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鎮火と復興

その夜、多数の私兵に守られていたはずの領主邸が焼き討ちされた。

別邸も、馬車も、領主所有の何もかもに火が放たれた。

暴徒の数はあまりにも多く、大義のない領主を守ろうとする兵は皆無だった。


ほぼ同じ時刻、商業ギルドにも被害が及び、堅牢な鋼鉄製の大保管庫だけを除いて焼失。

レリットランスの街で最も栄えていた二つの建物は、灰を残して消えた。


幸いにして冒険者ギルドとその周辺には被害は及ばなかった。

対話の窓口を維持し続け、多くの冒険者がそこに残り、対策を検討していたが故だ。


アーシアン連合国の中央監督庁から、軍隊と対策委員会が派遣された。

到着したのは、暴動の翌日、正午過ぎだった。


領主のオズワルドとその家族は皆焼死し、レリットランスの貴族達の殆どが逮捕された。

罪状は『治安維持に対する重大な過失及び私財の不法移転と職務放棄、職権乱用等』

巻き添えで焼失した家屋や店舗は二百以上に及び、街としての機能は著しく低下していた。


中央監督庁の対応が迅速だった背景は、こうなることを予想した手紙が年末に送られていたせいだ。

差し出し人は言うまでもなく、アイシャ・セロニアス。

アイシャの綴った書面は、実に合理的で理解しやすく、その予測はあまりにも的確だった。


「街を守る義理はないんだけど」

「黒猫のテラスとオルチェ達のお店がなくなったら、悲しい」

「直属部隊なんてものがあるなら、最初から出してるはずよね」

「調査隊すら派遣せず、目の前に人参ぶら下げるやり口」

「冒険者舐め過ぎ」


シャアリィは、ケラケラと笑いながら頷く。


「焼け出された人たちは可哀想だけど、領主の不手際だから救済もあるでしょ」

「冷たいようだけれど、安全がタダじゃないってことは覚えとかないとね」


流石にこの状況で営業をしている店はない。

しかし、アーシアンの正規軍が持ち込んだ緊急物資によって、人々の生活は維持されている。

対策委員会によって復興本部が設立され、暫くの間、職人ギルドが中心となる。


まずは、焼失、倒壊した建物から瓦礫を撤去しなければならない。

こういう作業は本来、ボランティアで行う場合が多いが、それでは時間が掛かり過ぎる。

貴族が一掃されたことで開いた貴族籍を利用することをアイシャが提案した。


レリットランスの商業ギルドがアテにならない以上、アーシアン本国から投資してもらうしかない。

その為には『お金のある所』から持ってくる必要がある。

さらに新しい領主が使いやすい人材を選ぶ絶好の機会にもなる。


建物を作る際に必要となる土石属性、地属性の魔石をシャアリィ達は大量に保有している。

さすがに無償提供する気はないが、火事場成金になるつもりもない。

必要な数を良心的な価格で売ることは問題ない。


大きな復興計画は、大きな需要を生み、そこには大きな供給が生まれる。

寂れる一方だったレリットランスの街は、これから入植者で溢れるだろう。

当然、治安維持に関しては最大限に留意しなければならない。


レリットランスは、人口のバランスが冒険者とその関連に偏り過ぎていた。

踏破されたとしても、レリットランスはまだ暫くの間は魔物の密度も衰えないだろう。

それならば、ルーキーからベテランまでが魔石を得ることが出来る迷宮として、利用価値がある。


そのうち、最終エリアに足を踏み入れたくなった冒険者も出てくるだろう。

どんなに命が大切でも、『迷宮踏破』という偉業は、夢と魅力があるのだから。


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