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キャラバン強制停止

左右は岩壁、正面には盗賊団が立ち塞がる。

キャラバンの先頭車両は速度を緩めずに盗賊団を正面突破するつもりだったが、目論見は完全に読まれていた。

冒険者崩れと思われる男が放つ長弓の矢が、正確に二頭立て馬車の片方の馬を射抜いた。

動力の片方が失われた馬車は左によれて岩壁に激突。

車両は横転こそ免れたが生き残った馬も騎手も岩壁に叩き付けられて、その様子は即死に近い。


そんな有様の先頭車両に二両目の騎手は、急制動で回避を試みるが当然、間に合わない。

横転を免れたばかりの先頭車両が横倒しになり、峠道の半分以上を封鎖した。

シャアリィとアイシャの乗る三両目車両が、停止した二両目の側面を掠めながら、辛うじて無事に停止する。

しかし、それによって完全に道は塞がれ、停止こそ間に合ったものの、後続の車両は狭い道で反転もままならない。


団子状態になったキャラバンの前後に、盗賊達が集まってきた。


「オラァ、出てこいよ腐れ商人共ォ!」

「抵抗するヤツぁ容赦しねえぞ」

「自分から有り金全部吐き出すなら命ぐらいは助けてやるぜ」

「お利口さんなら、言うことわかるよなぁ」


キャラバンの後方から馬鹿でかい声で叫ぶ男の手には槍。

周囲の男達の手にも様々な武器が握られている。

止まったキャラバン車両の隙間を縫って、シャアリィが後方の集団の前に姿を現す。

そして少し離れた位置から、盗賊に返答する。


「わかったー」

「私の車両は三両目で後も前も塞がっちゃってるの」

「荷物は重くて運べないから、残念だけど持ってこれない」

「助けてくれるー?」


少女がひとりで現れたことを不審に思いながらも、その整った容姿は男達を油断させるには十分だった。

奴隷として売ったら高値間違いなしのお宝だ。

頭目の許可があれば、自分達にも楽しむ順番が回って来るかも知れない。

卑猥な笑みを浮かべながら、一人の男がシャアリィに近付く。


「物分りのいいお嬢ちゃんは好きだぜぇ」

「おらぁ、他の奴らも見習って、すぐに出てこい」

「俺達は気が短いんだ、機嫌がいいうちに言うことを聞いたほうがいいぜ?」


シャアリィに手を伸ばし、その肩に手を触れた瞬間。

男が天を仰ぎ膝から崩れ落ちる。

何が起きたのか理解出来るのは、シャアリィだけ。


「ちょっと、ねえ、しっかりしてよ」

「見逃してくれるんでしょ」

「ねえ、このひと何処か悪いんじゃない?」

「ほら、どうしたの・・・ねえ・・・」


シャアリィは、怯えた振りで立ち竦む。

男は胸を掻き毟りながら、どす黒い血を吐いて転げ回る。

そして、全く動かなくなった。


盗賊たちは理解不能でありながらも、シャアリィに疑いの眼差しを向ける。

だが、その手にはナイフひとつすら持っていない。


「おい、オマエ・・・」

「コイツに一体何をした?」


ゆっくりと遠巻きに近寄る男達は原因不明の恐怖に包まれていた。


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