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混沌より出ずる軍団  作者: 皐月二八
第一章 ア・ボルト・フロム・ザ・ブルー 異変
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第三話 パトロール 哨戒

 漸く物語が進み始める感じ。

 何と言う展開の遅さ。……でも、此処でしっかりしておかないと作品の前提そのものが壊れかねないので、やるしかない……。


ちなみに、マナのデザインは絵を描いている最中に浮かびました。

キャラ設定のために絵を描いていて、気付いたら、メンズのスーツ着たカッコイイ姉ちゃんを書いていた……。

「……はい」



 まず立ち上がったのは、此処にいるメンバーでは一際背が高い美女だ。もっとも、アルマの本体はより長身だけど。

 ルカ=ブレーン。

 GA第二総督、そして第二ヘキサゴン『夢幻常闇』を統轄する時空神。

 その風体は、まさに大和撫子を思わせる。鴉の濡れ羽色の腰まである髪に、黒い瞳。白い肌。背丈は一九六センチ。

 紅白の巫女服を着て、アルマの本体に次いで総督の中でも二番目に完璧なスタイルを誇る。総督の中でも、清廉な空気を纏い、まるで精巧な人形のように無機質で、汚れの無い雰囲気。張り付けられたかのような無表情。


 ルカは僕を見下ろすと、表情の見えない顔を向けてきた。まるで、命令を待つアンドロイドのようだ。

時間と空間を操り、神格級ゴッドモンスターの中でもアルマに次いで最強と称される高いステータスは、巫女というより、最早神そのものと言った方がしっくりくる。

 武器は持っておらず、装飾らしい装飾もない。シンプルな、飾りの無い美。そしてオーラ。



「ルカ。今はあらゆる事態への予想と対応が急務だ。クロノスの防備は完璧か?」


「難攻不落など生温い、攻不落と言うべきでしょう。如何なる存在も侵入は不可能です。出入り口の発見も不可能でしょう」



 淡々と、自慢するわけでもなく即答するルカ。



「主様が必要と思われるなら、私を聖なる世界の入口に配置してくださいませ。何物たりとも通さず、消して御覧に入れましょう」



 其処には、己への驕りも敵への侮蔑も見られない。本気で其れが可能だと分析しているようだ。流石は、GAにおける参謀の位置にあるだけの事はある。


 ルカは総督の中でも、特に護りが凄い。攻めに転じても勿論最強クラスだけど、彼女の真価は防御戦だ。それも、守勢防御・・・・ではなく、攻勢防御・・・・。護りっぱなしではなく、護りながらも、敵戦力を殲滅する。其れが、彼女の真価だ。


 そんな彼女は、ヘキサゴン全体の結界なども一手に引き受けている。クロノスの出入口たるエントランス・スクエア自体にも結界を展開させておくべきか。



「もっとだ。より完璧にせよ」


「主様の御意志のままに」



 具体的にどうしろ、とは一切言わずにそういうと、ルカは当然のように頭を下げた。

 やはり、ゲームと違い(・・・・・・)彼女達は自分で考え、行動できている。ゲームでのルカは、GAでもトップレヴェルの頭脳を持つ名参謀と言う設定だった。

 勿論、ゲームのプログラムであった(・・・・)彼女には、状況を判断して、僕に進言してくるとかはできない。だから、全く無駄な設定だ。しかし、其れが此処で生きているようだ。


 実際、ゲームにも「攻撃しろ」とか単調な命令コマンドは出せたし、NPCは其れに従って行動した。しかし、それにも限度がある。



「次に、ヒイロ」


「ん……」



 次に反応して立ち上がったのは、精々子供の背丈しかない、一五四センチの小柄な少女だった。体格も子供に相応しく、寧ろやせている。

 ヒイロ=ウィルコックス。

 GA第四総督、そして第四ヘキサゴン『紅蓮工場』を統轄している焔鉄神だ。

 浅黒い褐色肌に、眠たそうな顔。自身の身体よりも長く、床に垂れている緋色の髪に、左目は灰色、右目はオレンジ色のオッド・アイ。背丈に見合わない大きなマントをはおり、しかも此れまたサイズの合わないフードで顔の半分近くを隠している。マントもフードも、少し暗い紫色だ。

