーし、いくぞ!」
様々な魔法を重ね掛けしたおかげもあり、音もなく着地に成功した。
ぴょん、とコゲツはエンケの腕の中から飛び降りる。
そして、着地して直立不動の姿勢を取っている九体の軍団員を見上げ――――全員、コゲツより背が高いからこうなる――――億劫そうに言った。
「御苦労さま。それじゃあ、ぼくは任務を開始するよ。定時報告は打ち合わせ通りにするからと、そっちの大隊長……誰だっけかな? まぁいいや、上司さんに伝えておいてくれないかい? その人が、我が君に知らせてくれると思うから」
「はっ! それと、物資がさらに必要になった場合は計画通りに此処に輸送いたします。輸送先が変更になった場合や中止せざるを得ない場合も、御一報ください。恐らく、我々が主体となって輸送することになるでしょうが」
エンケの質問を聞き、コゲツは一瞬だけ、目を不気味に紅く光らせた。
「…………ある程度持ちこんでいるから問題ないと思うよ。一度行った場所なら、転移や転送も可能だけど、何処に人の目があるかわからないしね」
「はい。それでは、長居はできませんので――――コゲツ殿、御武運をお祈りします。偉大なる総帥閣下の微笑みが共にあらんことを」
その声と共に、エンケと八体の悪魔は一斉に飛び立っていった。
「……」
暫くその様子を眺めていたコゲツは、息を吐き、身体をさすった。
「あぁ、気持ち悪い……何で、あんな屑に抱かれなきゃあいけないんだか」
カーキの命令がなければ、触れた瞬間に殺していたところだ。せめてそこそこ便利な椅子だと思わなくては、やっていけない。
毎日磨き続けている、カーキ専用の雪のような白い肌を指先でなぞり、汚れていないかを確認する。
「さて……と」
カーキの命令が下された以上、自分は其れに従うだけだ。頭の中で命令を復唱しながら、コゲツは歩き出した。
近辺に人の気配はないという。有象無象共の報告を鵜呑みにするつもりはないが、かと言って、現在コゲツが誇る感知網に何かがかかっているというわけでもなかった。
カーキが、此の度の任務にコゲツを出した理由の一つが、彼女の感知網にある。
魔力を全く消費せずに、彼女は膨大な範囲に渡る精度の高いレーダー網を構築することができるのだ。これもまた、彼女の固有能力の一つである。
しかも、魔力を使用していないため、マジック・ジャミングも意味をなさない。また、不可視化系の魔法も、視力でとらえているわけではないので此れまた無意味である。
「ううん、確か……あった、コレだコレ」
着物の中に手を突っ込み、何かをまさぐる。取り出したのは、“暗殺者の布袋”という、手の平に乗っかるくらいの薄汚れた布袋である。見かけは小さいが、実際はアイテムや装備品なら何でも入るという優れものだ。
高位のバックなら、一〇〇や二〇〇のアイテムを収納できるのは当然だが、此れは最大でも七〇しか入らない。
その代わり、探知できない程微量ながら、それでも強力な探知阻止魔法が常時発動しており、布袋の存在も中身も秘匿させることができる、便利な高位級アイテムである。
それを見つめるコゲツの瞳は爛々と輝き、口からは熱い吐息が漏れている。
「我が君……我が君、我が君ぃ……」
コゲツは、其れをぎゅっと抱きしめ、布袋を鼻に押し当てる。微かに香るは、愛する飼い主の匂いだ。
命令を受けた後、直接カーキから手渡されたものだ。中にあるアイテム自身は、カーキ自らが吟味し、入れてくれたもの。
今の彼女にとっては、最高級の護符など比較するにも値しない、大切な御守りだ。抱きしめるだけで、あの御方の笑顔が瞼に浮かぶ。
……それに、あのエンケとかいう男はケチを付けた。
足りなくなるわけがない。あの御方が、折角選んでくださったのだから。
一瞬で噴き上がった殺意を抑えるのに成功した自分をほめてやりたい。しかし、アレもまた、カーキが心をこめて作り上げた配下。殺すのは簡単だが、あいつが明確にカーキに逆らいでもしない限り、殺したくとも殺せない。
――――此の任務が終わったら、訓練にでも誘おう。
壮絶な笑みを浮かべながら、布袋に鼻を擦りつけて頬を赤らめている和服の美少女は、其の儘フラフラと歩き出した。
暫く歩くと、コゲツの感知網が何かを捉えた。
「……何だ、コレ?」
こてん、と首を捻る。彼女の脳内には大きな反応が一つと、小さな反応が二〇程だ。
しかし、その小さな反応が、どんどん消えていっている。いや、正確には生体反応が消えている。身体はそのままだ。原形が保たれていないモノもあるが。
つまり――――
「戦闘? 面倒だなぁ」
カーキに全裸で迫るチャンスを逃したことも含め、最近の自分は運がない。
折角の潜入任務だというのに、いきなり戦闘に出くわすとは。
いや、かなり離れているが、彼女にとって自身から半径六〇キロ前後は常に感知圏内だ。本気を出せば、さらに数倍から数十倍の範囲を感知できる。彼女の頭の片隅では、そのデータが濁流のように流れ込んできて、常時処理されているのである。
「……ん? でも、コレってチャンスじゃあないかなぁ?」
戦っているのは何か?
