アイシャの記憶
適当過ぎる程適当に、目についた宿に転がり込む。
「シャアリィ、怒っているの?」
確かに怒っている・・・誰に?
その解答に該当する者は少ない。
先程の遣り取りか、アイシャか、それとも自分か、だ。
そして、それは今まで共に戦ってきた相棒への怒りだと、シャアリィはぶち撒けた。
「アイシャ、アーシアンから、ここまで、どんな気持ちで来たのか、話して欲しい」
「もし、私の想像が間違っているなら、間違っているって言って欲しい」
「アイシャは、ザグレブホーンの迷宮探索のこと、上の空じゃない」
「何か理由があるなら教えて」
既に信頼関係は瓦解しかかっている。
このまま、この状態で迷宮に挑めば、些細な見落としで死ぬことになるだろう。
アイシャは、それにも気付いていないのか?
シャアリィは、こんな問い詰めるような物言いを自分がしていること自体に腹が立つ。
「そうね・・・言わなくちゃいけなかった」
「アーシアンでシャアリィに出会った日の事を考えたんだ」
「私たちのパーティーが何故、フローズン・ドラゴンと会敵したか、今でも腑に落ちない」
アイシャは自分の記憶から抜け落ちているものを、ずっと、考えていたのだ。
「まるで、アレが私たちを最初から探していたかのような、そういう違和感」
「わかりやすく言えば、誰かに私たちのパーティは嵌められたとしか思えない」
「でも、その根拠となるものが、記憶をどれだけ探しても見つからない」
アイシャの中でずっと燻っていたものがあるなんて、シャアリィにはわからなかった。
わかるはずもない。
ただの一度も、そんなことを聞いたことがないのだから。
「その答えは何をすれば見つかる、と、思う?」
「その答えは必要?」
「その答えがあったら、何が変わるの?」
「怒ってるかって?怒ってるよ」
「こんな北の外れの迷宮で、他に誰も知らない場所で、お互いひとりぼっち」
「今更・・・」
シャアリィに言われて初めて気付く。
「私は・・・死んだひとよりも価値がない・・・」
「そういう意味なんだよ」
「暫く、別々に行動したほうがいいかも・・・ね」
そう言って、シャアリィは宿を飛び出した。




