西へ:シャアリィのメモ書き
無様だ。
レリットランスを踏破すると意気込んで最奥突入の危険まで冒したのに。
敵に情けを掛けられて敗走し、その上、しっぽを巻いて逃げるしかない。
フローズン・ドラゴンを倒すと息巻きながら、強くなったと自惚れながら。
自分たちでは随分コマを進めた気になっていただけなんて。
「私達、西にあるグリーン・ノウズの迷宮まで行くことにしたんだ」
世話になった店や関係者に挨拶回りをする。
週末には宿を引き払い、まる一年のレリットランス滞在に別れを告げる。
レリットランスの復興に必要な土石属性の魔石は、ギルドに全て売却した。
たった一つ、千本足の魔石だけを除いて。
商業ギルドへの預金証書も大保管庫から見つかったために持ち出せた。
アーシアン連合国内ならば、ギルドは連絡網を通して情報のやり取りも可能だ。
復興で魔石のオークションはさらに延期となったので、冒険者ギルドと契約を交わした。
オークション開催後に、売却魔石の二人の取り分を商業ギルドに振り込む契約だ。
エドワードの治癒院が夏には完成するらしい。
現状は復興が優先され、職人も、資材もままならないからなんだとか。
オルチェとアレックスは、相変わらず忙しくしてる。
ザックの墓にエドワードの引退式よりも少し大きめの花束を添えた。
黒猫のテラスのオープンテラス席からは、『reserved』のプレートが外された。
最後に、あの武人の魔物に会って確かめたかったけれど、アイシャは絶対、反対するだろう。
私の身体は思っていたよりも、全然、人間のまま。
良い意味でも、悪い意味でもね。
心臓がないのとちょっと他のヒトより感覚が鋭いだけで、不死の魔人なんて恐れ多い。
こればっかりはわからない。
以前、アイシャが言い掛けていた、聖職者か死霊術師こそが魔人に相応しい職種かもだけど。
グリーン・ノウズについて暑くなり始めたら、二人揃って髪を切る約束をしている。
願わくば、新天地でも良い人たちと会えますように。




