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自己満足のツケ

まず、アイシャが高飛車に一言。


「お嬢ちゃん達には用はなかったのでは?」


そう言われると返す言葉もないエドワードだが、恥をかなぐり捨てて助力を請いに来たのだ。

二人に何を言われようと、厳しい条件を突き付けられようと後戻りは出来ない。

頭を下げたままで、謝罪を述べる。


「俺の見る目がなかった、勘弁してもらいたい」


その一言を言わせ溜飲を下げたアイシャは、シャアリィに話を聞くように目配せする。


「で、例の地獄でガーゴイルを私達に殲滅して欲しい、と?」


エドワードは顔を上げて半信半疑な表情で呟く。


「やってくれる、のか?」


アイシャとシャアリィは、にこやかに応じる。


「勿論、条件次第」


アイシャが言葉を続けた。


「だって、小娘に頭を下げる程にあなたは困っているのでしょう?」

「足元を見られても当然ではなくて?」


意地悪くエドワードの本音を引き出すためにブラフを仕掛けるアイシャ。


「六回、パーティを編成して成果はガーゴイル五体・・・死者はゼロだが、重傷の犠牲者は二十だ」

「ザックが死んでから、有力パーティも全部、ガーゴイル攻略からは手を引いた」

「目ぼしいベテランからも見放された」

「俺が魔術師や弓術士なら、一匹づつでも執念で狩り続けたかも知れないが・・・俺はヒーラーだ」

「それも聖職者の資格もない、二流のヒーラーだ」

「もう、他に頼める相手はいない」


シャアリィが適当に注文を頼み、エドワードにまぁ、飲んで身体を温めなさいよ、等と気の効いたことを言う。


「あなた達の実力なら、ザックパーティで地道に『削り』をしてれば勝てたのにね」

「それを盾にして、もう一度、オルチェとアレックスを呼び寄せるのはどうなの?」


エドワードは黙り込む。

そして、ギリギリと歯を鳴らして、


「それをするくらいなら、こうして、お前たちに頭など下げたりしないッ」

「俺は、あのパーティメンバーだけは、もう、あそこに立たせたくない」


なるほど、と、アイシャは冷めた眼差しでエドワードを射抜く。


「あなたの自己満足のツケは高いよ」

「まず、私達以外を雇うなら、その者の日当を今の倍付けに」

「私達の条件は、日当なしの代わりにガーゴイルの魔石総取り」

「それと、今、あなたがギルドに預けてある保証金から、重傷者へ十分な見舞金を支払うこと」

「最後のひとつ、それは、エドワード・・・あなたの冒険者引退」

「余生を暮らすくらいの貯金はあるでしょう?」


エドワードにしてみれば、そのどれもが納得出来る条件だった。

もう、レリットランスで最奥に挑めるパーティを編成することは彼には無理だろう。

それなのに未練を残してひとり冒険者を続ければ、そこに待ち受けるのは『死』。

アイシャから突き付けられて気付く、冒険者としての終着点。


「それでいい」


憤怒と畏怖に取り憑かれていたエドワードの顔に、ほんのわずかに安堵が戻る。


「それでザックに(はなむけ)出来るならば、俺のラストアタックはガーゴイル退治で決まりだ」


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