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異存はない

エドワードは思う。

何故、自分がこうして、イカレた冒険者二人と一緒に最上級の危険の待つ迷宮に潜る羽目になったのか、と。

しかし、それを心の底では待ち続けていたことも否定はしない。

いよいよ、新しい人生の出発点となる治癒院開業の段取りが決まった矢先。


「もう、どうとでもなれ、だ」


男らしいのか、それとも阿呆なのか、自分でも良く分からない。

どうせ今回も・・・比較的安全な場所に待機しながら、アイシャとシャアリィの壮絶な戦いを目で追うくらいしか出来ることはないのだ。

それでも、二人が自分を必要だと言ってくれて、共に踏破しようという声を掛けてくれたことについては、口には出さないが光栄に思う。


アイシャにとって、あの魔物との戦いは通過儀礼のようなものだ。

心中覚悟で踏み込んだ玄室、ただの少女なら逃げても構わないと言われ、それに甘んじた屈辱。

この世界がアイシャに問い続ける『弱さは罪』という理不尽。

『当然の法則』であると理解しながらも、抗う自分の存在価値の証明。


シャアリィは、ただ、物語を紐解くように答え合わせを求めている。

あの魔物の来歴、素性、目的、願望、それを知るには、自分がアレより強くなくてはならない。

アイシャの心の負債を軽くするためならば、何度でも死線を越えられるのだという、不器用な愛情表現。

それを成し遂げた自分を想像すると、笑いさえ込み上げてくる。


三者三様に思う所はあるが、結局、アレを討伐することに異存はない。


「懐かしいね」

「此処で何度も死にそうになって、無気力になって、意地だけで喰らいついて」

「毎日、土埃と汗でぐしゃぐしゃになりながら戦って、私達は成し得た」


そう言葉を交わすのは、待機場所に使っていた四階層の入口付近。


「エドワード、アレと戦闘に入ったら、私達が自力で玄室の外に出るまで一歩たりとも中には入るな」

「万一、二人共、戦闘不能になったなら絶対に離脱してくれ」

「私達は回復が必要だと判断したら、自ら、玄室を出て残ったほうが数秒の治癒時間を稼ぐ」

「これはあくまで、緊急用の約束事だ」

「恐らくは、そんな風になる前に決着するよ」


喋りながら吊橋を渡る。

既にこの声はあの魔物に届いているかも知れないが、構うことはない。

あの魔物に限って、奇襲など仕掛けることはない。


エドワードが、玄室の手前の壁で歩を止め、


「ここに戻ってきたら、必ず、俺が助ける」

「だから・・・死ぬなよ」


その祈りにも似た声にシャアリィとアイシャは、笑顔を見せた。

行ってくる、と、二人が揃って開きっ放しの玄室にゆっくりと姿を消した。

エドワードは、胸の十字架を握り締めた。


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