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混沌より出ずる軍団  作者: 皐月二八
第二章 チェスマン・プット・ワールド 浸透
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第二一話 リオーガナイズ・データ 整理

 就活やら手術やらで遅れ、申し訳ありません。フローラ達帰還後のお話です。

 GAメンバーとカーキとの絡みを、もっともっと書いていきたいと思います。

「総員、よくやってくれた。ゆっくりと疲れを癒してほしい。有難う」


「ひ、あっ! はぁ! 光栄です、総帥閣下!」



 フローラを始めとする帰還メンバーにそう言うと、彼女たちは目を輝かせて敬礼を返してくれた。

 先頭にいるフローラはヘンに飛び上がった後、ぐいっとこっちに顔を近付け、花が咲くような笑顔で大仰に一礼した。

 そして、そのまま分厚い書類の束を差し出し、跪く。



「ヴィオラ、頼む」


「直ちに」



 フローラから受け取った報告書をヴィオラに渡す。



「至急、ルカの元に送ります」


「頼む。後、分析はヘールボップのところでも頼むよ」


「承りました。メイド隊に送っておきます」



 そう言うと、ヴィオラは近衛隊の制服を着た部下に書類を手渡した。



「あ、えーと……御主人様?」


「うん、どうした?」



 周囲の部下が各々の部署に戻った後、唯一人残ったフローラが跪いた体勢のまま、小首を傾げながらこっちを見てくる。



「他方面に散った同僚の様子はどうなのですか? 可能であれば、御主人様から拝聴したいのですが……ええと、色々と考えたいですので……三思九思さんしきゅうし、三思九思……」


「あー、うん、ちょうどいいな。五総督の中でフローラの意見だけ聞いていなかったんだ」



 フローラに立つようにジェスチャをしてヴィオラに合図を送ると、彼女は小さく首肯し、巨大な机の上にこれまた巨大な地図を置いた。地道に作り上げたGAオリジナルの世界地図(?)だ。まだまだ空白が多いけど。

 “測量魔法メイキング・マップ”が使える者を総動員して、何とかここまで完成した。



「どこにどんな国があるか、大抵の事はわかってきた。唯、ここから離れている方の……あの軍艦の国がある大陸の調査は、まだまだ進んでいない」


「どうしてですか? 激戦にでもなっているわけではないでしょうし……」



 憮然とした表情で、フローラは腕を組んで唇を噛んだ。表情からイラつきが見て取れる。

 少し気を悪くさせてしまったみたいだ。



調査隊かれらはよくやってくれているさ。だが如何せん大洋を隔てているせいで、報告書が送られてくるのもタイムラグが生じてしまう。リアルタイムでの交信は、察知される可能性があるから長時間利用は自粛しているようだ。

 まぁ、確かに通信に関することは向こうに一任しているから、此方としては文句はないさ。これだけ離れていると、どうしても通信に魔力がかかるからね。コゲツに渡したようなアイテムも数が多くない」



 そこまで言った後、僕は小さく息を吐いた。



「……それに、今はフローラ達がいた方の大陸の調査を優先しているからね」



 その理由は単純で、カオ・クロムから近い方の大陸に優先順位を振り分けているだけだ。勿論、遠いほうの大陸に送っている部下たちを軽んじているわけでもないし、あまり急ぐ必要のない作戦だ。“急がば回れ”は、僕が正しいと結論している人生論の一つだった。ましてや今回は僕だけでなく、GAメンバーの命までも懸っているのだ。正直、なりたいような立場ではないけれど、なったものは仕方がない。


