過保護と甘え
エレナがその内容について、
「とても良い条件を頂きましたが、私はご夫妻に相談もなしに物事を決めるのも、同じ街で店を開く先方さんを突っ撥ねるように断るわけにもいかず・・・」
「ご夫妻に相談した所、意見が割れてしまったのです」
条件は確かにとても良い。
自立出来るだけの給金、住居の用意、日暮れまでの勤務、年の近い少女も多く、アレックス夫妻には移籍料として、金貨二十枚を支払うというものだ。
「俺は、エレナ達が良ければ移籍を勧めたんだよ」
「条件の中でも日暮れまでの仕事、年の近い同僚がいるって所が良さそうだと思って」
それに対してオルチェは、
「アタシは反対した」
「昼と夜の違いがあるとはいえ、同業で引き抜きってのが気に入らないし、このコ達の容姿が可愛らしいというだけで、このコ達のことを知ろうともせずに条件だけ上乗せ」
「そんな話、アイシャやシャアリィに聞かせたくないからね」
なる程ね、と、シャアリィは思う。
「で、アレックスとしては、同じ年頃の友達と楽しい生活をさせてやりたい」
「オルチェとしては、やり口が気に入らないと」
アイシャは、シャアリィに投げていいかと目配せをした。
それに頷いたシャアリィは、夫妻にぶっちゃける。
「で、オルチェ達は、離婚すんの?」
「エレナ達は、他人様に決めてもらうの?」
「みんなして顔色伺って、私から言わせてもらえばね、過保護と甘えの極みね」
アイシャが慌てて、シャアリィの言語を翻訳する。
「まずはアレックス」
「同じ年頃の友達っていうのは、一見良さそうに見えて、あまり良いものじゃないよ」
「同調圧力とか、いじめまで行かなくても、特別待遇で迎えられるエレナ達は嫉妬の的になるでしょうね」
「ザックパーティって、不良少年グループだったんだから、そういうの好きじゃないでしょう?」
「で、オルチェ」
「人の生きてきた過去を大事にする優しさはわかるけれど、このコ達は、あなた達が思う程、弱くもないし、子供でもない」
「オルチェもエレナやナッチェをもっと知るべき」
「ナッチェ、エレナ」
「あなた達の人生は誰のもの?」
「あなた達がとんでもない迷惑を掛けたとしても、この二人はあなた達を投げ出したりしない」
「私達が、この街に二人を連れてきたのは自由になってもらうため」
「自由って言葉だけは甘いけれど、その中身は大変なことくらい、二人とも知っているでしょう?」
シャアリィは拍手をして、ほら、難しくないでしょう?という顔をする。
「喧嘩出来るっていいことなんだよ」
「でもね・・・喧嘩したまま会えなくなっちゃうこともあるんだから・・・」
「気持ちを出し合って、合意したら蒸し返さない」
オルチェとアレックスには、手痛い言葉だろう。




