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戦術の変化

吊橋前に初回と同じように陣取る。

吊橋の下は小川が流れているだけだが、結構な水量があるため注意が必要だ。

流れている水では、さすがのシャアリィでも術式には利用出来ないのが残念。

水に落ちたガーゴイルを凍らせるというのは、大した意味を為さない。

ガーゴイルは魔法生物であるため、凍傷や体温低下による影響を受けないからだ。

ほんの少し動きが止まり、フローズン・レイジの標的になるだけでも意味があると言えばあるのだが。


アイシャが足元に転がっている大きめの石を掴んで、先程の蕪矢のように放り投げる。

そして、それが又、会敵の合図になった。


「ガーゴイルの数が補充されている?」


アイシャの驚きは、シャアリィにも伝わった。

勿論、予測出来なかったわけでもなく、嫌なことが起きた場合という想定に入る。

だが、ガーゴイルの変化はそれに留まらない。


「地面を跳ねるなんて聞いてないぞ」


その接近速度は、先程の比ではない。

アイシャはすぐさま弩弓を放り、片刃剣を構える。


「シャアリィ、予定変更だ」

「三分の一出力でキャノンを頼む」

「私が十秒稼ぐ」

「エドワード、離脱しろ」


手短に戦略変更を伝え、アイシャは片刃剣の切っ先をガーゴイルに向けた。

返事代わりの魔法風が、シャアリィの足元から吹き上がる。


「放出カウント九・・・八・・・七・・・」


ガーゴイルの容赦ない火球攻撃がワンドを構え直立不動のシャアリィ目掛けて飛んでくる。

シャアリィへの直撃コースは五つ。

それでも目を開いたまま、一歩も引かずにカウントダウンを続行する。

アイシャが前に一歩踏み出し、直撃弾三つを片刃剣で捌き、間に合わなかった一つを背中で受ける。

こんな状況の中でもシャアリィの集中力は途切れない。

アイシャの微かな悲鳴にも、シャアリィはカウントを止めない。


「・・・三・・・二・・・」


止めきれなかった火球が、シャアリィの左脇腹に命中。

ほんの僅かに身体が揺らぐ、が、既にワンドは氷結臨界に達している!


「一・・・吹き飛べぇええ」


反射で身を躱したアイシャの長い髪を掠めて、フローズン・キャノンが狭い通路全てを巻き込みガーゴイルを一掃した。

魔石と粉々の石の破片が散乱した三叉路の奥の壁は抉れ、むせるような砂埃が舞う。

キャノンを制御し終わった後、シャアリィの脚がもつれ、冷たい石床の上に転倒する。


だが・・・それで終わりではなかった。

左右の通路から、新しいガーゴイルの群れがさらにぞろぞろと出てきた。


「シャアリィ、手を!」


空いている左手でシャアリィの手首を引っ掴むと、そのままシャアリィを肩越しに担ぎ上げる。

鍛えられたセロニアスの体躯は、少女の軽い身体ひとつくらい乗せただけでは速度を落とすことはない。

担ぎ上げられたシャアリィの鼻先にアイシャの背中があり、朦朧とする意識の中で鼻腔を衝く人肌の焦げた匂いが自分の弱さをを思い知らせた。


辛くも離脱に成功した二人。

補給地点までの道の途中で、エドワードが待機していた。


「エドワード、シャアリィを頼む!」


チャージ中で無防備なまま撃たれたシャアリィの傷は酷い。

内臓を損傷しているのだろう、かなり吐血している。

不幸中の幸い、相手の攻撃が火炎属性だったために氷結によるダメージ相殺が機能した。

もし、これがファイア・ボールでなくストーン・バレットだったら、シャアリィの脇腹にはでかい穴が空いていただろう。


「御使いの力をここに集わせ 癒しの奇跡を与え給え」

「対価には祈り 我が鼓動の幾許かを捧げ願う」

「翠と蒼の精霊に奉るは 豊穣だけに非ず」

「ブライト・ヒーリング!」


六節中級治癒魔術の効果は高く、シャアリィのこの傷を癒すくらいならば問題はない。

すぐさま、エドワードはアイシャに問う。


「あんたは大丈夫なのか?」


アイシャは汗塗れの顔で、エドワードに伝える。


「背中を撃たれたが、私は鍛えているし、骨まではやられてないよ」


エドワードはアイシャの背中側に周り、同じようにブライト・ヒーリングを使用した。

そして、今日の戦闘終了を申し出た。


「応急じゃなく完治の術式を使ったが、使えるブライト・ヒールはあと三回」

「手負いの精神状態で焦って突っ込んだらザックの二の舞だ」

「今日は引き上げようぜ」


まだ意識を回復していないシャアリィを横目にアイシャが頷いた。


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