ネームドキラー
シャアリィの魔力残量は、ほぼゼロ。
酷い頭痛、倦怠感、吐き気、筋肉痛、関節痛、あらゆる不快感が全身に満ちる。
アイシャに差し出された黒い液体を無理矢理喉に流し込んで、相当気分悪そうに咳き込む。
一瓶銀貨50枚の魔力回復薬は、いわゆる生薬であるため、すこぶる不味さ。
誰もが飲んだ後で後悔するというが、さすがに現状よりはマシだと判断したのだ。
「アイシャ、キャラメルかチョコくらい持ってるでしょ・・・ちょうだい!」
武人とは思えない美しい指先で、アイシャはキャラメルの包装を剥がし、シャアリィに渡さず、自分の口に放り込んだ。
「反省が先よ・・・シャアリィ」
「見なさいよ、この惨劇の跡を・・・ギルドの連中にどう言い訳する気よ?」
「千本足にハリケーンが幸運にも直撃しましたとでも言うつもり?」
シャアリィは喉を抑えながら、アイシャに甘味を要求する。
あまりにも可哀想になり、ついつい、その手にキャラメルを放る。
「ちなみにこいつら、まだ死んでないよ?」
「早いとこ、魔石取り出さないと最悪復活するんじゃない?」
「噛まれないように気を付けてね?」
シャアリィは地に五体を投げ出して、自分は動けないとアピールしている。
アイシャは軽くシャアリィを蹴飛ばす。
「私が取るより、シャアリィが取り出して止め刺さないと経験値が減るよ?」
むぅーと唸りながら、身体を起こしてツインヘッド・ワームの頭から魔石を抉り出す。
ギチギチと牙を鳴らしながら痛みを訴えるツインヘッドだが、既に抵抗するだけの体力は残っていない。
「まずは一つ・・・いやぁ、さすが百年モノはデカいねぇ」
自分の握り拳二つ分と同じくらいの濃いオレンジ色の魔石をアイシャに放り投げた。
「うう、腰痛いなぁ・・・あそこまで歩くのが辛い」
文句を言いながら、又、魔石を抉って取り出す。
先程よりも少し小さめだが、同じような魔石を取り出すことが出来た。
「残りはアイシャが取り出した方がいいんじゃない?」
「アイシャのレベル上げ、相当しんどいでしょう?」
シャアリィに言われて、そういえばそうだなとアイシャも重い腰を動かす。
「私が魔石を取り出したら職人ギルドに直行しよう」
「こいつの外皮は上質な鎧や盾になるし、結構な量の素材を有効利用出来るはずだ」
「冒険者ギルドに回収されるより、いい値が付く」
魔石を抉りながらも、さすがアイシャ抜け目がない。
互いの戦装束がすっかり紫色のネバネバだらけになっているのを見て、二人は同時に言う。
「まずは、水場に行こう」
「これ、川で洗って大丈夫なん?」
「周辺の魚死んで苦情とか来ないかなぁ?」
アイシャがシャアリィに素朴な疑問を投げる。
「水ならシャアリィが出せばいいんじゃない?」
「コレの瓶とかに」
先程まで魔力回復薬が入っていた瓶を見せる。
「そんな小さな容器、どんだけ魔力絞っても爆ぜるわ」
まぁ、そりゃそうよねぇ、とアイシャが納得して、二人は沢まで歩くことにした。