 近いということは、此方から直ぐに行けるということ、そして同時に向こうも直ぐに来れるということを意味している。

 そこで、僕は三日月の大陸の調査を最優先にすることにした。遠い方の“横オーストラリア(っぽい)大陸”の調査は片手間とまではいはないけど、下火だ。

 向こうについては、少なくとも国の存在は『グレゴリオⅢ世号』の航海日誌から判明しているし。



「要塞化計画はまだ八割方、と言ったところだ。まぁ、完成していてもしてなくても、訪問者が来ないことにこしたことはない」


「単に漂流者なら兎も角、国家絡みなら消したら面倒ですよね。何なら国ごと消しますか?」



 ポケットから取り出した大量の種をジャラジャラと手の中で鳴らしながら、冗談を言うような口調でそういうフローラ。でも、彼女の眼は割と本気だった。

 思わず苦笑し、僕は両手を顔の前に持っていき「抑えて抑えて」のジェスチャをする。

 こういうガス抜きをしないと、不満もたまるだろうけど仕方がない。僕自身、不満の捌け口のためだけに国を滅ぼすなんて御免だ。


 僕は保守派じゃあないけれど、世界地図が書きかえられるとロクなことにならないことは良く分かる。これでも文系の人間で、世界史には詳しいつもりだ。



「極端な手段はあまりとりたくないな。極端な手段の後始末ってのは、これまた極端になるものさ。言い換えれば、労力がかかる。コストもリスクも、抑え込めればそれに越したことはない」


「卓見です」



 僕の言葉に、フローラは首肯して微笑んだ。

 全てを肯定してくれそうな笑みに、僕も思わず笑みを零してしまう。

 如何も彼女たちの過激発言は、本気なのか、はたまた僕が否定するとわかって敢えて言っているのか、イマイチよく分からない。まぁ、そんなことでいちいち目くじらを立てるのも詮のないことだ。



「……これでカーキ様の意に反して愚図グズ共がノロノロとやっているのなら、私がとっくに激励・・しに乗り込んでいる」



 フローラをジト目で睨みつつ、ヴィオラは顔の左半分を隠している黒い包帯を指先で叩いている。それがちょうど目の部分で、なんだか自分の目をくり抜こうと指を立てているように見えてすごく恐ろしげな光景になっていた。彼女の不機嫌そうな表情が、それを助長させている。右しか見えない深緑色の瞳には、グルグルと黒いオーラが渦巻いていた。

 何故か、今日のヴィオラは不機嫌らしい。



「――――うん? ヴィオラ?」


「はい」



 僕が呼びかけると、彼女は何時も通り、どこか陶酔したような表情で深緑色の瞳を瞬かせている。尻尾はまるで子犬のようにぶんぶん振られていた。



「……あーっと、兎に角、だ!」



 違和感から逃げるように、僕は長身美女の悪魔から目をそらし、フローラに向き直った。



「一先ず、大陸横断森林の全容を細かく分析するまでは、次のステップには進まない。フローラも、ゆっくり休んでくれ」



 そう言うと、フローラはニコニコの笑顔から一変し、子供のように――――外見は子供だけど――――唇を尖らせた。



「御主人様が御心労に苦しんでおられるというのに、休むなどできるはずがないですよ。食料・資源生産は順調ですし――――私には優秀な(・・・)! 部下がいますからね――――島の要塞化も程良い感じです。

 三日月大陸の方も、調べるべき自然は幾つかありますし……御主人様の御命令ならば、すぐにでも行きますが? 単身でも良いですよ。転戦千里、転戦千里……」



 どういう意図か、「優秀な」の部分を協調させたフローラの言葉に、僕は顎に指を当てて考えて、直ぐに首を振った。



「……ふうむ。悪いけど、そうもいかないんだ。調査隊への補給は事前に定めたスケジュールに基づいている。流動的な変化や変更に対処できるようになっているけど、急に変更することが良いとは思わない。

 済まないが、ここは石橋を叩かせてもらうよ」



 僕の言葉に、フローラは顔を青ざめさせ、深く頭を下げた。



「も、申し訳ありません……!! 自分の都合だけで、出過ぎた真似をしました。己の軽率さを恥じ入るのみです」


「気にすることはないさ」



 帽子をとったフローラの頭をゆっくりと撫でて、僕は微笑んだ。

 彼女が僕のために、GAのためにやってくれていることは良く分かる。熱意を空回りさせて申し訳ないけど、部下の要望全部にOKサインを出したら、事前に計画を立てる意味がなくなる。

