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オルチェ・バスロン

最近、週一回は通うようになった「黒猫のテラス」。

何が良いかと言えば、むさ苦しい男の冒険者に絡まれずにお茶が飲めることだ。

有力パーティが次々と没落する中で、シャアリィとアイシャのペアは飛ぶ鳥も落とす勢い。

それでいて、他のパーティと関わることは滅多にないことから、謎に満ちた美少女ペアと噂されている。


「そろそろシャアリィもレベル50ね」

「ようやく土石系のスキルを習得出来る」

「長いような短いような三ヶ月だったね」


二人とも髪が少し伸びて、シャアリィは顔付きが少し大人びた。

相変わらず胸の奥の音はないままだが、以前に増してエンチャントの影響は大きくなっている。


「お嬢様がた、ご一緒してもよろしいかしら?」


聞き慣れない言葉だが、聞き慣れた声が遥か上空から降ってきた。


「オルチェ!」

「勘定自腹なら、好きに座るといいわ」


アイシャがお嬢様らしく返事をした。

体格がかなり違うので、本来四人掛けのテーブル席が三人でいっぱいになる。


「勿論、自分の分は自分で払うよ」


あれから暫く、オルチェは迷宮に潜ってはいないらしい。

冒険者の中では珍しく貯蓄をするタイプだったオルチェ。

贅沢さえしなければ一生分の貯蓄くらいは持っているらしい。


「結局、オルチェは迷宮から足を洗うことにしたの?」


前置きもなく、シャアリィが率直にオルチェに問う。


「どうだろうねぇ」

「アレックスからは、一緒に何かの店でもやらないか、と、言われてるけれど」

「心の何処かでモヤモヤしちまってるんだ」


アイシャは少しいやらしい笑顔で問い質す。


「所帯が持てて危険と無縁なら言うことナシでしょうが」

「ぼやぼやしてるとアレックスに逃げられるよ」


オルチェは寂しげに笑う。


「エドワードはね・・・そのうち新しいパーティを立ち上げるんだって」

「ザックとの付き合いはエドが一番長かったから(はなむけ)なしに終われないんだってさ」

「アタシは、どうすればいいかな」


シャアリィが普段と違う辛辣さで、オルチェを嗜める。


「私達と出会った頃のオルチェは、パーティが割れても冒険を続けるために私達に近づいたじゃん」

「その気持ちが醒めたなら、オルチェは食堂の女将でもしたほうがいいんじゃないかな」

「勿論、どうするかはオルチェ次第だけどさ」


アイシャがシャアリィを叱る。


「わざと傷つけるのは良くないよシャアリィ」

「ちゃんと言えばいいじゃない」

「他の生き方があるなら、冒険者じゃなくてもいいじゃないかって」


時折、シャアリィは頭に来てしまうらしい。


「まぁ、そういうことよ」

「私達は好き勝手に冒険者してるし、私はアイシャ以外の誰かの責任は持てないの」

「でも、オルチェが元気でいてくれたら、嬉しい・・・と、思う」


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