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魔物殺しの武具

旧世界文明が何故滅んだのかを明確に出来る文献や証拠は残っていない。

文明絶滅に魔物が関与しているのか、或いは文明絶滅によって魔物が生まれたのか。

結論は恐らく見つけられないだろう。


今の人類に出来るのは、如何に魔物と戦うか、その資源を利用するかという対処だけ。

その上で、魔物に対抗できる武器を供給する鍛冶師は貴重な存在と言える。


「待たせたね」

「これがお前の新しい武具、鵺斬」

「そしてもうひとつ、彗星棍」


二つの武具を目の前にしたアイシャは、ミヤマに深々と頭を下げる。


「抜いてみるといい」


新しく誂えた鞘は漆仕上げの臙脂色。

鍔に指を当て、鯉口を切るとほんの僅かに開いた隙間に風が吸い込まれる。

ゆっくりと慎重に鞘から刃を抜こうとするが、自分の意思に反して、その速度は緩まない。


「まるで刃が生きているようだ・・・」


根本から尖端に掛けて波打つ文様が浮かび、その所々が飛沫のような影で汚れているように見える。

今まで使っていた刀とは違い色合いは酷く暗いが、刃先だけが空間に線を描くように輝きを放つ。

刀身の反りは極僅かで、一見直刀と見紛う。


「前のモノよりも、少々、重く感じるが・・・」


圧倒的な密度によって鍛えられた刀剣であることは明白。

何より刀身に目を奪われ、鞘に仕舞うことを忘れてしまう程の逸品。

それをミヤマに指摘されて我に返る。


「言うまでもないが、誰が扱っても斬れはする」

「しかし、長い刃渡りの内、本領を発揮出来るのは、極めて狭い部分のみ」

「反りによる補正を必要としない腕前がなければ、ただの重い鈍ら」

「付与術式は疾風」


鞘に戻した途端、刀が軽くなるのは気のせいだろうか。


「棍は、今までの八角芯から六角芯に変えた」

「その棍にも、亜竜の魔石を使っておいた」

「そっちには風守がついたよ、随分と運がいいようだ」

「質量を削って破壊力を落とした分、多人数との長時間戦闘に向いている」


金持ちの道楽で武具を集められることを嫌うミヤマが、尋常ならざる武具を二つ与えることは稀だ。

それはアイシャの腕前を高く評価していると同時に、かつての弟子への餞別のようなもの。


「アイシャ、死ぬなよ」

「シャアリィ・・・又、何時か、二人で遊びにくるといい」

「私もせいぜい、長生きするとしよう」


それだけ言うと、ミヤマは屋敷の奥に姿を消した。

脇に控えていたクサカベが、主の背を見送った後、アイシャに告げる。


「アイシャ殿」

「ミヤマの者として申し上げるならば、その武具に相応しい猛者になって頂きたい」

「前の持ち主は、十二年、戦場で生き残りました」

「軽々しく死ぬことは、許しませんぞ」


アイシャは表情を引き締めて、ただ、頷いた。


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