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彫像という名のネームド

レリットランスだけでなく、アーシアン中の冒険者ギルドに最新のネームドとして登録されたのは、


『彫像』


と、言う名前を付けられた魔物。

賞金額は、まだ最低ランクの金貨五十枚。

ネームドの賞金額は、時間の経過や討伐失敗、能力判明によって増減する。

挑んだパーティが少なく、犠牲者数も多くはない。

それでも『彫像』がネームド指定されているのは、圧倒的な強さに起因する。


しかも、その強さというのは、特別な能力ではなく単なる白兵戦での強さなのだから質が悪い。

凡庸な片手剣と盾、放たれたことのない弓と矢、そして武具を持たない器用な二本の腕。

五メートル近い巨体でありながら、一瞬にして間合いを詰める逆関節の足。

攻撃を盾で凌ぎ、剣を振るうという人間的な行為だけでも強すぎるのだ。


異常なのは無手の二本腕。

拳は勿論、掌底、手刀、さらには剣の類から弓の矢までを指先で摘んで無力化するという報告がある。

波状攻撃も、多角攻撃も、その身体に届いたことは一度もないという無双ぶり。

逃走を企てる者を追うことはなく、立振舞は武芸者そのもの。

戦いを楽しんでいるかのような人語による言動。


但し、命乞いの類は一切受け付けない無慈悲さも持ち合わせる。


閉店後のファイヤー亭のテーブルでエドワードは吠える。


「お前ら、どうかしてるぞ」

「討伐経過報告書をちゃんと読んだのか?」

「縦読みでも、勝てる要素なんて一つも書いてねえだろうが!」


アイシャとシャアリィは、揃って耳を塞ぐ。


「オルチェ、アレックス、黒猫」

「こいつらに説教してやってくれよ」


ファイヤー亭の面々は、店の片付けをしながらエドワードにも一応、気を使う。


「アレだよ、エド」

「私達の夢を叶える機会をアイシャとシャアリィが用意してくれたのさ」

「私達は黒猫達の面倒を見なくちゃならないからねぇ」

「エドが代表者ってわけだ、な?」


シャアリィとアイシャが揃って頷く。


「エドワードは、私達のこと嫌い?」

「怪我しても治してくれないの?」


美少女二人から至近距離で嘆願されれば、拒否したいものも、拒否出来ない。


「お前ら・・・マジで勝つ自信あるんだろうな?」

「地獄の向こう側に付き合うんだから、ちゃんとネタを見せろよ」


アイシャがヌエキリをエドワードに渡し、仕草で『抜いてみろ』と促す。

抜刀の作法を知らないエドワードだが、その刀剣の異常な重さに身体が震える。


「なんだ・・・これ・・・マジック・ソードか?」

「素人の俺にだってわかるぞ・・・この剣がとんでもない一振りだってな」


シャアリィはニヤニヤしながら、仕掛けはそれだけじゃあない、と。


「治癒術を使ってみてよ」


わけもわからず、エドワードが六節中級治癒の詠唱を始める。

三節目に差し掛かった瞬間、シャアリィの、


「壊れろ」


という短縮詠唱で、エドワードの詠唱陣が飛散した。

シャアリィが手に入れた驚異的な術式にエドワードの口から、乾いた笑いがこみ上げる。


「反則じゃねえか・・・そんなもん」

「ロートシルトの爺さんだって、そんな芸当できねえだろ」

「はぁ、一体何処までお前らは強くなる気なんだ」


エドワードの溜息混じりの称賛に、シャアリィとアイシャが微笑んで答える。


「フローズン・ドラゴンを倒すまでさ」


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