新年
年が明け、シャアリィとアイシャは、オルチェ達の店に挨拶に出掛けた。
「明けましたー!」
と、いう掛け声でシャアリィが店のドアを開けようとすると、内側から鍵が掛かっている。
シャアリィは、少し大きめにノックして催促する。
「明けましたー!昨晩はずいぶんお楽しみでしたね!」
と、大きな声で、ご近所様に白い目で見られそうな挨拶をしてみた。
ドタバタとあの大きな身体がまっしぐらに玄関に走ってくる音がする。
「明けたよ!ああ、間違いなく!」
「だから、黙れ」
着替えも疎かなオルチェが髪を振り乱して出迎えた。
「適当なテーブルの椅子降ろして座っておきな」
「暖炉の火は、自分で付けな」
「まったく、まだ、昼前だってのに」
ぷんすかと怒りながら、オルチェが支度を整えるらしく、店の奥に引っ込む。
「お邪魔しまーす」
と、シャアリィに遅れてアイシャも店の中に入る。
二人はコートを脱いで壁のハンガーに掛けると、暖炉の魔石に火を入れた。
勝手知ったる我が家のように、少し多めに椅子を降ろして身体を伸ばしてくつろぐ。
「おー、来たか、耳有り耳なし」
実にわかりやすいコンビ名だが、一応シャアリィにも耳はある。
まだ、酒が抜けきっていない虚ろな目で、アレックスが酒瓶を持って登場。
二人の向かいに腰を下ろすと、自分だけ飲み始める。
「おじさん、新年だよ、おこづかいか、酒くれよ」
シャアリィとアイシャが親戚の娘のように催促するが、簡単にいなされる。
「おじさんはね、お店出してお金があんまりないんだ」
「おかみさんにおねだりするといい」
やっと支度を整えたオルチェが、アレックスの後頭部をはたく。
「あんたたち、休みの日までアタシを使う気じゃないだろうね?」
新年で街中のレストランも、黒猫のテラスも開いてない。
保存食のパンやチーズにも飽きてきたので、挨拶がてらご飯を集りにきた二人。
此処にくれば多少気の利いた食材くらいあるだろうという狙いだ。
「おーい、新年の挨拶にきたぜ」
「何か食わしてくれ」
例の悪漢スタイルにコートだけ羽織ったエドワードが、ノックもなしに乱入してきた。
「・・・わかったよ・・・作る・・・作りゃあいいんだろ、アタシが」
オルチェ以外の面々は無邪気に喜んだ。




