希望のない現実
シャアリィの口から意外な言葉が出た。
「もし、ギルドマスターが言うように作り出された魔物・・・」
「つまり、人間だった記憶があるならば、あの魔物の本当の願いは何だろう」
「あの姿になることは合意の上だったのかな?」
アイシャが答える。
「戦いを避けられるかという意思を確認したい」
「そういうこと?」
シャアリィが前のめりになって首肯する。
しかし、アイシャも、ロートシルトも、それをきっぱり否定する。
「あなたはその目で見たでしょう、シャアリィ?」
「アレが戦い以外の何のために価値がある存在に見えた?」
「あの魔物は『少女だから見逃してやる』という意思表示をしただけ」
「私が、あそこで剣を抜いていたら、即戦闘開始」
「私達はたまたま幸運だっただけ」
ロートシルトも腕を組みながら否定的な意見だ。
「仮に戦わないなら、レリットランスをそのまま放置するということだろう」
「お前たちが最奥玄室に向かったことは皆、勘付いている」
「そして、お前たちが生きて戻ったということも」
「他の冒険者がそれをどう捉えるか」
「アイシャとシャアリィが挑まなくとも、他の冒険者はやるだろう」
シャアリィは、言葉の通じる相手と殺し合った経験がない。
「・・・そっか」
「やるしかないね」
命のやり取りをしなくても済むならば、その方法を模索したかっただけ。
でも、多分、あの魔物に残されているのは、武人としての誇りだけ。
人間に戻す方法などないだろうし、あの魔物の役割は決まってしまっている。
人間が作り出した魔物と、魔物によって魔人にされた自分。
そこに一つのシンパシーのような感情を持ってしまっただけ。
アイシャの言う通りだ。
この世界は理不尽でままならない。
「アイシャ、私達で勝てると思う?」
今のシャアリィでは、勝てない。
今の自分では、勝てない。
何を得れば勝てるのか、見当も付かない。
「否、絶好調で挑んだとしても、私達は敗北するだろう」
アイシャは冷静に、一考の余地もなく吐き捨てた。
ロートシルトは、その言葉を持って今日の会合の解散を決めた。
そして、情報開示の同意を二人に求める。
「どうにもならんことも、あるさ」




