表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/171

アレックス・ミラー

日付が変わる頃、シャアリィ、アイシャ、エドワードがファイヤー亭に戻って来た。

ネームド討伐成功は、夕暮れには既に街中に知れ渡り、何処の酒場も満席の賑わい。

これから少しの間、レリットランスの街ではお祭り騒ぎが続くのだろう。


アレックスとオルチェは三人の帰還を待ちながら、ツマミの材料がなくなったと店を早仕舞いして、夫婦で盃を交わしていた。


「ただいまー」

「酒と肉と犬も食わない夫婦喧嘩をもらおうかね」


シャアリィは少し悪酔いしているらしい。

アイシャは血塗れの服が乾き、エドワードは泣き疲れて寝落ち寸前だ。

うわぁと、黒猫姉妹は引き、オルチェはゲラゲラと笑い、アレックスは呑気に通常運転で、


「遅かったな、耳あり、耳なし、他一名」

「まぁ、アレだ・・・よくやってくれた、エド」

「感謝するぜ、アイシャ、シャアリィ」


服装以外はまともなアイシャが、済まなさそうに小さな声で、再度、ただいま、と。

珍しくアレックスの鼻先が赤いのは、酒に酔ったからなのか、それとも少し泣いたからなのか。

それを問い詰めるようなアイシャではない。


「皆のは祝酒だが、俺とオルチェはどうなんだろうな」

「正直さ、こういう結末でも、素直に喜べないんだ」

「自分自身の卑怯さに呆れてるよ」


シャアリィは何時の間にか夢の世界に流されている。

アイシャは、シャアリィの髪を撫でながら、あの日、エドワードが言った言葉をアレックスに教える。


「私はね、ガーゴイル討伐の時にエドワードを挑発したんだ」

「ザックを見殺しにした弱みにつけ込んで、アレックスとオルチェにも手伝わせろ、と、ね」

「そうしたらさ、エドワードは歯をギリギリ鳴らして」

「あそこにパーティメンバーを立たせるくらいなら、お前達に頭を下げたりしないって」

「それがエドワードという男だよ」


これでも喜べないか、と、アイシャは無言でアレックスとオルチェに視線を合わせる。

寝息を立て始めたエドワードの顔を見て、アレックスとオルチェは肩を震わせた。


「ザックパーティは最高だな」


アイシャの一言で、二人の涙腺が決壊する。


「私には、パーティメンバーを見捨てて逃げた過去がある」

「相手はフローズン・ドラゴン・・・私以外は、皆、やられた」

「シャアリィと出会ったのは、その日のことだよ」

「だからさ、エドワードを放っておけなかったのは、偽善の自己満足なんだ」


消せない傷、消えない痛み、誰にだって一つくらい、そういうものがある、と。

酒を飲んでもいい、忘却したっていい。


「祝酒を飲んでくれ」

「それこそが、ザックパーティと、マッカーシーパーティへの(はなむけ)なんだ」


アイシャの目からも、ほろりと雫が落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