戦争――――国軍と国軍同士の戦いか。
反乱――――立ち上がった民衆を、国軍が掃討しているのか。
襲撃――――何処かの賊が、民衆を襲っているのか。
仮に、国軍が関わっているならば。いや、相手が賊崩れだとしても。
――――チャンスだ。
この大陸に存在する国や地理についての情報を、得ることができる。
任務初日で、だ。報告すれば、愛する我が君はどんな反応をするだろう?
褒めてくれるかもしれない。ねぎらってくれるのかもしれない。笑顔を見せてくれるのかもしれない。想像するだけで、胸が高鳴り、身体がうずく。
コゲツはそう考え、長い舌で口の周りをペロリと舐めた。その目は、獲物を見つけた蛇の目だ。
見つけて、拷問して、情報を吐きださせればいい。証拠も消せば、完璧だ。
コゲツは改めて、感知した反応を窺う。
一つは途方もなく巨大だ。巨大なモンスターか何かだろう。では、襲われているのは民衆か?
集落か何かをモンスターが襲っているのかもしれない。
若しくは、何処かの国の兵器、ということも考えられる。つまり、隷従させた巨大モンスターだ。
だったら話は早い。
コゲツは猛スピードで、反応までダッシュした。彼女の高い身体能力は、人間体型になっても変わらない。
一瞬で景色が変わり、何かが見えた。
紅い。兎に角紅い。空も紅い。
火災だ。何かが燃えている。
そして、噴き上がる炎の上に鎮座するかのように、紅い物体があった。
それは、鎧だ。血を吸った様な色の鎧に、見事な装飾が施されている。そして大きい。兎に角巨体だ。全長は二〇メートル近くある。巨人が鎧を着込んでいるようにも見える。柱のように巨大な大剣と、壁かと見紛う程のこれまた巨大な盾を持っている。
鎧はスローで動きつつ、炎の中を歩いている。徐々に、地面に振動が伝わり、轟音が響いてきた。
「――――巨人の鎧人形?」
その醜悪さと煌びやかさを足して割ったような姿に、コゲツは呟いた。
コゲツを含むGA軍団員の記憶が如何なっているのか。それは、カーキが『CC』をプレイし始めた頃より始まっている。
軍団員には別世界に転移したという意識はある。
つまり、『CC』での記憶もあるのだ。自分達が知性体として存在していることを前提に。
つまり、カーキからすればプログラムに過ぎなかった彼女がつい最近知性体となったのだが、軍団員の記憶では、其れよりも前から、いや、最初から知性体として存在していた。そうして、矛盾がないようになっていたのだ。
無論、軍団員達にその自覚はない。
さて、コゲツは『CC』世界の時より、カーキに連れられ、様々な体験をしてきた。ミニゲームにも参加したし、戦闘もした。昇格も果たし、長い時を経て白蛇となった(ちなみに、誕生当初の彼女は下級モンスターの“蛇精”である)。
その時に、彼女が愛するカーキの命の元、戦った敵がいる。正確には敵プレイヤーなのだが、コゲツは知る由もない。
『CC』には決闘システムがあり、双方の合意がある場合の決闘……所謂PvP (Player versus Player=対人戦闘)が可能なのである(無論、街中などでは禁じられている)。此れはPK(Player killing=プレイヤー・キル)とは全くの別物だ。
それは兎も角、コゲツが戦ったプレイヤーの一人の職業が、人形師であった。
ドールマスター系統は、自分がクリエイトした人形を召喚し、戦わせるジョブである。
コゲツの相手をしたドール・マスターの人形のうち、一体があのゴリアテだった。
