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起源

シャアリィとアイシャは迷宮を出ると寄り道することなく、冒険者ギルドに向かった。

僅か数分の出来事であり、記憶違いなどするはずもない。

しかし、自分の記憶と言えども、あまりにも荒唐無稽過ぎて、話すのを躊躇する内容。

まさかとは思うが幻術の類で騙されているのではないか、と、自分の記憶を疑いたくなる。


懐に忍ばせておいたガーゴイルの魔石は二つ。

一つが適合しなかった際、或いは目に見えぬ破損などで使用出来なかった場合の予備。

その一つだけが手元に残り、確かに扉を開いたという実感。


冒険者ギルドの扉を開けカウンターに向かい、受付嬢に耳打ちする。


「ギルドマスターの手は空いているか?」


あまりにも早い帰還だが、幸いにしてロートシルトはギルドの資料庫にいた。

極秘の会話に使用される応接室は、これで三度目。

お茶が運ばれてくるのを待ち、受付嬢の退出を確認した所で、ロートシルトが首尾を問う。


「些か、戻りが早くて驚いた」

「鍵が合わなかったとか、不測の事態で踵を返したのか、と、思ったが違うようだな?」


そう言われて、シャアリィもアイシャも自分の顔から余裕が消えていることに気付く。

アイシャが大筋を話し、抜け落ちをシャアリィが補足するという何時ものやり方。

同じ出来事に直面しても、シャアリィとアイシャでは感覚にかなりのズレがある。


「ヒトの言葉を話す魔物・・・例がないわけではないが、何らかの縁がなければそうはならん」

「例えばタウロスやラミア、アラクネの中には人語を話す個体が存在する」

「彼らは元々は『人工的な魔物』だからな」

「呪術的な結合によってヒトと獣を魔石で繋ぎ合わせた魔物と言えばわかりやすいか」


アイシャは気になったことをロートシルトに尋ねた。


「それでは獣人もそのようにして誕生したのでしょうか?」


ロートシルトは、首を横に振って否定する。


「獣人種は旧世界の人間によって作られた『種族』だよ」

「古い書物には、オーバーヒューマンという記載がある」

「ヒト以上のヒトを目指して、既存生物の長所を何十世代も掛けて少しづつ移植し定着させたもの」

「だから、身体の殆どはヒトと変わらないし、ヒトと子を成すことも出来る」

「せっかくの長所が薄れてしまうから、ヒトと交わりを禁じている獣人が殆どなのもそのせいだ」


ロートシルトが続ける。


「特別な例として、特別な個体が人語を習得したという例もある」

「比較的長い年月を掛けてヒトが魔物に言葉を教え、魔物がそれを少しづつ理解する」

「歴史的な大魔術師が魔導の力で切り開いた迷宮には、そういう魔物も存在する」

「だが、それを残し続けるのは至難・・・言葉の他に文字も覚え、残さねば次の世代には受け継がれない」

「人間と同等以上の知性があれば、龍種、亜龍種などでも可能だろう」


アイシャが再び問う。


「では、今回の魔物の起源は、特別なタウロス種ということになるのでしょうか?」


その問いにロートシルトは、自らが考えた仮説を述べる。


「そうだ、それも迷宮に配置するためにわざわざ用意された一体限りの特別種」

「魔導研究者の狂った芸術的作品・・・と、いうところだろうよ」

「素材となった人間自体が、名のある武芸者だった可能性すらある」


シャアリィとアイシャは、その仮説に胃の中のものを戻しそうになる。

何処まで、この世界は狂っていれば気が済むというのか。


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