消耗戦
パーティ分解の遺恨が残らないようにと、シャアリィが提案したのは、オルチェの店での作戦会議だ。
勿論、支払いはエドワード。
最初は顔を合わせ辛いと渋っていたアレックスも、最後には両手を挙げた。
「今まで、ありがとな」
「ちょっと残念な終わり方だけど、俺もここらへんが潮時だと思ったんだ」
エドワードのぼさぼさの赤毛がちょっとばかり可愛らしく見える。
「エドは、冒険者上がったら何かやることあるのか?」
「せっかく治癒術あるんだから、治癒院でも開いたらいいじゃねえか」
真面目な顔で言うアレックスに、女子三人が揃って吹き出す。
「ドア開けたら、怪我より命の心配しなきゃならん治癒院ってどうなの?」
辛辣を辛辣と思わないシャアリィの一言がさらに笑いを呼ぶ。
「いやいや、シャアリィ、エドはね、治療の腕はいいんだよ」
「骨折だろうが、出血だろうが、千切れてでもない限り、大体、上手くいくんだよ」
オルチェの大雑把過ぎる説明にアイシャが容赦なく突っ込む。
「『大体何でも治る治癒院』とか、看板出すわけ?怪しい、こっわー」
いじられ続けたエドワードが、少し拗ねながら、女子達の意見をきれいに流す。
「まぁ、他にやれることもないしな、治癒院か、そうだな」
「そんな先のことより、まず、ガーゴイル共をどうやって殲滅するか、だ」
論じるまでもなく、アイシャが単刀直入に答える。
「削り合い、いや、一方的に削るわけだから、スキャルピングね」
「シャアリィは多彩な術式を持っているから、弾幕状態で術式を打ち続けられる」
「私は弩弓メインだけど、主な仕事はシャアリィの護衛かな」
「多分、被弾なんてしないだろうけれど、相手の数によっては保証がない」
エドワードがシャアリィに問う。
「そのやり方で、どれくらいの時間、術式を使い続けられる?」
シャアリィは指を三つ立てて答える。
「術式の強弱にもよるけれど、アイス・ショット、ストーン・バレットで三十分」
「そこに対空のアイス・ブラストが混じれば、時間は少しづつ減る」
「アイス・ランスは一撃で落とせる確率が高いけれど、魔力の減りも大きい」
「ウォーター系だと多分威力が小さくて通らないから、その三種ないし、四種で戦うことになる」
エドワードが顎をさすりながら、
「なるほど、アクシデントも考えて二十分にするか」
「二十分打ち続けて、撤退、殿をアイシャにカバーしてもらう」
「被弾したら、俺が即ヒール、結局、消耗戦か」
アイシャが当然と言う顔付きで、補足する。
「ええ、安全な場所まで退避して、そこで一時間くらい休息」
「一日にそれを三、四回繰り返せば、一週間以内にほぼ全滅させられる」
「これ以上の方法・・・いえ、やめておきましょう」
「あと、シャアリィはたまに頭に血が昇るとメチャクチャなことをする癖がある」
ぎくり、と、シャアリィが小さくなる。
「大体の場合、上手く行くことのほうが多いけれど、その時は、私じゃなくシャアリィを守って」
「私には気配遮断スキルがあるから、逃げるのだけは誰よりも得意なの」
少し、眉間に皺を寄せてアイシャは、エドワードの目を見据えて言う。
「それだけは頼む・・・否、お願いします」




