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名前も残らない冒険者

ーーー 二日前、ウィトプラナ発レリットランス行、定期キャラバン


「今回、このキャラバンの護衛をする冒険者・・・」

「ライル、ゾーイ、トリノ、テオドール」

「ライルパーティの者達だ」

「街道キャラバンは、もう、十回以上経験がある」


紹介された冒険者パーティの面々は、シャアリィとアイシャに比べれば大人だが、それでも所帯を持つ程の年齢ではなさそうだ。

アイシャは冒険者達の装備を把握する。


「剣盾、両手剣、中弓とダガー、杖・・・」

「首から十字ということはヒーラーか」

「四人でパーティを組んでるなら、バランスの取れた構成」


シャアリィは、護衛の顔だけ覚えて、他のことには興味がないらしい。

レリットランスに付く前に旅装束が汚れるようなことがなければ文句はない。

二両編成でこちらには護衛二人と、商人が二人、シャアリィとアイシャ。

向こうも、同様に護衛二人、商人二人、乗客二人。


農作物の定期便は、遠目にもわかりやすい馬車だ。

二頭立ての御者台、客車、貨物車は屋根がなく防水布で覆うだけ。

大店の商人や、金持ちが乗るような贅沢な旅客専用車両とは似ても似つかない。

こんな馬車を狙う野盗がいれば、相手は素人か少数。

ヘマをして賞金首になるには、余りにも実入りとの天秤が釣り合わない。


「なぁ、あんた達、冒険者だろう?」


シャアリィに話し掛けて来たのは、弓持ちの冒険者だ。


「そうだけど、何か、御用?」


恐らくは持ち物で判断したのだろう。

返答するシャアリィの幼さの残る声色、視線が合うまで気付かなかった整った顔立ちに、若い冒険者は声を上摺らせる。


「俺達が護衛っていうのは運がいい」

「そのうち、クラス2に昇格して有名になるパーティだからな」


つまりは、冒険者始めてから一年と少し、仲間を集めて地道に頑張って来ました、と。

シャアリィはこの冒険者に悪意もなければ、興味すらない。

ただ、益のないお喋りをするくらいなら、静かにしてもらうほうが他の者達にも都合が良い。


「あっそ」

「あなた達の仕事はもう始まっているんだから、それを忘れないことね」


突き放して、身体を休めるように目を閉じた。

その態度が暗に伝えているのは、くだらないお喋りに付き合う気はない、ということだ。

吐息一つだが、仲間の冒険者と商人から失笑が溢れる。


不機嫌になった弓持ちの冒険者は、客車の側面に備えられた窓布を開けて外を眺める。

そこには、まだ雑草と見分けようのない、育ち始めたばかりの小麦が先日の雨を弾いて緑に輝いていた。

こんなど田舎で、馬車を襲うような酔狂な連中なんていねえよ、と。

自分が今している仕事を否定するようなことを考えた。


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