 そして、首からは金や宝石で作られた豪勢な首飾りを幾つもぶら下げている。加えて右頬には紅いペイントで炎のマークが描かれ、左頬には黒いペイントで鋼のマークが描かれている。


 そして、左手には如何にも「魔法使いの杖」と言った感じの杖が握られていた。

 長さは、ヒイロの背丈よりもある。地味な灰色で、先端の部分に血のように紅い宝玉が取り付けられている。

 宝玉の中では黒い光と炎のような揺らめきが絶えず衝突を繰り返し、仄かに輝いている。

 そして、その宝玉の上には、その宝玉に乗っかって空へ咆哮しているような、悪魔の彫刻が施されていた。


 彼女が生まれた直後、火焔蜥蜴サラマンダーだった時からの特徴である長い舌が、時折、チロチロと動いていた。



「資源庫の様子は如何か?」


「ん……主が集めた極上の鉱石や究極の薬草など、たんまりある。軍団全員に贅沢極まりない支援をしても、二〇年は持つ。……毎日大合戦でもすれば話は違ってくるけど。

生産設備・加工設備の方も問題ない。……ん、パーフェクト」



 ヒイロが管理しているのは、軍団の運営に必要な食糧以外の物資……武器を造るための鉱石とか、薬の材料とか、そういう物資と、其れを加工するための工場群プラントだ。


 炎と鉄を司るヒイロは、小柄な容姿に反して、純粋な力や制圧力は総督の中でも高い。彼女が得意としているのは、言ってみれば力押しの面制圧だ。


 僕は軍団の強化に励みつつ、こういった資源の蓄えも進めていた。理由は特にない。

強いて言えば、そっちの方が格好がつくから。そして、暇だったから。

 でもこの先、最高級の装備はおろか剣一本調達できなくなるかもしれないことを考えると、加工後の装備はもとより、加工前の物資や加工に必要なプラントを万全の態勢で整えておいて正解だったのかもしれない。


 地獄に仏、塞翁が馬だ。いや、此処が地獄かどうかは知らないけど、最悪を想定しておくのは悪いことじゃあないだろう。



「そうか……。では、暫く、マナの報告を待とうか」


「構いません。雑事は全て、部下に任せてあります」



 アルマの返答を聞き、全員が頷いた。

……如何やら、総督がいなくとも組織が回るようにはなっているようだ。其れについても、設定した通りで安心した。











「……此れは」



 剣襟ピークドラペルの黒い背広を着て、ボタンを掛けずに白いシャツが良く映える格好をしているマナは、黒いネクタイを風で揺らしながら呟いた。


 彼女は今、純白の翼を大きく広げている。片翼だけで五メートルはあるだろうか。神々しく、美しい翼だ。

 スラリとしたスラックスに包まれている脚は、まるで空中にある見えない地面に立っているかのように、ピンとしていた。

 メンズのスーツを着込んだ翼を持つ美女、という格好のマナだが、しかし、圧倒的な美しさと神々しさを放っていた。


 当然だ。彼女は『CC』内において敵に回せば即ち死を意味していた程のモンスター、神格級ゴッドモンスターなのだから。

 『CC』には、高位モンスターであればある程、ヒト型に近い姿をしているという法則がある。中には例外もあるが、彼女の場合はその法則がしっかりと当てはまるのだ。

 すなわち、外見、内面共に、彼女は確実に究極のモンスターに片足突っ込んでいる存在なのである。


 マナ自身、其れは理解していた。

 五総督はカーキが創造した最初のモンスター五匹が、そのままなっている。マナには、自分が偉大なるロードのしもべの中では古株であり、実力も高いことへの強い誇りと自負心があった。