 それはそれで、ルカたちに申し訳が立たないし、僕自身、性急過ぎるのも、外界を嘗め過ぎるのも好ましく思っていない。



「――――――か、感謝の極みです……御主人様」



 俯いたままプルプルと身を震わし、フローラはカツリと踵を合わせた。でも、如何せん生まれたての小鹿のように震えているものだから、何て言うか、様になっていない。

 ピカピカの新米幹部のような態度に、僕は首を傾げた。



「? 大丈夫かい、フローラ? やはり休むべきだよ、ああ」


「…………そうですね。はい、休ませて頂きます。では、御主人様……」



 震える声でそう言うと、フローラはくるりと背を向け、ふらふらと歩いていった。



「……大丈夫かな、フローラ」


「……脳髄焼き千切れば、元に戻るのではないかと存じます、ええ」



 小さい呟きに反応したのか、ヴィオラのやたらと低い声が、僕の鼓膜を震わせた。






 フローラと別れた後、僕はヴィオラを引き連れたまま自室へと引っ込み、ルカも呼んで話し合いを始めた。



「これで、五総督全員がクロノスに揃ったわけだけど……どうだろう、今度はヒイロを送ろうと思う」


「例の火山ですか。無駄に大きいという」


「無駄かどうかは分からないけど、確かに大きいね。基準が良く分からないけど」



 実際にそこまで詳しく測量したわけではないし、僕も報告で聞いただけだからよくわからないけど、まぁ、大きいらしい。



「あの焔鉄神ならば、主様の意を汲み取って上手くやるでしょう。確か北軍の調査はあまり行われていないはずです……これを機に、進めてみるのもいいかもしれません」


「あぁ」



 下手すると、南軍に潜り込んでいるコゲツと衝突する可能性もある。そう考えて、僕は北軍領土にはあまり調査隊を送っていないし、戦場付近での活動は控えさせている。同じ理由で、南軍領土にもあまり多くは派遣していない。


 何しろコゲツは僕個人の配下……PM(ペット・モンスター)であることもあって、GAのメンバーと積極的に関わっているとは言えない。おまけにGAの面子も、コゲツの事は多分よく知らないだろう。

 何せ彼女は、殆ど何時も運動として泳いでいる湖から出ないし、僕と行動する時も二人っきりが多い。 気が付けばメンバーが同士討ちしていたなんて洒落にならない。


 おまけにコゲツは、並みのGAメンバーなら瞬殺できる戦闘能力を持っている。天上級ヘヴンモンスターはGAでは一九体しかいないし、それより上の神格級ゴッドモンスターに至っては五総督だけだ。

