黒猫姉妹の食レポ in 黒猫のカフェテラス
「おや、シャアリィさん?」
「え・・・アイシャさんが黒く・・・分裂して・・・あ、新しい、もにょもにょ」
何を勘違いしているのか、ウェイトレスが混乱している。
幸いにしてオープンテラス席は、人数分以上に空席があった。
「アイシャは今、髪を切りにいってるよ」
「このコ達は、黒猫姉妹のエレナとナッチェ」
「と、もう一人、聖職者のおじさんも、私の連れということで!」
四人掛けのテーブルに、椅子を一つ追加してもらう。
「ナッチェ、エレナ、好きなものを頼んでいいよ」
「ちゃんと稼げるようになったら、常連になるといい」
「この店は、お茶もお菓子もお酒もある、お嬢様の憩いのお店なのさ」
姉妹とフランコが揃って『おおーう』という感嘆の声をあげる。
「今日はまだ挨拶回りが残ってるから・・・私はミルクココア」
「それと、取り分けて食べるから、リンゴのパイをホールで」
「フランコは、お酒飲めば?こっちは寒くて身体冷えるでしょう?」
「エレナも、ナッチェも、好きな飲み物を頼んでね」
金箔の枠がついたメニュー板を見て、二人の瞳がキラキラと輝く。
フランコはメニューを見ることもなく、テキーラを注文した。
「わ、わた、わたたた、私もミルクココアくださいっ」
自分の分を決めたナッチェが姉の注文を急かす。
「私はローズのフレーバーティを頂きます」
・・・
運ばれてきた飲み物にナッチェが手を伸ばそうとして、エレナがちょっと待ってと器の熱さを確かめる。
「ほら、持ち手を掴まないと熱いから気を付けてね」
目の前に置かれたココアの匂いが鼻先を掠めて、ナッチェがゴクリと喉を鳴らす。
恐る恐る一口・・・思わず、舌を引っ込めて、水を口に含む。
涙目になりながら、今度は慎重に表面をふーっふーっと、息を送って冷ましてから、口に含む。
ココアと姉を何度も見比べて、無言で姉に飲んでみて、と、ミルクココアのカップを差し出す。
「うん、とても上品な甘さでおいしいね」
「ナッチェは、もう少し甘い方がいいでしょう?」
と、言ってシュガーポットから、スプーンひとつ分だけの砂糖をココアに入れて掻き混ぜる。
ちょうど運ばれてきたアップル・パイをシャアリィが小皿で各自に取り分ける。
無言で、姉に食べてもいい?と視線で尋ねる。
「シャアリィさんが、一口食べてからだよ」
じゃあ、と、シャアリィがひょいっと器用にフォークで切り分けたパイを口に入れる。
それを見たナッチェが、最大の集中をアップル・パイに注ぎながら、一口大に切り分けたソレを口に入れた。
もぐもぐとゆっくりと口が動き、視線が左右にやたらと揺れる。
「お姉ちゃん、世界って広くて、理不尽で、それでいて、幸せに満ちているのだと、ナッチェは理解しました」
ナッチェ・シュバルツ十三才、小さな身体で噛み締めたレリットランス最初の衝撃だった。




