攻略方法
一週間を掛けた準備を二人だけでしてきたのには、フォンスとの約束だけでなく、シャアリィの術式の秘匿のため。
特に秘匿しておきたいのは、勿論、フローズン・キャノンである。
最大破壊力ならば、かなり大規模な城の城壁でも破壊可能だろう。
正体がバレたらシャアリィこそ、ネームド指定されかねない。
「今回に限っては、初手からフローズン・キャノンを使うのは正直、避けたいとこだよな」
今回は魔力回復剤も持参しているが、正直、此処で使いたくはない。
シャアリィには三本渡してあるが、一瓶で銀貨50枚の消耗品のくせに魔力の回復は、僅か一割程度、しかも、再使用は一時間不可。
アイシャの予想では自分の斬撃が通るのは、足と柔らかな腹部のみ。
「まぁ、私達の技術やスキルじゃ、千本足を一箇所に留めるなんて出来ないからね」
「手数頼りの消耗戦だけど、それじゃあシャアリィの魔力が持たない」
「穴に一発、緩めのウォーター・キャノンをぶち込めば空気を吸いに巣穴から出るんじゃないか、と」
魔物であっても多くの場合呼吸は必要だろう。
単純に驚いて巣穴から出てくる場合も考えられるし、フローズン・キャノンよりは魔力の消耗も少ない。
「んで、出てきたら、私が兎に角、足という足をぶった切り続ける」
「上手いこと腹を上に向けられれば、アイス・ランスなり、ストーン・バレットなり、ぶち込んでくれ」
シャアリィが最悪の展開をアイシャに問う。
「もし、仮説みたいに三匹居て・・・全部、一度に出てきたらどうしようか」
アイシャの顔から表情が消えて、一言、漏れる。
「撤退」
ただでさえ巨大な相手と戦うのに、完全に独立した三体を相手にするのは無謀過ぎる。
そこは迷わず撤退すべきだ。
「二体なら?」
アイシャは立ち回りを想像する。
シャアリィは卓越したダガー使いだが、パワータイプとの相性はすこぶる悪い。
それも弱点がわかり辛い非人間型のパワー系の場合、シャアリィが取る手段は恐らくアイス・ブラストかアイス・ウォールからのストーン・バレット。
そのコンビネーションならば、まだ、余力も残したまま戦闘を持続可能だろう。
「相手の動き次第だが、直感で判断してくれ」
「私はどんな場合でも、この地形なら戦闘離脱くらいは出来る」
「シャアリィがヤバいと判断したら、私に構わず、即、戦域から離脱しろ」
「繰り返すが、その場合、私が重傷状態でもない限りは、即離脱だ」
シャアリィはニヤリと笑って応じる。
「了解!」
早朝の山の気温は、まだ、それほど高くはない。
涼やかな風が吹く山間の一角で、レリットランス史上稀となるネームドハントが始まった。




