暗殺者よりも質の悪い手品師
日の暮れた後の静かな旧市街地を下品な冗談を交えながら歩く集団がいる。
ならず者を絵に書いたような見た目。
不思議なことに衛兵は来ない。
白い土壁の家に住む、旧市街地の人々は、あの魔人災害を生き延びた者の末裔達だ。
宵闇の世界には人間の知らない、理解できない、抗えない存在がいることを信じている。
だから、この地で教会が立つことを歓迎し、熱心に、それを支えてきたのだ。
窓越しに不埒者を見つけても、衛兵に通報することはない。
日頃の行いが試される。
ずっと昔からそう決まっているのだ。
野生の草食動物の群れがそうであるように、どんな猛獣でも腹が満たされれば帰ってゆく。
自分が食われる番ならば、そういうものだと諦めるしかない。
それは弱い者達が弱い者達なりに決めたルールなのだ。
下手に逆らって被害を増やしたり、ずっと怨恨を持たれるよりマシだと。
だが、今日の不埒者達は些か様子が違うようだ。
静かに息を潜め獲物を物色し、こそこそ帰る類の者達ではない。
大仰な武器を肩に乗せ下品に笑い、どうやら目指しているのは神の家たる教会のようだ。
フランコ神父に知らせねば・・・しかし、掟を破ることになる。
結局、途方に暮れながら、ならず者の列を見送ることしか出来なかった。
・・・
「神父さんよぉ、なんで俺達がこんな数でぞろぞろ来たか、わかってんのか?」
「お前さん、匿ってるだろ?」
「あの倉庫からブツを盗み出したヤツも、タレコんだヤツも」
エレナを拐かした主犯と思われる男が、神父に詰め寄る。
「さすがに端金じゃチャラに出来ねぇってよ」
「みんなで相談に来たってわけ、大教会の大旦那にせびってこいよ」
「俺達が今から派手に教会ぶっ壊してやっから、教会の修理費用が掛かりますーってよ」
神父は卑屈な笑みを浮かべて、ならず者に落ち着くように、と。
ここは神の家、不信心な者は酷い罰が下りますよ、と、聖職者らしい説得をする。
「なんだ・・・なんの音だ・・・」
それは、シャアリィがシャキシャキと鋏を鳴らす音だった。
「んー、これは悪いヤツがいっぱいいますね」
「まず、そこのヒゲデブ、お前からにする」
鋏を弄びながら、シャアリィは『消えろ』と、サンド・ブラストの短縮詠唱を呟いた。
凄まじい勢いの砂塵が対象物を包んだ瞬間、短い悲鳴だけが聞こえた。
たった十秒・・・目の前から人間が消えた。
正確には、人間がミンチよりも小さな肉片にされて、その残骸だけが残った。
「な、に、をした・・・?」
シャアリィは片目を瞑り、人差指を口に当て、
「教えてあげない」
と、可愛らしく答えて、じゃあ、次はあなたにしよう、と、違う男を指差す。
恐怖を感じる間も与えず、またも、砂塵が男を包み・・・その跡にはピンク色の小さなナニカのカスが残る。




