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イルオールド

イルオールドという街にあるのは、迷宮、神殿、闘技場、市場、果樹園、そして湖。

特に有名なのはやはり闘技場だろう。


以前は武器あり術あり、なんでもありのスタイルも行われていたが、あまりにも血腥(ちなまぐさ)いために、現在は格闘のみだ。

それでも十分に観客は熱狂出来る。

一見野蛮な街に見えるが、その実、街の運営はかなり良好である。


迷宮街としての歴史が非常に長いせいだけでなく、他国と隣接しているために中央からの軍も常駐している。

地方都市でありながら、その実、アーシアンの文化の中心とも言えるのがイルオールドだ。


アイシャの故郷であるセロニアスの集落は、湖に面した森のほぼ中央に位置する。

当然ながら部外者は禁足であり、宗家の許可がない限りは集落に足を踏み入れることは叶わない。

アイシャ自身は懐かしいという思いはあるものの、集落での暮らしは望まない。

セロニアスの目的は、二つ、優れた血の継承と武芸の継承。

掟は、全てがこれに通じるものであり、完全なる縦社会が成立している。


女性がセロニアスとして生きるのは、ただ一つ、血の継承の為であり、妊娠可能な限り子を成す為に生きる。

生まれた子は、専門の教育機関によって英才教育を施される。

その過程で『見込みなし』の烙印を押された者は、様々な伝手を頼りに外部との取引材料にされる。

よって、弱者と女児には、端から自由や権利等ないのがセロニアスという集落なのだ。


今回、イルオールドに用があるのはセロニアスの集落ではなく、特別な鍛冶師の集団だ。

遥か東方から幾つも国を超え、海まで超えて、イルオールドに流れ着いたという。

その鍛冶師らが製造する片刃剣『サムライ・ソード』は、数多ある刀剣の中でも最高水準の品質を誇る。


まるでファイヤー・ドラゴンの火炎ブレスの如き炎を用いて、鉄を中心に複数の金属を合わせた刃を丁寧に叩いて伸ばす。

伸びたものを一度ゆっくりと冷やし、さらに熱を加えて折り曲げて、叩く。

それを何度も繰り返して造られるのが、アイシャ達セロニアスが好んで使う片刃剣だ。

完成品になるまでの工程は分業制であり、最後に刃を研ぐ者が『サムライ・ソード』の切れ味を最高のモノにする役割を担う。


その刃は見た目よりも密度が高く重い。

そして、刀身はブロード・ソード等と比べれば圧倒的に細く、薄い。

最大限の力を最小限の点に集めることによる斬撃は他の刀剣とは一線を画す鋭さである。


彼らはとても気難しい。

造りたくない相手や、造りたくない時には、絶対に造らない。

刀の所有者になるためには相応の刀への理解と技量が求められる。

『サムライ・ソード』だけでなく、長弓、三節棍、十字槍等も、製造しているが、その全てが一級品である。


「刀というものは、人を斬るために造られる道具だ」

「他の何かを斬るのではなく、人を斬ることを想定して造られている」

「だが、イルオールドの職人が作る刀は、人だけでなく、魔物を斬ることも念頭にある」


だから、ここの刀が欲しいとアイシャは言う。

大通りから見上げる空が狭い。

この街は、他の街では見られない程に高層建築物が沢山あるのだ。

まるで、この街だけがアーシアン連合国の中で、未来に飛び出したかのような錯覚。

実際は、まるで逆の話であり、旧世界の建築様式の骨組みが残されていたことによるものだ。


剣が出来るまでの間、シャアリィは実戦経験を積み、アイシャは150レベルを目指す。

最終的には、シャアリィも、アイシャも、氷結耐性を得なければならない。

暫くの間、イルオールドに滞在し、次の目的地は、新迷宮ナセルバのさらに北。


ザグレブホーンの迷宮を目指す。


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