アース・スパイダー
鍾乳石の広場を過ぎると幅広の一本道だった。
地面の所々がでこぼことしているのは、恐らく土の中に魔物が潜んでいるからだ。
これは迷宮に入る前に訓練で戦った、アース・ワームの生息地と似ている。
しかし、この凸凹の多さはアース・ワームの比ではない。
周囲一帯が、何者かの繁殖場所かと思えるほどに凸凹は多い。
「崩落の危険もなさそうなんで、ここはキャノンを使いたいんだけど」
シャアリィが術式を提案する。
現状、最も広範囲に攻撃出来るシャアリィのスキルは、二種のキャノン系だ。
対空ならブラストという氷粒を大量射出するスキルもあるが、どちらかというと防御向きで、質量ではキャノンに劣る。
キャノンにはチャージタイムという完全に無防備な時間が必要だが、この場面では留意に値しない。
シャアリィのキャノンは、一秒毎にショット一発分以上の威力が加算される。
最大で三十秒のチャージが可能であり、フルチャージではショット五十発分程度に相当する。
当然ながら、魔力の消耗もショット五十発に匹敵するため、単独行では一撃必殺の最終兵器だ。
しかし、フルチャージのキャノンを撃てば、三十分近く魔力切れを味わうことになる。
「半分くらいのチャージで、撃っちゃってもいいかな?」
戦争や広域攻略戦でもなければ、なかなか撃つ機会もない。
だが、フローズン・キャノンでは、地下に魔物が埋もれたままになってしまう。
「ウォーター・キャノンなら・・・ね」
ウォーター・キャノンならば、地表を削り取りながら敵を排除出来る。
魔石を採取することを考えれば、適した選択肢と言える。
「警告!チャージ開始!砲撃まで十五秒!」
シャアリィの合図と共に、周辺の水分がワンドに渦を巻きながら収束を始める。
肩に掛かる金髪は逆立ち、時折、マジックローブの裾がゆらゆらとたなびく。
魔法風だ。
魔力を行使する際、精霊が力場を作ることで生まれる物理現象。
この魔法風を見れば、おおよそ、どの程度で魔法が行使されるのかを予想することが出来る。
「でかいな・・・」
シャアリィのそれは、小型の台風並みに周囲の風を巻き上げ、これから起きる魔術的破壊の規模を示していた。
「・・・三・・・二・・・一・・・放出!」
水属性の魔法でありながら、まるで嵐のように地面を削り突き進むウォーター・キャノン。
八本の腕を持つアース・スパイダーが必死に抗った所で風に吹き飛ぶ紙の束のような惨状。
なんとか、半身程度を土に潜めていたものも、アイシャの追撃によって尽く駆逐されてゆく。
「おいおい、一体何匹吹き飛ばしたんだ・・・」
もしも、あとから他のパーティが此処を通ったならば、巨人が暴れたと思っても不思議ではなかろう。
「これで半分の威力か・・・」
一度に大量の魔力を絞り出した魔力酔いで、シャアリィの足元はふらついている。
「シャアリィは少し休んでて、私が後片付けしてくるからね」
アイシャは呆れながらも、引き飛ばしたスパイダーの後始末に走り回った。




