緩み
シャアリィが怒るのも無理はない。
アイシャは自分自身の態度や言動にうんざりして、一人残された宿のベッドに寝転んだ。
どうしてしまったのか、自分でもよくわからない。
「どうすればいい・・・」
独り事が勝手に口から零れる。
このまま何もしなければ、シャアリィは自分の前から消えてしまうのだろうか。
そう考えると足が竦む。
そして又、自分のことばかりしか考えていないことに気付き、嫌になる。
シャアリィを愛しく思う気持ちに変わりはない。
フローズン・ドラゴンを討伐するために、氷結耐性を得るために此処まで来た。
その目的も何も変わりはない。
自分は何一つ変わってはいない・・・僅かな回想の隙間を埋められず、拘っているだけなのに。
どうして、シャアリィはわかってくれないのだろうか。
「シャアリィが一番大切に決まってるのに・・・どうして」
どうして、こんなふうに擦れ違ってしまうのだろうか。
今はシャアリィの背中を追う気力さえない。
追った所で、私があのコにちゃんと説明出来なければ、余計に傷つけるだけだ・・・。
『しばらくの間は別々の生活をするのも・・・アリなのか』
打開策の一つではある、と、アイシャは愛用の片刃剣を見つめる。
浅い階層ならば、互いに単独行でも問題はあるまい。
アイシャはシャアリィの狂気も強さも・・・そして嫉妬深さも知っている。
自分の命まで投げ捨てるようにアイシャの願いを叶えてきたのは彼女なのだから。
『この街でのミッションは、氷結耐性を得ること』
それが得られて、帰りに手を繋いで氷結龍との決戦に挑めるならば言うことはない。
これだけの長い時間、ずっと一緒にいて喧嘩らしい喧嘩をしたことがないほうが異常なのだ。
一度手を放してしまったら、まるで二度と会えないかのように、どちらかが妥協して、収まってきた。
だが、もしも・・・もしもだ。
此処でのミッションを完了し、首尾よく氷結龍を倒した先でも、同じようなことを繰り返すのか。
それが人付き合い、それが人間関係というのならば、そうなのだろうが。
時間は無限ではない。
アイシャは獣人で、シャアリィは魔人。
他の多くの者達よりは幾分長い時を生きることは出来ようが、戦いの中でしか生きられないような二人なのだから、二人に残された時間はそれ程多くはないのかもしれない。
せめて、一時でも長く、一緒にいられることが願いだというのに、この有様。