 言い換えれば、コゲツに匹敵するかそれ以上の戦闘能力を持つメンバーは、GAでもたったそれだけだ。勿論、僕を除外して。



「では、命令を伝えましょうか?」



 言外に「私が行きますか」と言いながら、ヴィオラが此方を見つめてくる。



「……いや、それには及ばないよ。確かめたいこともあるし、もう一度彼女の元に行こう。

 あぁ、ヴィオラ、コゲツに通信を送る準備をしてくれ」


「わかりました、直ちに」



 そう言って、一礼したヴィオラは部屋を後にした。



「……」


「……」



 残った僕とルカは、暫く見つめ合う。



「……アルマ単身の(・・・・・・)調査の計画は、進んでいるか?」


「順調です。あの子(・・・)は二〇分で終わらせるでしょう。どんな想定外が起ころうとも、三〇分とかからないと思われます」



 打てば響くように、淡々と即答したルカの無表情を覗き込み、僕はふぅ、と息を吐いた。



「……正直、こんなやり方は部下達を信じていないようで嫌気がさすが……適材適所、やむを得ない、か」


「主様が御気になさる必要はないでしょう。私たちと言う駒をどう使おうが、割ろうが、踏みにじろうが、磨こうが、それは主様の御自由です」



 こっちの気持ちが分かっているのか、感情の感じられない機械的な声で、もう一度即答したルカに、僕は思わず唸った。



「……言っておくけどルカ、これは君に作戦を立案するように命じた僕の責任であって、立案した君の責任ではないぞ」


「存じております。全ては主様の意のままに」



 三度即答したルカに、僕は敵わないと言わんばかりに首を振った。多分、僕が考えていることくらいはお見通しなのだろうな。

 これも彼女なりの励ましなのだろう。そう思って、僕は深く座り込み、ココアを啜った。

 そんな僕をジッと見つめながら、時空神は直立不動の姿勢のまま、神々しいオーラを放っていた。


 それがまるで、僕のすること全てを肯定する慈悲深き女神のように見えるのは、僕の傲慢だろうか。

 いや、そうとでも思わなければ、どうしようもないのかもしれない。



「……一つ、宜しいでしょうか、主様」


「うん?」


「調査が終了した暁には……この世界は、どうなさいますか?」



 答えづらいことを――――そう思いながら、僕はマグカップを置いて長身のルカの顔を見るため、視線を少し上に向けた。



「今のところ、考えてはいない」



 正直に答え、さらに息を吐く。



「GAに害を与える、脅威になり得る存在の有無について調査をしているわけだが、現状、それらしき存在の確認は取れていない。

 脅威になり得ると此方に敵対してくるというのはまた別問題だし、此方から関わらなければ争うことになりえないのならば、態々首を突っ込む必要性はないな」



 元の世界に帰還できる方法の模索については、僕自身皆目見当つかないし、ややこしいので省いておく。



「脅威になり得る存在がないのならば、それはそれで万々歳だ。だからと言って、大手を振ってアクションを起こす必要性も特に感じられないしな……。

 資源は十分、食料もある。暇になるくらいしか、弊害はないな」



 最後は若干おどけたように言って、僕は背もたれに深く寄りかかりながら肩をすくめた。



「敵性勢力が攻めてきた場合の計画と、友好関係を構築しようと他勢力が接触してきた場合の計画については、念のためすでに立ててあります」


「うん。調査結果に照らし合わせて、それが実情に合ったものか検討してくれ。あぁ、調査結果が完全に分析し終わってからでいい」


「わかりました」



 そんな僕の態度に、ルカは少し目を細め、いつもと同じように淡々と答えた。



「なんにせよ、敵性勢力なんて出てこないでほしいものさ」


「……はい」



 僕のおどけ具合に釣られたのか、ルカがうっすらと笑った気がした。











「……やはり、主様は……敵の出現を憂いでいますね」



 愛する主人の部屋から出て廊下を歩きながら、巫女服に身を包んだ時空神は独り言を呟いた。



「それが主様の御望みなら、私たちは全力でそれを遂行するのみです」



 未知の世界。これほどカーキの心を掻き乱し、心を捉えるものはない。その事実が煩わしく、腹立たしい。


 ルカの心はカーキに会えて歓喜の雄叫びを上げていたが、それをかき消してしまう程の憎悪に覆われていた。



「主様の御心を煩わせる全てに、死を」



 呪詛のように呟き、ルカは歩く速度を速める。それは、彼女の苛立ちを体現しているようだった。

 心が落ち着いていない。

 そう感じたルカは、先程までのカーキの仕種や表情を反芻し、鉄仮面のような無表情の頬が朱に染まりそうになる程の愛で心を満たそうとした。

 が、カーキの姿を思い浮かべる程、そのカーキを手古摺らせるこの世界への憎悪の炎が膨れ上がっていく。


 かといって、愛する主様について考える事を放棄するという選択肢など、ルカの中にあるはずもなかった。


 すれ違うもの全てが青ざめた表情で敬礼していることにも気付かずに、ルカは自室へと足を進めていった。






 次話でノフレテーテを登場させる予定です。そしてヒイロたちが活躍する話になる……と思います。


 ちなみにフローラは自室に引っ込んだ後、三時間悶えまくっていました。


 次話はもっと更新早くしたいと思います。


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