ただいま、おかえり
たった一年、されど一年。
シャアリィとアイシャにとってレリットランスは特別な街だ。
特に人付き合いというものを十五年もの間、拒絶して生きてきたシャアリィにとって、この街は故郷のような感覚があるのだろう。
「ただいまー」
検閲兵への挨拶からして、おかしい。
それに違和感を持たない検閲兵達もどうかしてる。
「おかえりー」
ほいほいと手を振って、早く中に入れという仕草。
慌てて新米兵が、二人を呼び止めて鞄の中身を拝見と職務遂行。
当然ながら禁制品の類はないが、少女二人の所持金にしては多過ぎる銀貨。
「なんで、こんなに持ってるんだよ?」
と、新米兵に聞かれれば、ありのままを答える。
「ん?稼いだからなんだけど?」
「詳しく聞きたければ、冒険者ギルドに行ってみるといいよ?」
年下の小娘にニヤニヤされては、検閲兵としては黙ってはいられないとばかりに先輩兵に応援を要請する。
「こいつら偉そうなんですけど、詰めていいっすか?」
新米兵の後頭部を叩いて、検閲兵がアイシャに頭を下げる。
「仕事したい盛りなんだ、まぁ、勘弁してくれ」
大丈夫だよ、と、爽やかな笑顔で向かう先は、勿論、黒猫のテラス。
仕事をしたのに叱られる理不尽な新米兵を背にして、約三ヶ月ぶりのドアを開く。
「いらっしゃいませ」
「おや、アイシャさん、シャアリィさん、今日、お戻りですか?」
うんうんと頷いて、まだ時期的に人気のないオープンテラスに向かう。
「ここに来ると完全に休暇気分だねー」
「私はカフェ・オレと、甘い方のチョコ」
アイシャは新しいメニューがないか、と、確認してから、
「私は少し眠気が残っているから、グリーンティ」
「それと甘いチョコを私も貰おう」
「あと・・・帰りにチョコとキャラメルの詰め合わせを用意してください」
ソファに座ったまま、二人向かいあって背伸びをすると、最高の気分になれる。
「黒猫姉妹、ちゃんと頑張ってるかな」
「まぁ、あのコ達は行儀良すぎるから、少しくらい伸び伸びしてほしいね」
シャアリィの感想にアイシャも同意する。
「ホントだね、ファイヤー亭の休みの日、また、ここでお茶をご馳走しよう」
多分、ナッチェはそれが一番喜ぶだろう。




