なぜ?
男達の酔いが回ってきた頃・・・
シャアリィは生き残りそうな農民の膝をストーン・バレットで砕く。
そこまでが、シャアリィとアイシャの偽善であって、そこからは被害者達の時間だ。
「カタはついた」
「一番の被害者は、仲間三人を殺された冒険者君かな」
「次は、私に酒瓶二本を召し上げられた商人の旦那」
「キャラバンを襲われ、睡眠を邪魔された全員が、一応、被害者ではあるけどね」
襲撃者達の前に被害者、関係者を案内する。
乗り合わせただけの乗客二名は、騒ぎで眠れなかった以外の被害はないので、と、干渉なしを決めた。
騎手と商人にしてみれば、立派な営業妨害であり、この手の輩を野放しという訳にはいかない。
ただ一人、回復不能の損害を被った冒険者の青年だけは、報復の意思を見せている。
だが、冒険者にとって憎悪の対象は、襲撃者よりもシャアリィやアイシャに向いている。
何故ならば・・・
シャアリィとアイシャが、最初からその気だったならば、少なくとも仲間を失うことはなかったと、自分の仕事を棚にあげて追求したいからだ。
「そんなに強いのに、仲間が殺されてくの見過ごすなんて・・・」
「あんまりじゃないか」
「何故、教えてくれなかったんだ」
筋違いも甚だしい、シャアリィは話にならないとばかりに吐き捨てる。
「命を賭けたくないならば、最初から私達をお前が雇え」
「私達ならば完璧な仕事を提供する」
「私達は安くない、それだけだ」
冒険者は膝を落とし、喚きながら、地面に拳を叩きつける。
「なぜ、今、そんなことが言えるんだよ・・・仲間が全員死んだんだ」
「少しくらい、罪悪感を感じてくれてもいいじゃないか・・・」
今、彼は自分が一番世界で惨めで、酷い目にあったと思っているのだろう。
彼の閉じた世界の中だけの話ならば、それは間違いではないが自分達の弱さと愚かさが招いた結末だと認めなければ、彼の冒険者稼業はここで終わる。
シャアリィとアイシャには、彼の人生の重大な決断さえ、どうでも良いことだ。
「くそっ、くそっ、くそっ、こいつらがっ、しねっ、かえせっ、しねっ・・・」
襲撃者達をひたすらに斬り付け、甚ぶり、それを仲間への供養にするつもりの青年に、殺人者達は醜悪な笑いで応える。
「いいぜ、殺せよ、ぎゃはははは、泣いてるぜ、弱いくせに護衛なんてするからさ、ぎゃははは」
先に客車に戻るよ、と、アイシャとシャアリィは騎手に告げる。
商人たちも正視に耐えない光景から目を背け、客車に戻ってくる。
騎手は、血塗れの冒険者を客車に乗せることを躊躇い、服を着替えるか、ここで降りろと突き放す。
「ああ、ここでいいよ」
「仲間の亡骸も埋めなくちゃならない」
「置いていってくれ」
なぜ、というならば、何故、そんなこともわからないのか。
少なくとも護衛にとっては、理不尽なことは何一つ起きていないのだから。
多分、数日もすれば冒険者達の名前など、居合わせた誰もが忘れてしまうだろう。
壊れた者と、壊された者を残して、キャラバンはレリットランスに向かう。




