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アーシアンへの帰還

『彫像』の魔石は、踏破の証明として領主の屋敷に運ばれ、年に一度、お披露目をするらしい。

あの魔石にどんな固有スキルが封じられていたかを知る機会はなかった。

領主からは踏破報酬として各自に金貨千枚が与えられ、結局、シャアリィも商業ギルドで口座を作ることになった。


商業ギルドには新しいギルド・マスターが就任、英雄の銅像を立てたいと言われたが丁重にお断り、その代替えとして街の一番大きな公園に、三人の名前を刻んだモニュメントが置かれた。


黒猫のテラスでは、シャアリィとアイシャのお気に入りの席に『reserved』のプレートが掲げられて、これから暫くの間は二人だけの専用席として使われる。

恐らくは観光名所の客寄せのようなものだ。


エドワードの治癒院は予定通りに完成するはずだ。

その完成を待たずにアーシアンに向かう二人をザックパーティの面々は引き留めたが、長い間放ったままのマッカーシー達の墓に花と酒を供えたいという申し出の前に、異論は封じられた。


何時の間にか、ナッチェの身長はシャアリィと並び、最近はお洒落にも余念がない。

エレナも界隈では有名な看板娘になり、ファイヤー亭は客足が途絶えない。


ザックの墓は相変わらず綺麗に手入れされ、何時も酒と花に囲まれている。


・・・


沢山の楽しい思い出が残る街レリットランスに別れを告げるのは、シャアリィも、アイシャも、後ろ髪を引かれる。

だが、それでも前に進まなければ、本当の自由にはなれない、と。

正気じゃないと言われても、狂っていると言われても、どうということはない。

二人が手を取り合った最初の日から、ずっと言われていることなのだから、今更、顔色一つ変わらない。


武具以外の装備を全て整え直して、北へ向かう街道キャラバンを待つ。

たった五日の移動だが、その分季節は早送り。

恐らくアーシアンの迷宮は以前のような活気はないだろう。

だからといって、冒険者ギルドに足を運ぶつもりはない。


「ただ墓参りのためだけにキャラバンを途中下車するのは、贅沢だね」


と、アイシャが気後れしていても、シャアリィは贅沢をしようと言う。


「私にはマッカーシーパーティのことはわからないけれど、アイシャはそうじゃないでしょ」

「花と酒で心の負債が少し軽くならば、行くべきだね」

「そこに何も埋まっていなくても、虚しい気持ちになるとしても」

「私はアイシャにそうして欲しいと思うよ」


今度こそ、厄介事に巻き込まれないキャラバンだといいね、と、笑い合いながら、キャラメルを舌の上で転がして幸せの味を噛みしめる。


夏の終わりには、シャアリィも十七才になる。

きっと、その頃には遥か北の街にいるのだろう。

アーシアンから、ナセルバへ。

ナセルバから、ザグレブホーンへ。


北を目指して。


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