エドワードの引退
今日は珍しく戦装束ではないアイシャとシャアリィ。
ひらひらとしたお嬢様らしい揃いのドレスで冒険者ギルドに現れた。
二人に呼び出されていたエドワードは、何時もと変わらない悪漢丸出しスタイル。
「今日は、エドワードの引退式をしまーす」
「どうせ食えないものなんていらねえ、とか言いそうなので花束はちっさいのにしましたー」
「紙吹雪も片付けるのが面倒なので省略しまーす」
と、シャアリィ、アイシャが挨拶すると笑いがそこかしこから聞こえた。
「皆は、酒がありゃ世は事もなしって野郎ばっかりなので、お酒は私達からの奢りです」
「ちなみに、シャアリィとアイシャが守銭奴とか言ってたやつは、ここで白状しとけ」
「ネタはあがってんだぞ、ゴメス、サリー、オスカー、と、仲良しグループ」
「エドワードさんに、しっかり侘びいれとけよコラァ」
青い顔をしながら該当者一同が、整列して頭を下げる。
「まぁ、長話なんて野暮は適当にして、乾杯!」
「腹一杯飲んでもいいけれど吐くなよー」
「食べ物残したら、協賛してくれたオルチェ姉さんがぶちキレるからな」
普通、冒険者の引退なんていうものは身内だけでこっそりグラスを合わせて終わりだ。
勿論、その方が格好がいい。
それに箔も付くが、アイシャとシャアリィは正直、寂しかったのだ。
ザックパーティと関わって、その終焉を見届けるだけなんていうのが。
「エドワード、このギルドに言い残すことはある?」
アイシャが輪の中心にエドワードを引っ張ってくる。
エドワードは麦酒のジョッキを手近なテーブルに置き、照れくさそうに応じる。
「皆、知ってると思うが、アイシャとシャアリィが俺に最後の仕事をさせてくれた」
「って言っても、俺は隠れながらたまにヒールしてただけなんだが」
「この二人には本当に心から感謝してる」
「こんな粋な計らいまでするなんて、俺にはとても返せるものがない」
エドワードの目から雫が幾つか落ちる。
「感謝と言えば、皆に俺は感謝してるんだ」
「ガキの頃から今までつるんでくれたザックパーティの連中は特に最高だ」
「この場所に、ザックがいないことだけが・・・ほんの少し、せつない」
エドワードが牧師のように胸に手を置き、十字架を握り締める。
「皆、好き勝手やって、好き勝手生きて、好き勝手に死ね!」
「結局、俺ら冒険者は、今日の飯の心配くらいしか頭の回らねえバカばっかりだ」
「今までここに、俺を居させてくれて・・・ありがとう」
「以上が、ザックの弟分、エドからの別れの言葉だ」
万雷の拍手というのはコレだろう。
冒険者達のごつい手が奏でる拍手は、扉を超えて外にまで響いていた。
皆が盛り上がり酒を酌み交わす中で、シャアリィとアイシャは黒猫のテラスに避難。
そのうち酒の掛け合いとか始まったら、せっかくのドレスがダメになってしまう。
「私達にしては、ちょっと優しすぎたかな」
と、シャアリィがアイシャの肩に頭を乗せる。
「シャアリィは優しい子だよ・・・それは私が一番良く知ってる」
アイシャのしっぽが上機嫌にゆらゆらと揺れていた。




