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運行再開

商人間の共通言語はやはり『利益』だ。

最優先されるのは、日持ちのしない商品を迅速に届けて捌き、利益にすること。

それには感情論を捨てて、使えるモノ、捨てるモノの選択が重要になる。


「先頭車両から他の車両に積み替える物は何がある?」

「夏用の衣類ぐらいだな」

「他の物は使い物にならない」


さすがに重傷者は置いて行けない為、後方の被害のない車両に移動させる。

先頭車両はここで放棄される。

二両目の車両は積荷にはそれほど損害はないが、一両目と貨物車両に御者台を挟まれたせいで、騎手、馬と御者台が全損だ。

これは、後続車両と積荷の交換をすることで解決出来そうだ。

日持ちのしない野菜や肉、魚を降ろし、食器や工芸品、乾物と入れ替えた。


「まさか護衛が盗賊団と結託してキャラバンを襲うなんて・・・」

「今回の責任は誰が負うんだ・・・」

「否、今はそんなことよりも、早く中継点まで行こう」

「そこで人手を集めないと丸一両分の積荷を捨てることになるぞ」


シャアリィとアイシャは、呆れてしまう。


「急ぐのは賛成だな」

「そのために邪魔者を排除したんだ」

「私達の乗っていた三両目は、大した損害はない」

「先に中継点まで送ってもらおうか」


二人にしてみれば、当然の要求だ。

護衛の代わりに助けた用心棒代を払えとも言っていないし、乗車料金を払っている乗客だ。

商人同士のゴタゴタや、他の乗客の都合等、シャアリィやアイシャには関係ない話なのだ。


大店の商人と思しき男が場を仕切るように口を挟む。


「こんな状況なんだ」

「少しは他の人間のことも考えようじゃないか」

「それに・・・あんた達が先に行ってしまったら、我々だけでは心細い」

「是非、回収部隊が来るまで、ここで護衛を・・・」


シャアリィが指を二本立てて、大店商人の言葉を遮った。


「私達を雇うという話?」

「ならば私達二人の日当は金貨20枚」

「もう先に仕事してる分も請求する」

「転がってる悪党一人に付き、金貨1枚」

「全部、前払いでツケはなし」


アイシャは高笑いしながら要求する。


「ケチくさい間抜けな誰かがインチキ護衛を雇ったか」

「人から殺したい程恨まれるような悪どい稼ぎをしていたヤツが乗り合わせたのか」

「今更のことにケチを付けたりしてないだろ?」

「これ以上、私達を遮るなら、盗賊でも、商人でも、乗客でも、関係なくなるよ?」


今、無事でいる人間は、本来、シャアリィとアイシャに感謝しなくてはならないはずだ。

追い詰められた時にこそ、人間の本性というものが出る。

結局、商人からは礼の一つもないままに、二人の要求だけが叶えられた。


「あなた達がいてくれたから、私は無事に家族の元に帰れます」

「巡り合わせに感謝を」

「言葉だけですが、お礼を・・・ありがとうございます」


乗り合わせた乗客と、騎手だけは、人としての礼儀を弁えていた。

シャアリィとアイシャは、少女らしい笑顔で、


「気にしないでね」


と、微笑んだ。


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