常識の枠を超えた術式
シャアリィの違和感はすぐには消えないようだ。
しかし、シャアリィ自身には違和感の正体が朧げに掴めていた。
レベルアップに伴って、成長し続けた魔核によるエンチャントが新しい属性の影響で解除されているのだろう。
エンチャントに身体が慣れてしまっていた為、大きな違和感を感じてしまうのだ。
「ちょっとマズいことが起きてる」
と、シャアリィはアイシャに違和感の正体を告げた。
当分の間、シャアリィは前線での戦闘に問題を抱えるということだ。
悪い報せだけでなく、勿論、良い報せもある。
シャアリィが取得した闇術式。
アイシャの予測通り精霊術式にはあり得ない程、強力な術式が四つ追加された。
「ひとつめは、コラプション」
「ふたつめは、ジャミング」
「みっつめは、デコンポーズ」
「最後に、カースシャドウ」
アイシャは苦笑いしながら術式の説明を待っているが、最初のコラプションで既にドン引きしているのがシャアリィにも伝わった。
「コラプションって、触れたモノを腐敗させる・・・術式よね?」
大正解と、シャアリィが無邪気に笑う。
「ジャミング・・・妨害?、撹乱?」
ジャミングは、恐らく、今後、シャアリィにとって最強の術式となるだろう。
「そう、妨害なんだけどね、実際には邪魔をするっていうよりも、破壊するんだよ」
「相手に掛かっているエンチャントや、効果を発揮する前、発揮している最中の術式も」
「私には短縮詠唱が使えるから、相手の術式を完全に封殺出来ることになる」
アイシャが目を見開く。
大規模パーティで十二分に備えたエンチャントをシャアリィは一つの術式で粉砕してしまう、ということだ。
さらには自分に向かって飛んでくる術式さえも無効化してしまう。
シャアリィの動体視力、反射神経であれば究極の術式殺しに成り得る。
「もう、イカサマのレベルね・・・やっぱり根源転換術式はぶっ飛んでる・・・」
「デコンポーズは、一体、何を分解するの?」
シャアリィは役に立つか、よくわかんないけれど、と、前置きして、
「状態異常を分解するスキル」
「ジャミングは対象が術式限定だけど、物理的に受けた毒、視野狭窄、麻痺でも分解出来る」
なるほどね、と、納得するアイシャ。
「最後は、なんか闇術式の定番よね、唯一、潔さを感じるくらいのスキルだわ」
そうだね、と、言ってシャアリィも笑う。
「カースシャドウは上級の治癒術師にとっては全く脅威ではないけれど、その他の冒険者や魔物にとっては、ほんの短時間であっても視界を完全に奪われる致命的なスキルだよ」
「持続時間は、私とのレベル差による・・・あまりにレベルが離れていれば効かない、或いは一週間ぐらい持続する」
さて、もう、この街での仕事は終わった。
シャアリィとアイシャは、これからのことを考えなくてはならない。




