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白兵戦

戦いが呼び覚ます高揚。

魔核から供給される濃密な魔力が、シャアリィのエンチャントに再びスイッチを入れる。

加速する思考と反射、拡大する視野、それだけでも魔術師の領域から逸脱した存在。


シャアリィは既に学習している。

ワンドの増幅がなくとも、脆弱な人間の身体など素の魔力で壊せる、と。


「とりあえず、取り押さえて縛りあげろ」

「売り物にするんだから、あまり傷をつけるなよ」


シャアリィは思わず吹き出しそうになり、俯いてソレを堪える。

ゆっくりと背中に手を回し、ベルトホルスターから愛用のダガーを抜き放つ。

それを両手で目の前に構えて、弱者を演出してみせる。


「私を奴隷にして売り飛ばすつもりなの?」

「やだ、近寄らないで」

「乱暴するなら、私、自分で死ぬからねッ!」


自分の言葉が可笑しくて、肩が勝手に震えてしまう。

目配せで役割分担をした盗賊達が、一斉にシャアリィに飛び掛かる。


シャアリィの目には、スローモーション。

最短の距離で、最低の動作。

身を翻して一番近くにあった敵の二の腕にダガーを突き入れると、その指先まで一気に引き裂く。


迸る血飛沫、一瞬だけの沈黙、そして絶叫。

周囲の敵が絶叫に反応して硬直するが、シャアリィだけは止まらない。

次の獲物の首筋を返しの刃で切り裂く。


シャアリィは満足したように、敵を見据えて吐き捨てる。


「こんな面倒なことをあれだけやって疲れないなんて」

「アイシャって、やっぱり凄いのね」

「私は、もう飽きちゃった」


ダガーを握ったままの右手を突き出し、


「散れ」


と、アイス・ブラストをぶち撒ける。


盗賊達にしてみれば、全く予期していない僅か数十秒の出来事。

殺し合うことが前提の戦場でさえ、こんな惨劇は起きたりしない。

惨劇の元凶たる少女の他には、まともに立っている者は誰もいない。

無傷でこの数十秒を生き残れた者も、歯が噛み合わない程に怯え、地面を這うことしか出来ない。


「謎解きの時間だよ?」


と、可愛らしく微笑んだシャアリィが、地を這う男の背中に踵を乗せて、


「腐れ」


と、感情の読み取れない声で呟いた。


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