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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
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鏖殺(おうさつ)

鏖殺。

ロザリーのそれは違う表現をするなら、過剰防衛。


まるでチャームの術式が備わっているように、ロザリーと眼を合わせた魔物は、ロザリーに向かう。

各々が一体づつ仕留めている間に、残った一体はイザベラを素通りしてロザリーに向かう。


戦士ならば隙だらけの相手に躊躇する必要はないが、ロザリーには縛りがある。

専守防衛・・・つまりは相手に先制攻撃をさせなければならない。

そのための『魔眼』とも言える薄い色素の眼から放たれる吸引力。


後方から新手が四体・・・だが、全てがロザリーに向かう。

舞でも踊るかのように長い手足で自在に操るロザリーのメイスは、金細工を施した超重量級の鋼鉄鉄球。

凹凸や棘の一つもなく、少々長めの持ち手に鉄球がついただけの武具。

打撃武器として見れば特に変わった所は見当たらないが使うとなれば話は別だ。


大きい方のメイスの鉄球は人の頭より少し小さい程度、小さい方のメイスでも握り拳程の大きさ。

数十キロの鉄球を普通に落とされただけでも、骨折は避けられないというのにソレを高速で振り回すのだ。


ドワーフや獣人の戦士の中には、ハンマーやフレイル等、もっと大仰な打撃武器を使う者もいるが、皆、全身全霊で持ち上げて振り下ろすような使い方をする。

それは、ロザリーのような武具の重さを感じさせないような戦い方とは全く無縁。


どう見ても一撃必殺であるソレで専守防衛の縛りなどものともせず、縦横無尽に殴打する。

魔物を撲殺しても『徳』を失わないなどという無茶苦茶な聖職者による、言葉通りの鏖殺だった。


それでも丁寧に一体づつを仕留め、両手のメイスを一度に振るうような下品な攻撃はしない。

あくまで神への奉仕である以上、厳密なルールがロザリーにはあるのだ。

相手が立ち上がっても反撃の意志を確認するまで攻撃しない、戦意を失った個体には追撃しない・・・等。


おかげで、アイシャも、イザベラもロザリーの後始末の手伝いをする羽目になった。

勿論、後始末と言っても、泣き叫ぶ亜人の喉に介錯の刃を突き立てる程度のことだが。

ロザリーの凶悪なメイスに打たれれれば、巨人であろうと無事で済むはずがないのだ。


「魔物にはモテモテなのに、何故、人間だと男は寄ってこないのか不思議」

「寄ってこられても聖職者は恋愛出来ないから、どうでも良いことなんだけどね」


返り血に染まった顔で、よくも、ぬけぬけと言うものだとイザベラは呆れる。

不思議でもなんでもないだろう、と、アイシャも閉口する。

たとえ恋愛が出来たとしても些細な喧嘩で恋人をうっかり撲殺してしまうよりはマシだとも思った。


それからも数十体を狩り尽くし、オーガの群れが途絶えたところで、店じまい。

今のところは、アイシャの記憶に関するようなヒントは何もない。


「龍種のような強い魔物であっても、やはり、聖職者を優先して攻撃するのだろうか?」


アイシャが素朴な疑問をロザリーに投げ掛けた時、ロザリーは確かに笑った。

否、それは可愛らしい少女の微笑みではなく、口角を釣り上げた声を伴わない嗤いだった。


「さすがに龍ともなれば、区別なんてしないだろうね」

「私たちが小さなゴブリンと大きなゴブリン、どちらを先に殺すか悩まないように」

「近いものや、武器を当てやすい位置、次の獲物への道すがら、そういう程度だろうね」


アイシャだけでなく、イザベラもそれには納得していた。

アイシャは考える。


ロザリーは、同胞を売ることになる・・・利益相反だと言っていた。

同胞とは教会関係者なのか、或いは契約を交わした相手なのだろうか・・・わからない。


もし、あの時、パーティを狙ったのではなく、誰かを狙ったのならば、という仮定。

だが、ロザリーの言葉をそのまま受け取ればそれは違う・・・、と、いうことになる。

しかし、違和感もある。


あの時、フローズン・ドラゴンは、パーティの盾になったマッカーシーに対して最も簡単な攻撃である、直接的、物理的な攻撃を選択しなかった。

まるで視点から見える敵をすべて排除するかのように、魔術攻撃を使ったのだ。


その後はただパーティを全滅させるべく、ひとりづつ・・・。

アイシャはフローズン・ダガーの流れ弾を十数箇所に受けたが、素早く気配を消したこと、マッカーシーの指示通りに振り返りもせず離脱したことで難を逃れた。


「・・・もしかしたら・・・私が狙われていたのか・・・?」


益体のないことかも知れないが、それを過程、仮定、根底に考えるならば・・・。

何かが掴めそうでもう一手が足りない。


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