 そのロードからの命令だ。しかも、部下を動かすのではなく、マナ自身が動くようにロードは命じた。


 マナはそのことに歓喜し咽び泣くのを堪え、ロードの足元に平伏したい気持ちを抑え、確実に任務を遂行することを決意し、キーを使って転移してきた。部下と共に。


 そして、困惑した。

 クロノスを出れば、其処はニューキョートという街のはず。しかし、彼女の元には、其れとは真逆の光景が広がっていたのだ。



「……人選をしくじったか。“測量魔法メイキング・マップ”を使える者を連れてくるべきだった……」



 目の前に広がる紺碧の海(・・・・)を憎々しげに睨みつけ、吐き捨てた。

 ロードの御命令を完璧に遂行できない自分に腹が立つ。自分はGA総督であり、カーキの僕だ。完璧以外の結果は求めていない。


 彼女達の目に飛び込んできたのは、海だった。水平線の彼方には、何も見えない。空は灰色の雲が多い、彼方には雲がまるで魚を捕食しているかのように、海に向かって灰色の竜巻が伸びているのが見えた。

 それも、数十本。生まれてすぐ消える者もあれば、何分も走り続けている竜巻もある。

そして時折、海に八つ当たりするかのように、黄色い閃光――――雷が降り注いでいた。


 風はそれほど強くなく、雨も降っていない。しかし、マナの苛立ちを増幅させるには、十分な気候だった。

 憎々しい天気だ。偉大にして至極の存在たるマイ・ロードを迎えるのには、相応しい天気とは言えない。もし人為的なものであれば、即座に原因を嬲り殺しにしてやるところだ。

 風を操り、気候をも掌握できるマナからすれば、この場を透き通るような晴天にすることなど容易いが、其れはロードの指示を待つべきだろう。


 マナは後ろを振り返る。

 其処には、山があった。

 緑で覆われた山。そう、だ。


 最初は海のど真ん中に出てきたのかとマナは考えたが、後ろを見て、すぐに違うと分かった。正確には、島から然程離れていない海上に出たのだ。より正確に言うと、海面から一メートルくらいの空中に。

 ロードが外出されるのなら、まずは此処に御殿か何かを建てるべきだろう。


 マナの部下は、基本的に全員飛行能力を有する。そのため、転移直後に海にドボンという、ロードの名を汚しかねない間抜けな展開にはならずに済んだ。

 もし一人でも濡れ鼠という有様になれば、その場で折檻していただろう。マナはそう考え、灰色の空へため息を吐いた。


 その島は、そこそこ大きいように感じられた。が、街はない。人工物はない。城もなければ、粗末な掘っ立て小屋もない。



「総督!」



 今回選抜した分隊の分隊長を務める飛翔槍騎士バード・ランサーが駆けより、マナの足元で、空中で跪くという器用な真似をやってのけた。

 マナと違い、彼は重厚な白銀の鎧を着込み、クローズド・ヘルムを被り、背中に自身の二倍はありそうな巨大な槍を背負っていた。

 その槍は、投擲することも突くことも魔法を発射するための媒体とすることもできる優れモノである。GAでは彼のようなランサーには数多く支給されている、つまり量産品であるが、其処らのランサーが持っている様な代物ではない。


 “電光石火槍ライトニング・ランス”という此の槍は、白雷石サンダー・ストーンという高位ハイ鉱石から加工して造られる高位級ハイ装備である。装備者は雷を駆使した特殊攻撃が可能となり、電気系統の魔法を魔力コスト低めで発動できるようになる。加えて、装備者のスピードを上げるという嬉しい付属効果もある。


 『CC』内において、電撃系の魔法・攻撃は、弱体化・無効化できるモンスターがさほど多くないことと、見かけの格好良さがあって、かなり人気だったりする。

 よって、此の槍も、初心者ランサーにとっては垂涎ものの得物なのだ。



「ある程度の島の地理は確認が取れました! 人工物及び知性体の存在は全く確認できておりません。存在しないと思われます」


「モンスターは?」


「大型の生物は幾つか確認できましたが、何れも牛や馬などです。モンスターの類は、ゴブリン一匹見当たりません」


「そう……御苦労、スプートニク分隊長」


「はっ!」



 しかし、此の島はなかなか良いかもしれない。

 マナはそう思い、口元を三日月形に吊り上げた。

 人はいない。モンスターもいない。しかし、自然はある。


 もっと緻密に調査をしなければ何とも言えないが、此処はGAにとって格好の拠点となるのではないか?

