宿探し
今晩は違う宿を見つけようと繁華街に眼を向けると、さすがは迷宮の街。
様々なレストラン、カフェテリア、それに宿屋よりも上等なホテルもあった。
シャアリィとアイシャは、宿を見つけてから食事をすることに決めた。
「お貴族様御用達みたいなのはやめておきましょう」
「さすがに分不相応だし、次の日、またサボりたくなっちゃうでしょうから」
アイシャも実は一度は泊まってみたいが、それは今でなくとも良い、と、自分を諌めた。
「私はねー、ベッドさえあれば別に何処でもいいよ」
「だってご飯は外で食べるし、どうせ帰って寝るだけでしょう」
「安全が確保出来て、ちゃんと寝られるなら、アイシャに任せるよ」
じゃあ、あそこで。
と、アイシャが指差したのは、衛兵詰め所がある通りで小綺麗な看板の新しい宿だった。
「おお、よさそうじゃん」
「予約しにいこうよ」
シャアリィも文句はなさそうだった。
「おや、お二人さん、今から飯かい?」
背中の頭上から聞こえてきた声の主は、あのオルチェだった。
パーティメンバーと一緒ではなく、どうやら一人歩きのようだ。
一瞬、緊張が走って、アイシャが反射的に前に出て答える。
「ええ、そのつもり」
「その前に宿を押さえようと思い、あの店に眼をつけた所だよ」
返事に納得したのか、オルチェが話を続ける。
「今日はアタシも一人なんだ」
「もし、嫌じゃなかったら、一緒に食事・・・どうだい?」
あくまで友好的な姿勢を崩さないオルチェ。
アイシャにしてみれば、仲良くする義理はないが、揉めるよりはマシという考えと、情報収集が頭に浮かんだ。
了解の返事をする前に、シャアリィがオルチェに質問を投げる。
「で、あの宿はいい宿?」
「オルチェは、この街のこと詳しそうだから聞いておきたい」
オルチェは、クスっと笑って。
「シャアリィ、アタシは冒険者だ」
「そんなやつの情報を簡単に信じちまっていいのかい?あの店とグルかもしれないよ?」
アイシャの首筋に汗が流れる。
「オルチェみたいなベテランがそんなセコい稼ぎ方するわけないじゃない」
シャアリィは気負うでもなく、ありのままを口にした。
「ベッドは及第点。朝食はつかないけれど声を掛けておけば湯は追加して貰える」
「勿論、追加料金は取られない」
シャアリィはアイシャに笑い掛けて、
「宿は決まりだね」
「一つ借りだから、オルチェの誘いに付き合おうよ」