ゴリアテは、モンスターのクラスで言うとハイモンスターとなる。動きは鈍いが通常攻撃がパーティ全体にダメージを与える技であり、しかも硬い。兎に角硬い。よって、ユーザーの間では、「ぬり壁」という有難いのか有難くないのか分からない渾名を頂戴してしまった人形である。
その姿は、「中身がないのに動くデカイ鎧」と形容すべきだろう。
そんなモンスターが、特撮映画に出てくる大怪獣が如く、暴れ回っている。
「……………………うわ…………」
が、それを見て、コゲツは白けていた。
自分とは格の違う相手が、威張りくさったように暴れている。それは彼女のように、ゴリアテが三桁いようが一掃できるよりワンランク上の存在からすれば、興ざめする景色でしかない。「雑魚が偉そうに……」というヤツである。
彼女の前には、「陣地の残骸」というべきものがあった。恐らく、何処かの国の軍隊の野営地だったのだろう。テントや急造の倉庫が燃え、胴体と足が別れた鎧を着た兵士の遺体が転がり、国旗らしき旗が倒されている。
ゴリアテ一体に壊滅されるなんて、どれだけ手薄の野営地だったのだろうか。或いは、そんな場所だからこそ、ゴリアテが来たのだろうか。
コゲツは地響きを鳴らし、さらなる血を求めて彷徨うゴリアテを一瞥し、炎の中を歩いていた。
彼女の感知網には、この場の生体反応は、ゴリアテを含めて二つだけとなっていた。無論、コゲツ自身は含まれていない。
つまり、ゴリアテの操縦者がいる。
ガチャン。
何かが落ちたような音が聞こえ、コゲツは其処に目を向ける。
其処には、手足が異常に長い、球体間接付きの人形がいた。高さは、一七〇センチほどだろうか。
ダラリと両手を下げ、表情の無い目でコゲツを見ている。
ドール・マスターにとっては馴染みの深い兵隊人形だ。ドール・マスターが使役できる人形の中では最も下位な存在であるが、同時にクリエイトしやすく、コントロールもしやすい上に、複数同時使役も容易い。
「――――オ前、見ナイ姿ダナ」
人形の口がカタカタと動き、男とも女ともつかぬ声が響く。ドール・マスターは人形と視界を共有したり、人形を通じて喋ることも可能である。
「ソノ格好、グンジョウ皇国ノ者カ? 皇国ノ民族衣装ダナ。ヨモヤ旅行者デモアルマイ。内戦中ノ国ニナ」
「……」
コゲツは考える。
グンジョウ皇国。カーキから教えてもらった、別の大陸にあると思われる国。
如何やら、自身の着物とグンジョウ皇国とやらの民族衣装が似ているらしい。
コゲツは内心、激しい激情を堪えていた。
此の服はカーキが一からデザインし、創造してくれた服だ。其れを、何処ぞの国だか知らないが、民族衣装と一緒くたにされるとは。
そんなモノとは、格が違う、品位が違う、重みが違う。
コゲツは愛する主を侮辱された気分となった。そして、此の汚らわしいドール・マスターに死にたくなる程の拷問と、残りかすも残らないような無残な死を与えることを決意する。
しかし、コゲツは同時に喜んでもいた。
コイツは、グンジョウ皇国についてある程度の知識はあるようだ。
しかも、最後に聞こえた“内戦中”というキーワード。
ますます手に入れ、その脳味噌の中全部をぶちまけさせ、情報を吟味してみたい。
汚泥の中に眠る、主に捧げるに相応しい黄金を見つけたい。
そして、愛する飼い主に褒められたい。
そんな欲求が、鎌首をもたげる。
「そんなことは、どうでもいい」
コゲツは口を三日月の形にし、にっこりと微笑んだ。
そして、人形――――正確には、人形をコントロールしている存在を見据え、言い放った。
「兎に角お前、死ねよ」
漸く戦闘……いや、拷問シーンが書ける!
……最初ですし、あんましエグイのはやめておきますか。
御意見御感想宜しくお願いします。