そんな思いが、マナの中に広がっていく。

 無論、決めるのはロードたるカーキだ。あの御方の御意志に逆らうつもりなど一切ない。あの御方が望めば、街だろうと滅ぼし、屍の山を築き上げて見せる。


 しかし、進言はしておくべきかもしれない。聡明なロードには進言するまでもないだろうが。


 島の面積はそこそこある。広すぎず、狭すぎない。

 見たところ、自然が豊富であり、水もおそらくあるだろう。もしかすれば、鉱石もあるかもしれない。



「それにしても、妙ですな。此処の風は」



 海上を我こそ王と言いたげに素知らぬ顔で進んでいく竜巻を見ながら、スプートニクと呼ばれた分隊長は呟いた。



「まるで、此の島への(・・・・・)侵入を(・・・)防いでいる(・・・・・)かのようです」



 そう、此の島は、周囲をぐるりと竜巻に囲まれているのだ。生まれては消えていく、竜巻の群れに。



――――まぁ、何にしても、此の島はロードの物となるかもしれない、ということだ。



 ならば、その邪魔ものは全て排除するまでだ。

 マナはそう思い、僅かに口元を吊り上げた。


 しかし、それは唐突に水をさされた。

 スプートニクが突如、耳の部分に――――ヘルムによって見えないが――――に手を当て、頷いた。部下からの通信をキャッチしたらしい。



「総督、付近の海上を哨戒していた飛翔兵士バード・ナイトが、一隻の大型船をキャッチしました。

 視認する限りはヒトの気はありませんが、軍艦のようです」



 その報告に、マナは眉を顰めた。



「軍艦……?」


「ええ。接近してみたところ、幾つもの砲が確認できたとのことです」


「接近?」


「勿論、“不可視迷彩魔法マジック・カモフラージュ”と“認知阻止魔法アンチ・センス”を発動した状態です」



 前者の不可視迷彩魔法マジック・カモフラージュは周囲の空気や色と同化し、敵に視認されるのを防ぐ魔法である。しかし、声や音は感知されてしまう。そのため、後者を併用して用いることが多い。

 認知阻止魔法アンチ・センスは存在感を極限まで落とし、自身が其処にいることを認めさせにくく(・・・・・・・)させる魔法である。此の場合は、声をあげても音を立てても存在感が希薄になっているため、問題はない。しかし、あくまで「認めさせにくく」させる魔法なので、完全ではない。しかし、不可視迷彩魔法マジック・カモフラージュと併用すれば実際に見えなくなるので、より見つかる確率が減るわけである。


 GAにおいて、潜入や哨戒・偵察を主任務とする兵士は、必ずこの二つの魔法、若しくはさらに高位な魔法である“絶対不可知魔法ヘヴン・ステルス”などを使える。

 さらに、このような“隠密系”の魔法の精度を高め、さらに消費魔力コストを抑える『シャイな指輪(オン・リング)』という中位級ミディアム装備が全員に支給されている。


 特にマナの率いる隊は、この手の哨戒や偵察を得意とする者が、意図的にかき集められている。というより、元々飛翔兵士(バード・ナイト)系モンスターは、それに関するスキルが豊富だ。さらに、ほぼ全員が千里眼スカイ・アイという特殊スキルを持ち、遠方を探知できる。



「其れで迎撃は?」


「全く受けませんでした」


「罠の可能性もあるわね」


「然り」



 一瞬だけ考え込み、マナはふぅ、と息を吐いて分隊長を見た。



「……マイ・ロードに御報告しましょう。時間は近いわ」


「放置するのですか?」


「放置しても問題ないわよ。すでに捉えたから(・・・・・・・・)



 できの悪い生徒に言い聞かせるように言うと、マナは翼を広げ、転移陣ゲートを開いた。






 世界史を疎かにしていたせいか、中世の騎士と言ってもあまり浮かびません。

 鎧の事とか、もっと勉強しないとなぁ、描写ができない……。


 槍も、如何頑張ってもモン○ンのランスとガンランスが浮かんでしまう……。


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