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ナッチェの探し人

――― 数十分前の出来事。


ナッチェは旧市街の住人であり、探しているのは姉らしい。

色違いではあるものの、繋がりがあるかもと、目立つ耳を見つけたナッチェはアイシャに声を掛けた。


「姉を探してるのですが、知りませんか?」


こんな場所、少女が一人で来るような所ではない。


「いや・・・私の知り合いに黒猫さんはいないよ」

「・・・ちょっと待って」

「一人で来たの?」


アイシャは、より深刻な自体を想定して少女を引き留めた。

獣人種は珍しい。

十万人規模であったレリットランスで一年生活をしていて数回しか目にしていない。

互いに見ず知らずの獣人同士が言葉を交わすなどというのは、奇跡的な確率だ。

大切な人を待たせて、大切な仕事をしている、だが、それを差し引いてもアイシャにとって放っておける相手ではなかったのだ。


「ほんの少しなら手伝ってあげられるかも」

「外にひとを待たせてるんだ」

「私の名前は、アイシャ」


少女は涙を溜めた目で答える。


「ナッチェ・シュバルツです」

「姉の名はエレナ、です」


ナッチェは何かを思い出したようだが、それを言い淀み、


「私は何もお返し出来ません」

「だから、大丈夫です」


アイシャは、ナッチェの頭をくしゃくしゃっと撫でて微笑む。


「私達は遠い街から来たばかりで、ここの街のこと、よくわからないんだ」

「私達は、ナッチェのお姉さん探しを手伝う」

「ナッチェは、この街のことを私達に教えてくれる」

「これなら両方に得がある」


返せるものがある、だから手伝ってもらってもいい。

ナッチェは、涙を払い落としてアイシャの提案を受けた。


「ナッチェ、ごめん」

「とりあえず一度、外に出てもいいかな?」

「私、外に大事な人を待たせたまんまなんだ」


アイシャは、この空間にいる者を残らず確認した。

だが、ここには自分たち以外の獣人の姿はなかった。


「まずは外で待っているシャアリィと合流して」

「それから、落ち着ける場所で話をしよう」


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