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新たな世界

この世界では、良いことをしても、悪いことをしても、経験値が刻まれる。

その仕組み自体は解明されていないが、もう、人々の間ではそういうものだと認識されている。

そして、それが一定量貯まることで新たな力を得ることが可能となる。


シャアリィのレベルがついに50に達し、触媒さえあれば新しいスキルを習得出来る段階に来た。

その触媒に関しても、既に目処がついている。

レリットランスに来たのは、触媒を集めるという目的も兼ねていたのだ。


シャアリィが取るべき土属性、土石属性の触媒は、地の魔石だ。

アース・ワーム等の土石属性の魔物から取れるオレンジ色の魔石。

ギルドの保管庫には、既に十分な地の魔石が積み上げられている。


どんなスキルが得られるかは、かなり運に左右されるが、まず、基本的なバレット(単体弾)は得られるだろう。

今までの経験が反映されるため、シャアリィの場合攻撃スキルが複数付与される可能性が高い。

足止め用のスワンプ(沼)や、大技であるクエイク(地震)は、性質的に合わないので、除外されやすい。


「さぁ、シャアリィ」

「いよいよ私達の計画の第一段階の達成だ」

「どんなスキルが得られるとしても、シャアリィならば必ず使いこなせるだろう」


ギルド裏手の保管庫に、不燃カンテラを持ち込んだ二人。

この場所、この時間、スキル取得をすることは勿論ギルドの職員達には伝えてある。

但し、様々な問題を避けるため、他の冒険者らには一切知らされることはない。

例えどんなスキルを得ようとも、ギルド職員にも知らされない。

つまり、シャアリィがどのようなスキルを取得したのか第三者に判明するのは、彼女がそれを使う時ということだ。


「触媒から魔力を吸収」

「それを完了すると頭の中にスキルツリーが浮かぶ」

「今回は、一番初期の場所まで戻り、土石属性を選択だ」


アイシャに教えられるまま、地の魔石から魔力を吸収してゆく。

どれだけの魔力を吸収できるかは、シャアリィの資質に大きく左右される。

十分な量の地の魔石は用意したつもりだが。

不足した場合には、また一から魔石集めをしなければならない。


「433、434、435・・・・・・621、622、623・・・そろそろ限界かも」


並の術士なら20、30で溢れてしまうこともあるのに、まさか600を超えるとは。

念のために1000近くの魔石を用意しておいて正解だったようだ。


「えーと、スキルの根本・・・根本・・・」


眼を閉じたまま額に汗を滲ませて時折もがくようにシャアリィは手を動かす。


「あった・・・アレだ・・・光が、四種類?」

「白、紫、緑、オレンジ・・・土石属性だから、オレンジだね」


独り言を呟きながら、次の瞬間、シャアリィの意識が途切れた。

シャアリィの身体をオレンジ色の柔らかな光が包む。

今、この瞬間、シャアリィの魔法術式回路に土石属性が追加され、新しいスキルが生成されているのだろう。

その状態は数分続き、ゆっくりとシャアリィが覚醒する。


「やったよ」

「新しい属性の術式、手に入れたよ」

「スキル追加って不思議だけど、なんだか暖かくて気持ちいいね」


アイシャは泣きそうな顔でシャアリィを抱きとめる。

無事にスキルが追加された・・・それだけで満足だった。


「アイシャ?泣いてるの?」

「私、また心配かけちゃった?」


アイシャは涙を拭いながら答える。


「泣いてない」

「心配もしてない」

「シャアリィがちゃんとスキルを取得出来てうれしいだけだ」

「黒猫のテラスでも行ってゆっくりしよう」


シャアリィはアイシャの眼に光るものを見ないふりをしながら、答える。


「そうしよう」

「今日は、とびっきり甘いチョコレートが食べたいね」


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