表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/171

久しぶりだね

レリットランスの教会が、正午を知らせる鐘が鳴る。

迷宮の入口付近に積もった雪を、冒険者ギルドの職員がシャベルで寄せて道を開いている。


「久しぶりだね、もう、ガーゴイルは終わったんだろう?」


優しい口調で声を掛けてくれたのは一昨年引退したという元冒険者。

シャアリィがそれに元気に応じる。


「そうだよ、今日はね・・・ちょっと迷宮見物だよ」


その言葉が何を意味するものか、察していても知らぬふりで声を返す。


「無事に帰っておいで」

「俺にも、君らくらいの娘がいるから、心配してるんだ」


アイシャが無言の笑顔で、大きく手を振ってそれに答えた。


・・・


もう、この道を何度行き来したことだろうか。

旧迷宮とは異なる石造りの通路は迷宮の魔力で仄かに光っている。

シャアリィとアイシャが、最深部までの道中で迷うことはない。


新地区の亜人達は用心深い。

明らかに自分たちよりも格上だと判断した相手からは身を潜める。

亜人にとってシャアリィとアイシャは、毎日のように決まった道を通る化け物だ。

ただ、今日に限っては数ヶ月ぶりということもあり、忘れているかも知れないが。


もしも、今日、シャアリィ達に襲い掛かる魔物がいたならば、運が悪いとしか言いようがない。

月並な言い方をすれば、久しぶりの迷宮で疼いているのだ。

アイシャはもしかしたら、相手を微塵切りにしてしまうかも知れない。

シャアリィに至っては、サンド・プリズンの実験台にするだろう。


無言のままアイシャは、シャアリィの歩幅に合わせて、少しゆっくりと歩く。

耳を常にあらゆる方向に向けて、索敵を怠らない。

シャアリィは、そんなアイシャの耳やしっぽの揺れ具合から、魔物の気配を察知する。


こうして一緒に歩くだけでも、どれほどまでに信頼しあっているのかが分かる。

階層の終端で、追ってくる者がいないかを確認。

アイシャが先に降りて、索敵後、シャアリィに合図を送る。


単純だが常にルーティンは変わらない。

それが出来なければ生き残れないし、強くもなれない。

例えそれが、今日のような特別な日であったとしても、だ。


結局、二人の疼きはそのままに、あの忌まわしき吊橋まで来てしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