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ゴールド・ラッシュ

アーシアンとナセルバの距離は、キャラバンの移動で六日。

少しでも早く着きたいならば、四日で移動できる旅客専用車両も出ている。

中継点は三箇所しかない為、どの便を選択しても野営は回避出来ない。


ナセルバが絡む便は、ほぼ全て冒険者が乗り合わせていると思って間違いない。

番犬付きのキャラバンを相手に襲撃を目論むような愚かな盗賊は北部周辺からは姿を消した。

その代わりに増えたのが、詐欺師を筆頭とした市街区での犯罪行為だ。


冒険者として限界を感じた者達が、魔物を相手にするより楽だと言わんばかりに、スラムに蔓延る。

但し、グリーン・ノウズの荒れ具合に比較すれば、可愛いものだろう。

アーシアン連合本国としても、ナセルバに遷都することも視野に入れている為、治安や教育も含め、周辺の開発には余念がない。


混み合う街道には幾つものバイパスが用意されつつあり、人も、金も、物資も、全てがナセルバに向かって流れ込む。

アーシアンから数えて二つ目の中継点、ナセルバとの中間距離に差し掛かると、それが更に顕著になる。

土木、建築、流通、販売にも大量の人材が流れ、その様子はまさにゴールド・ラッシュだ。


その根源は、やはりナセルバの大迷宮。

地下一階層も、まだ全て明らかになっていない状況ながら、既に地下四階層の一部の地図が出回り始めている。

横に探索するか、縦に探索するか、パーティの判断によって異なるが、多くの場合には深度を重視する傾向がある。

単純に深度が深ければ、それだけ魔物の危険度も、数も増える。

即ちそれは最も稼げる場所ということだ。


当然、情報の価値も高い。

他のパーティに先んじてマップを埋めていけば、それだけでも大儲け出来る。

精鋭パーティだけで情報を独占し、他のパーティの進行を遅らせることは当然、常套化している。


そんな状態の迷宮では、パーティ同士の戦闘も頻繁に起きる。

特に浅い階層の未踏領域付近では、ルーキー狩りや遺体漁りが横行する。

ナセルバの冒険者ギルドの壁を見れば、手配書だらけになっているはずだ。

それは既に一つのクエスト・カテゴリとして成立している。

ベテランパーティにしてみれば半端者を狩るほうが深く潜るよりもリスクを下げて稼げる為、『掃除屋』を専門にするパーティも増えた。


それでも、駆け出し冒険者達はナセルバの迷宮を目指す。

開き続ける貧富の差、閉ざされる選択肢、諦めた者は祈り、抗う者は武器を手に迷宮に潜る。


「これを見てると、自分達がまともに見えるね」

「他にも選択肢はあるのに、皆、盲目的にナセルバを目指している」


アイシャは呆れたように呟く。


「それは、アイシャが沢山の迷宮や、広い世界を知っているからだよ」

「私だってアイシャと一緒じゃなかったら、この群れの中に混じっていたかも知れない」

「否、多分、とっくに野垂れ死んでるね」


シャアリィはキャラバンを追い越す馬車に悪戯に手を振りながら、


「そんなに慌てなくても、行き着くとこは同じだよ」


と、爽やかな笑顔で見送る。

そう、人は皆、行き着く所は同じだ。


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