初日の成果
夕暮れ・・・街に戻る頃には、アイシャの背中でシャアリィも目を覚ました。
少々傷が疼くのか、脇腹を気にした後、歩けるから降ろしてくれと呟いた。
そして、にへらっとだらしない顔をして、
「今日はこのままじゃ黒猫のテラスは行けないね」
「オルチェの店に転がり込もう」
沈んだ気持ちを誤魔化すように、後ろ歩きしながら二人に提案した。
アイシャも、それを十分にわかっている。
本当は自分の不甲斐なさを何処かにぶつけたいのだけど、やり場がない時の気持ち。
エドワードも、ただ、無言で頷く。
「ラッシャイィイ」
と、威勢の良い歓待は、すっかり女将が馴染んできたオルチェの声。
すぐに三人の存在と、違和感に気付く。
そのまま何事もなかったように、少しばかり汚れの目立つ三人を奥の目立たない席に案内した。
「飲め、食え、騒げ、そして金を使え!」
ぶっきらぼうにオルチェはメニュー板と頼んでもいない麦酒を置いて、他のテーブルに駆け出す。
その目には少しばかり涙が光っていたが、それは無事に三人が帰ってきた喜びのものだ。
「まぁ、アレだ」
「ガーゴイルについて、しっかりとした説明をしてなかった俺が悪い」
エドワードが、麦酒を喉に流し込んで頭をテーブルに打ち付けた。
だが、アイシャもシャアリィもわかっている。
エドワードは悪くない。
「まじで焦ったわ」
と、シャアリィがいきなり我に返ったように切り出す。
「石で出来てるくせに、あんな軽やかにぴょんぴょんするとか、アリなん?」
「今度会ったらぶっころ、って、ああ、もう、ぶっ殺してきたんだっけ」
「きゃはッ」
アイシャが珍しく、シャアリィに同調して下品に笑う。
「ほんっと、あったまきた」
「シャアリィがキレる前にキレるとこだった、てゆか、キャノンやっぱ無敵だわ」
辛気臭いのは嫌いとばかりに、大声で、オルチェを呼びつける。
「アイシャは背中、私はお腹、ガゴ砲食らってきたぜ」
「エドワードの治癒師ってのがハッタリじゃなくて、助かったよ」
エドワードは複雑な表情で、まぁな、と、言うしかなかった。
「くっそー、まじでムカつくんだけど」
「あの石像野郎、絶対根絶やしにしてやるって決めたわ」
シャアリィは、どうやら大丈夫らしい。
「まず、ハラヘッタので、それを解消するべきよ」
「酒と、肉と、新婚のイチャイチャでお腹いっぱいになりましょ」
アイシャの提案のせいで、調理カウンターの中でアレックスが盛大にやらかす音がした。




