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黒猫を拾う

金属製の扉が実に厳しく。

武装した男たちが眼の前を脇目も振らず駆け抜けてゆく。

奥のほうから喧騒、罵声、怒号、それに混じって小さな嗚咽。


衛兵監督所のロビーは人で溢れていた。

この光景を見れば一目で分かる・・・この街の治安は底が抜けてしまっているのだ、と。

天井からぶら下がる案内板の数々。

物騒な文言の見本市。


脅迫と恐喝、暴力乱闘、殺人傷害、行方不明、指名手配、詐欺窃盗、各種通報。


圧倒的に足りない人手、覇気を失った職員、時折叫ばれる窓口と受付の番号。

そして壁一面では足りず所狭しと貼られた賞金首の手配書。


アイシャがシャアリィを建物の外に連れ出す。


「私が確認してくる」

「シャアリィは、あそこで待ってて」


アイシャの指差した先には、ホットドッグスタンドがあった。


「少し時間が掛かるかも知れないが、なるべく早く戻るよ」


・・・


どれくらい時間が過ぎただろうか。

日除けのパラソルの影の向きが変わり、少しばかり日差しが柔らかくなった頃、アイシャが戻ってきた。


「その娘だれ?」

「迷子?」


シャアリィより僅かに低い身長、少し長めの癖のついた黒髪、そしてアイシャと同じような耳。


「拾ってきた」


なんの説明にもなっていないアイシャの言葉にシャアリィは無言で口を開閉した。

此処が衛兵監督所前でなければ、捨ててらっしゃいと言いたい所だろう。


「人探しなんだって、ね?」


アイシャの背中に隠れていた黒猫の獣人が、顔を見せる。

シャアリィは故意に獣人から眼を反らして、アイシャに尋ねる。


「で、確認は取れたの?」


アイシャが首を横に振り、状況を手短にシャアリィに伝えた。


「確かに海賊の手配書は幾つかあったけれど、かなり前のものだけ」

「セブールからは何一つ被害届も出ていない」

「臨時の許可証については、そういう遊びかい、なんて、鼻で笑われた」


シャアリィはアイシャに耳打ちする。


「その猫ちゃん、どうする気?」


アイシャは、黒猫娘の頭を撫でながら言う。


「私達に必要な情報を持っていると思ったから、交換条件付きで雇った」


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