落日の風景
居心地の良さそうなカフェテラスを見つけた。
『ドルフィン・テイル』
と、いう名のその店は、黒猫のテラスと似通った上品さがある。
客層も殆どが女性ないし、カップルなのでシャアリィ達が注目を浴びることもない。
メニューがいちいちポエミーなとこだけは、しっくりこないが。
「えっと、ふわふわパンケーキあまあまセット」
「ドリンクは、夏の青い思い出を下さい」
など、と、真顔で注文出来るのはシャアリィだけ。
アイシャはコレと指差して注文する。
「これ・・・メニュー考えるヒトは何を期待してるんだろう」
「若い女が皆、きゃいきゃいしてる、と、勘違いしてるんじゃ?」
飲み物が運ばれてきて、シャアリィがアイシャに勧める。
「これが『夏の青い思い出』だよぉ?」
ブルーキュラソー(オレンジのリキュールを青く着色したもの)に、トニックウォーター。
グレープフルーツの粗絞り、レモン果汁、そこに甘味付けのシロップが入っているようだ。
砕いた氷が程良く溶けて、火照った身体からも熱が引く。
アイシャにも一口勧め、中身はまともだと情報共有。
「しかし、さすがは観光地ね」
「こういう嗜好品の物価がレリットランスの倍近い」
硬めの木材の椅子がむき出しなのは、多分、身体に着いた砂も払うことなくビーチから直接来る客が多いせいだろう。
黒猫のテラスの柔らかなソファが懐かしい。
「『落日、夜の始まり』・・・」
ザクロのリキュールと葡萄の果汁、強めのジン。
それがキレイな層に分かれていて眼を楽しませる。
最後に登場した『ふわふわ(略)』は、確かに美味しいけれど甘味にうるさい二人には及第点。
アイシャの眼の前にもドリンクが運ばれてきた。
ついさっきまで深い青が美しかった海も、夕日に染まり、その上からは夜の帳。
二人ともテーブルに肘をついて考える。
あの街で経験した、楽しいこと、苦いこと。
そして、大幅な方針転換と目標の達成について。
この街を選んだ最大の目的はシャアリィの魔人としての能力を引き出すため。
それには根源転換術式を深く知り、沢山のアンデッドから触媒を得る必要がある。
不安要素と言えば、アンデッドは総じて斬撃に耐性があること。
この街の迷宮に潜るならば、アイシャは主武装を三節棍に変更したほうがいい。
攻守に優れる反面、武道を心得ないシャアリィとの連携には一苦労しそうだ。




