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神様がいないから

『商業埠頭の南倉庫に死体が幾つも転がっている』


そう書かれた紙が、頭上から振ってきた。

突然、衛兵監督所に起きた怪現象。


気配を消したアイシャが、メモ書きをバラ撒いただけなのだが効果は抜群だ。

武装した衛兵の男の手にもそのメモ書きは渡り、すぐに見回りに向かうようだ。


(後は、運次第・・・一人でも多く助かるといいな)


・・・


「さて」

「今後のことについて、だけど」


と、切り出したのはシャアリィだった。


「ここまで関わってしまった以上、ある程度の責任を持ちたい」

「そうでしょ、アイシャ?」


結局、シャアリィには全部お見通しなんだと、アイシャは頭を下げる。

エレナ姉妹がどうしたいのか、そこから始めようとシャアリィは言った。


「この街で、今まで通りの暮らしを続ける」

「私達の知り合いのいる街で、幸せを見つける」

「姉妹で、この街を出て何処かの街に行く」


指折り数えながら、シャアリィはこんなものか、と、エレナ姉妹を見つめた。

顔立ちは悪くないし、スタイルに限ってはシャアリィやアイシャよりもボリュームがある。

家事全般が出来て、子供の扱いにも慣れている・・・。


「これ以上・・・」


と、いう言葉をエレナが口にした所で、シャアリィが一喝する。


「これ以上迷惑を掛けられない?ここまででいいです?自分たちでナントカします?」

「それって、あなたたちが勝手に助けたんだから、もう、放って置いて?」

「そういう意味なわけ?」


アイシャがシャアリィを制止しようとするが、今のシャアリィはキレているわけじゃない。


「返せない借りを作りたくないのでしょうけれど、それは無理ね」

「アイシャがナッチェを見つけた時に、もう、ここまでの予定は決まっちゃってたんだから」

「私達にはあなた達を幸せにする権利があって、あなた達は幸せになる義務がある」

「横暴で、優しさの押し付けなんて、これっきりよ」


シャアリィは、姉妹の首から掛かる粗末で小さな十字架に触れる。


「神様の仕事を横取りしたことは、悪いと思ってるけれど」

「だって、間に合いそうもなかったんだから、神様だって悪いじゃん」


アイシャが不器用な物言いしか出来ないシャアリィに代わって説明する。


「安心して暮らせるような所を知ってるから、そこに二人で行くといいよ」

「って、シャアリィは言いたいんだ」

「そうすると私が喜ぶって知ってるから」


黒猫姉妹は意地を張るのを諦めて、


「ご迷惑を掛けますが、何卒、宜しくお願いします」


と、シャアリィ、アイシャに頭を下げた。


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