訃報
別れ際、オルチェは少し寂しそうな顔で二人を見送った。
シャアリィも、少し感傷的な気分になった。
勿論、アイシャも自分たちが目的を遠回しに出来るならば、少しくらいは手伝いたかった。
だが、パーティというものは、そういうものじゃない。
巡り合わせや馴れ初めこそ偶然だったり、他愛のないものだったとしても、そこから生まれる絆は深い。
アイシャは考える。
もし、シャアリィを誰かに持っていかれたら、と。
それは身を引き裂かれるような気分だ。
オルチェと組むことで、誰かがそれを味わうのならば、そうならないほうがいい。
それを決めるのが自分なら、そういう火種になるのは心底嫌なのだ。
翌日、シャアリィとアイシャはアース・ワームでの訓練を終えても余裕があった。
小銭稼ぎのつもりでギルドに立ち寄り、身の丈にあったクエストの依頼を物色した。
アイシャが見つけたのは、行商人の護衛だ。
「片道三日間の街道輸送、キャラバンは三両・・・受けるには一人足りない・・・か」
ぽつりと吐き出した声に反応したのが、あのオルチェだった。
「うちのパーティ、結局、一週間くらい各自で気分転換ってことになったのさ」
「手が空いてるから、アタシもそれに乗っかっていいかい?」
「勿論、この前のことは一切合切全く関係なしで」
アイシャは合理的に物事を考える。
キャラバンの護衛依頼としては報酬も待遇もいいし、全く知らない相手が来るならオルチェとやったほうがいい。
クエスト依頼の伝票を剥がし、シャアリィに確認を取る。
「墓場周りばかりじゃ気が滅入る」
「街道キャラバンの護衛を受けようと思うんだ」
「オルチェも一緒だが、シャアリィ、構わないかな?」
シャアリィは、やる気を表情でアイシャに伝える。
「オルチェ、クエストの間、よろしく頼む」
「ベテランには随分と楽な仕事だとは思うけれど、このメンツでやれるのは僥倖だ」
受付カウンターでそれぞれが署名を終え、クエストの保証金を支払う。
護衛クエストは、身分証明代わりに保証金が必要だ。
そうしなければ質の悪い冒険者が送り狼になることもある。
保証金がギルドにあれば、クエスト失敗の場合でもペナルティの負担も出来るし、何より半端者は手が出せない。
「簡単なクエストだとは思うけれど、失敗すれば保証金は全損」
「キャラバン半壊でも赤字だから、気合入れなくちゃね」
今回のクエストリーダーは、アイシャが引き受けた。
キャリアの順で行けばオルチェがリーダーになるのだが、先にクエスト伝票を見つけたのはアイシャだ。
結論を言えば、退屈なほど楽な仕事だった。
だが、クエストを終えた三人が街に戻ってきた時、酷く耐え難い事が起きていた。
「ザックが死んだ」
「最深部へのアタックを諦めきれずに、新しくパーティを編成して潜ってトチった」
カウンターで訃報を受けたオルチェの顔色は、蒼白だった。




