本当に価値のあるもの
手続きが終わり、噂を聞きつけた冒険者達がギルドに集まっていた。
その多くは祝酒にありつくのが目的なのは言うまでもないが、歴史的瞬間を皆、楽しみたいのだ。
アイシャの戦装束を見れば、決して楽な戦いでなかったことは明白。
シャアリィ達を称えてこそ、成し得なかった者たちも報われる。
勿論、嫉妬や悔しさもあるだろう。
いずれは自分達もと夢を語るパーティも増えるはずだ。
「さて」
「皆が待っている酒の時間だ」
「今晩の飲み食いは全額、エドワードさんの奢りだから、ちゃんと腹に入れろよ」
「お行儀良くとは言わないけれど、わざと床に飲ませるような奴は放り出すからな」
「乾杯!」
・・・
「俺、ホントに何にもしてねえけど、こんなにしてもらっていいのか?」
「踏破年金だって、一生遊んで暮らせるんだぞ?」
「なんで俺なんかにそこまでしてくれるんだ」
エドワードは軽くパニックに陥っている。
馴れ初めからして敵意丸出しで、面倒な頼み事をして、それも叶えてもらって、それでいて、自分は大したことをしていないのだ。
シャアリィがエドワードに目配せで黙れ、と、
「エドワードはアイシャを大事にしてくれた」
「私がそれ以上に望むことなんて、何があるって言うのさ」
アイシャも頷く。
「私達は知ってるんだ」
「ヒーラーっていう役割がどれだけ大切か、ってね」
「同じ危険に身を晒す必要なんてないんだ」
「ヒーラーが信頼出来なきゃ、化け物みたいな相手とは戦えない」
「ヒーラーは絶対に死んではいけない、それ以上の役割はないんだよ」
エドワードは、ザックが死んだ時、自分が傍にいなかったことを心の底から悔やんで、自分に出来る戦いを最後まで投げ出さなかったのだ。
それは誰にでも出来ることではない。
自分の全てを復讐に賭けていた狂気の男が救われなかったら、それこそ理不尽だろう。
シャアリィとアイシャは、本当に価値のあるものを見逃したりしない。
「ザックに自慢してやりなよ」
「俺が夢を叶えてやったぜって」
ただでさえ涙脆いエドワードは、その言葉で涙が枯れるまで泣いた。




